FAKE 1
階段の方を振り向き、階上を見上げる。
盗み聞き出来る距離ではないにしても、ケビンはきっと様子をうかがっているに違いない。
また面倒なことにならなければいい…などと、ジュニアは思いを巡らせた。
「どうしたんだ?誰か来てるのか?」
目敏いバッファローマンが眼光を鋭くした。
気付かれてはなるまいとジュニアは、時計を見ただけだ、と背後の壁掛けの時計を指差した。
「もう3時か・・・・今夜のところはとりあえずブロッケンに考えてもらう、ということでどうだろう?バッファ、ラーメンマン」
リキシマンが懐中時計で確認し、他の二人に呼び掛けた。
それぞれ顔を見合わせ、頷きあう。
「では…ジュニア、我々は一旦引き上げるが、明日の午後にまた来る。考えるだけでも頼むよ」
最初に席を立ったラーメンマンが穏やかにジュニアを見つめて言った。
他の二人も口々に同じようなことを言いながら、立ち上がり上着を羽織る。
「…明日も明後日も、何年後でも俺の答えは変わらないと思うけどな」
バッファローマンが何か言おうとしたのをラーメンマンが止め、
「まぁ、そう言うな。ではな、明日帰りがけに寄る。夜分にすまなかったな。…おやすみ」
と、穏やかに笑い、二人を従えて邸を後にした。
***************く
扉の内から見送った3つの後姿が夜の闇に消えたのを確認したジュニアは、深い溜め息をついた。
全身に疲労感を覚えつつダイニングに戻りはしたが、空いたグラスや食器をちらりと見やり、明日でいいか、と呟いて消灯する。
こんな時間では流石にケビンも呆れて寝ているかも知れない、と思いながら二階に上がれば案の定、見渡す範囲内にその姿はない。
しんと静まり返った廊下を最奥までゆっくり歩き、ジュニアは疲れた頭と身体を休ませるべく主寝室のドアを開けた。
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