FAKE 1





昼前にシャワーを浴びたジュニアは、迷った挙げ句に最近あまり着なくなった軍服を身に付けた。
ラフな格好でも良かったが、それではあまりにも、『すっかり隠居暮らしで暇人』だと受け取られそうだったからだ。
いくら平和を甘受し始めたとはいえ、超人として悪に対する危機感が無いわけでは決してない。

(だが、今はケビンのような、若く強い連中がいる。俺なんかが心配せずとも別に・・・)

若い世代の超人達を思い出し、無意識にケビンの顔と名前を真っ先に浮かべたことに、ひとり苦笑いする。

(元弟子ではなく、ケビンマスクだとは…俺も大概だな)

一方的に惚れた腫れたと臆面なく言い寄る姿や、マスクを外した時に見せる様々な表情は、あのケビンマスクとは到底思えない。

(愛想のないお堅い奴だと思っていたが、まるで逆だ)

ふとケビンの笑顔が脳裏に浮かび、次に昨夜の切なそうな様子が再びジュニアの心を鷲掴んだ。

「真っ昼間から何を考えているんだ、俺は!それより奴等を上手く言いくるめる策を練らねば!」

ジュニアは頭を横に何度か振り、両手で頬をペチペチと叩いて思考を入れ替えた。



***********************



リビングのソファに座り、くたびれた軍帽を人指し指でくるくると回しながら、何度目かに時計を見た時、訪問を告げるチャイムが聞こえた。
時計の針は13時を回るところ、先に来たのは『彼等』。
ケビンには裏の、以前使用人が使っていた出入り口を使わせている為、表玄関からは入ってこない。

無造作に帽子を被り、ジュニアは重い腰を上げた。
ケビンが戻る前にいかに早く彼等を追い払うかを考えながら。




.
8/16ページ