FAKE 1




「それに、あんたに少し触れただけで、全身に電流が走るような感じがするんだ。身震いもそのせいだ。あの時は平気だったのに」

「おまえは切羽詰まるとよく喋るよなぁ…」

ジュニアはケビンの肩越しに、腕を首へと回し引き寄せた。
すぐ上と下にお互いの顔がある。

「どうした、しないのか?」

固まったケビンの後頭部にジュニアはもう片方の手をやり、そのまま自分へと更に近寄せた。
ごくり、とケビンの喉が鳴る。
ジュニアは促すように両目を閉じた。

しかし。
唇に暖かく柔らかいものが触れたかと思うと、すぐに離れていった。
あれだけ感情をぶつけてきたくせに、と不思議に思いジュニアが目を開ければ、ケビンの切なさそうな瞳にぶつかる。

「すまない…何だか緊張して、俺…」

「まったく、おまえは…」
どうしようもないな、と呟き、ジュニアはケビンの首に両腕を回し、少し顔を上げて唇を合わせた。
ほんの少し舌が触れ合うと、ふ、と吐息を漏らしケビンが身じろいだ。

「どうした、したかったんだろう?もういいのか?」

「今夜は、もういい・・・」

「やけに大人しくなったな、気持ち悪いぞ」

「…他のことで、我慢出来なくなりそうなんだ」

離れていく身体をジュニアは引き戻し、胸に抱き寄せた。

「な…なにするんだっ!」

「何の我慢だかは敢えて聞かないが、触れれば電流が走るんだろう?いっそ朝まで感電死でもしてろ。おやすみ」

ジュニアはケビンを抱き締めたまま目を閉じた。
身体の芯まで届いては逆流するような熱と恍惚感に酔ったケビンは、黙ってジュニアの肩口に顔を埋めた。
まさか密着して、更に抱き締められて眠ることになるとは思ってもいなかった。

――まだ恋人になってくれないくせに、一体何なんだよ?――

耳元で囁いても、既に軽い寝息をたて始めているジュニアには、もう聞こえていないだろう。

ずっとこうしていたい。
朝など来なければいい。

毛布の下、ジュニアの少し乱れたガウンの胸元にそっと触れてみる。
暖かい体温と、規則正しく上下する逞しい胸。
また熱いものが身体を駆け巡ったが、微睡み始めたケビンには、それが心地好く感じられた。



翌日、二人の関係に更なる変化をもたらすきっかけが起きるとは、この時だれも知り得なかった。




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