FAKE 1





昨夜と同じように…ジュニアの隣にリキシマン、正面にラーメンマン、斜向かいにバッファローマンが着席する。
彼らは昼飯をまだ済ませておらず、良かったら一緒に、と各々買ってきた調理済みの軽食や菓子、ワイン、ミネラルウォーター等をテーブルに並べ、飲み食いしながら他愛のない世間話を始めた。
示し合わせたかのように誰も昨夜の続きを口に出さず、ジュニアだけが人知れず嫌な汗をかいている。
(あの話題はいつ始まるか、どう返すか)
頭の中でそんなシュミレーションばかり繰り返していたジュニアに、ラーメンマンが国から持参したしたという中国茶をいれ、目の前に置いた。

「寝不足のようだな、ジュニア」

心配そうなに聞かれ、ジュニアは苦笑いする。

「まぁ、寝た時間があの後だからな、みんなもそうなんじゃないか?」

「私たちは慣れているよ。バッファは一睡もせず酒を飲んでいたしな。老いて尚盛んだよ」

ラーメンマンが角のある大男を指して揶揄い、皆でひとしきり笑う。

「それよりラーメンマン、あまり道草くうとロビンが怒る」

笑いをおさめる前に唐突に始めたのはウルフマン。生真面目な彼らしい心配の方向だ。

「これは道草ではないぞ。ジュニアの説得は我々の任務のひとつだろ。なぁ、おまえさん考えたんだろ?その気になったか?」

先刻からワインを飲み続けていたバッファローマンが膝を進めると、一斉にジュニアに視線が注がれた。
が、ここで怯んでは駄目だとジュニアは極めて平然を装う。

「昨夜話した通り、俺には無理だ。諦めてくれ」

「ここにいたけりゃ長い休みには帰ってくればいいじゃないか。俺らだってずっとレッスル星にいるわけじゃないぞ?」
俺は自分の相撲部屋との掛け持ちなんだぜ、とリキシマンがぼやき半分に言う。

やはり簡単には引き下がらぬか…と、ジュニアは留守に出来なかったことを恨んだ。
その原因であるケビンはまだ帰ってこない。
長距離のロードワーク後にジムでも行ったかのだろうか。

(尤も、いま帰ってこられては困るがな・・・)


「なあ、ジュニア。もう一度言わせてもらう。我々に手を貸してくれないか。おまえの指導力が必要なんだよ。ジェイドのような正義超人が幾人もいたなら、世界中の人々が安心して暮らせると思わないか?」

「いや…俺は本当に…」

「この平和も永遠に続くとは限らないんだぞ?」

「………」

こうなれば最悪一度は引き受け、ロビンマスクに直訴し取り消す…という考えまで、ジュニアの中に浮かびはじめていた。



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