If... (番外編)
*If
悪行超人らによる一連の騒動が終息し、約1年後。
【超人オリンピック・ザ・レザレクション】が日本で開催された。
超人オリンピックの復活は実に34年ぶりであり、当時挙って出場した超人達は今や伝説超人と呼ばれている。
その覇者となったのは、決勝でキン肉スグルの子・キン肉万太郎を破った、ロビンマスクの子・ケビンマスク。
両者共に元チャンピオンのII世であり、このどこか因縁めいた対決は大観衆を大いに湧かせた。
勿論キン肉王家の子の底力は並大抵ではなく、若手最強の誉れ高いケビンとて無傷で圧勝したわけではない。
勝利後に負傷と極度の疲労で倒れたケビンは会場から病院へ運ばれた。
どの位、眠っていただろうか?病室のベッドで目覚めはしたが記憶はまだ朧気であり、チャンピオンベルトが視界に入るまで勝利を実感出来なかった。
ケビンの意識が戻るや否や、真っ先に飛び込んできたのは父・ロビンマスク。
彼は34年前の、己の雪辱を果たしてくれた息子を大いに称え労い、ケビンも思うところがあり父との確執は一旦治めた。
キン肉族より自分の一族、特にこの父親とは一生相容れぬ関係だという思いは、まだ変わらずケビンの中にある。
ロビンマスクが帰った後、これは真の和解ではなく休戦だ、と心の中で呟いた。いずれまた生まれるだろう確執。ケビンの思い描く、そう遠くない未来こそ完全な決裂の時かも知れない、とも。
父の無念云々など実際ケビンにはどうでも良いことで、このタイトルは自分自身が『使い途』あって奪取したようなもの・・・・それがなければ超人オリンピックなど出場しなかっただろう。
更なる目標に挑む為の格好のステップがオリンピックであり、これはあくまでも通過点、等とはまだ誰にも話していない。
退院後。
皆の前に現れた時も、英国へ凱旋帰国しても、優勝パレードや祝賀の式典などでも―――表向きはそれなりに振る舞うも、ケビンはずっと上の空だった。
当然、その心中は誰にも明かすことはなく、又、誰もケビンの秘め事に気付くはずもない。
演技は下手だと自覚していたが、周囲は『何を考えているのか判らない奴』『嫌味なほどにクールな(冷めている)男』と勝手に捉えてくれる。
それはケビンにとって好都合であり、面と向かって例え嫌味を言われようが意に介すことも憤りもなく、逆に礼を言いたい位だった。
が、かつて一人だけそうでなかった者がいた。
相手は父と共に悪魔超人らと戦った伝説超人仲間。当然、名も知っている。
その時の自分に隙があったのは否めないが、初対面の相手に易々と心の闇を見抜かれてしまい、演技は全く通じなかった。
初め、視線を合わせたのは数秒。此方の眼は仮面の奥で、眼だけでなく素の顔は寸部も見られていない。
単に直観を口にされただけ、又はカマをかけられたのだと初めは惚けたつもりだった。
しかしその後も、短い時間で此方の秘め事を次々と引き出され・・・・狼狽しながらもケビンは初めて自分の意思で正義の為に腰をあげた。相手の『一緒に』という言葉で勇気を百倍得たようにも思う。
正義側にはまだ素直に身を置くわけにいかないが、少なくとも『悪行には戻れずとも良い』と、過去とも唯一の友とも決裂を・・・・苦しい決断であったことは間違いなかったが・・・・。
あの伝説超人が、紛れ当たりからボロを引き出すような人物ならば、あの結末も今も未来も、全く何も存在しないのではとさえ思う。
ケビンは考えていた。
その唯一の相手のことを。
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悪行超人らによる一連の騒動が終息し、約1年後。
【超人オリンピック・ザ・レザレクション】が日本で開催された。
超人オリンピックの復活は実に34年ぶりであり、当時挙って出場した超人達は今や伝説超人と呼ばれている。
その覇者となったのは、決勝でキン肉スグルの子・キン肉万太郎を破った、ロビンマスクの子・ケビンマスク。
両者共に元チャンピオンのII世であり、このどこか因縁めいた対決は大観衆を大いに湧かせた。
勿論キン肉王家の子の底力は並大抵ではなく、若手最強の誉れ高いケビンとて無傷で圧勝したわけではない。
勝利後に負傷と極度の疲労で倒れたケビンは会場から病院へ運ばれた。
どの位、眠っていただろうか?病室のベッドで目覚めはしたが記憶はまだ朧気であり、チャンピオンベルトが視界に入るまで勝利を実感出来なかった。
ケビンの意識が戻るや否や、真っ先に飛び込んできたのは父・ロビンマスク。
彼は34年前の、己の雪辱を果たしてくれた息子を大いに称え労い、ケビンも思うところがあり父との確執は一旦治めた。
キン肉族より自分の一族、特にこの父親とは一生相容れぬ関係だという思いは、まだ変わらずケビンの中にある。
ロビンマスクが帰った後、これは真の和解ではなく休戦だ、と心の中で呟いた。いずれまた生まれるだろう確執。ケビンの思い描く、そう遠くない未来こそ完全な決裂の時かも知れない、とも。
父の無念云々など実際ケビンにはどうでも良いことで、このタイトルは自分自身が『使い途』あって奪取したようなもの・・・・それがなければ超人オリンピックなど出場しなかっただろう。
更なる目標に挑む為の格好のステップがオリンピックであり、これはあくまでも通過点、等とはまだ誰にも話していない。
退院後。
皆の前に現れた時も、英国へ凱旋帰国しても、優勝パレードや祝賀の式典などでも―――表向きはそれなりに振る舞うも、ケビンはずっと上の空だった。
当然、その心中は誰にも明かすことはなく、又、誰もケビンの秘め事に気付くはずもない。
演技は下手だと自覚していたが、周囲は『何を考えているのか判らない奴』『嫌味なほどにクールな(冷めている)男』と勝手に捉えてくれる。
それはケビンにとって好都合であり、面と向かって例え嫌味を言われようが意に介すことも憤りもなく、逆に礼を言いたい位だった。
が、かつて一人だけそうでなかった者がいた。
相手は父と共に悪魔超人らと戦った伝説超人仲間。当然、名も知っている。
その時の自分に隙があったのは否めないが、初対面の相手に易々と心の闇を見抜かれてしまい、演技は全く通じなかった。
初め、視線を合わせたのは数秒。此方の眼は仮面の奥で、眼だけでなく素の顔は寸部も見られていない。
単に直観を口にされただけ、又はカマをかけられたのだと初めは惚けたつもりだった。
しかしその後も、短い時間で此方の秘め事を次々と引き出され・・・・狼狽しながらもケビンは初めて自分の意思で正義の為に腰をあげた。相手の『一緒に』という言葉で勇気を百倍得たようにも思う。
正義側にはまだ素直に身を置くわけにいかないが、少なくとも『悪行には戻れずとも良い』と、過去とも唯一の友とも決裂を・・・・苦しい決断であったことは間違いなかったが・・・・。
あの伝説超人が、紛れ当たりからボロを引き出すような人物ならば、あの結末も今も未来も、全く何も存在しないのではとさえ思う。
ケビンは考えていた。
その唯一の相手のことを。
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