頂いた小説(シンリン様より)



ハロウィンの祭りも一段落つき日が暮れ薄暗くなった時間帯、早めに切り上げて帰る途中にあの二人を見つけた。

ケビンの…私の手によって両端が切られたカボチャはとても目立っている。

気配を消して近づけば、何だか二人は喧嘩をしているようだ。

「結局レーラーと鳴くアボカド野郎に会っていただろ。」

「たまたまだ、ジェイドの方が俺を見つけたのだから不可抗力だろう。」

「…俺はジェイドが誘えなかった代わりなのか?」

「はぁ…話を聞け、代わりなど居ない。」

ニンジャ仕込みの尾行術、私以外に誰もいないとは言え後ろの気配にすら気付かないとは。
どうやらカボチャを切った後、ブロッケンはジェイドと出会ったらしい。

「…俺は仮装に慣れていない、ジェイドを誘う考えなど微塵も無かった。」

「さらに本当のことを言えば…ハロウィンの仮装なぞやった記憶はない。」

「え?だって昔はっていっていただろう。」

「ふん…昔はブロッケン一族の教育で忙しかったし、ジェイドが来てからもハロウィンなどという遊びをする暇など無かった。」
「俺だって無い、ダディの教育でお祭りなんて息抜きなんてなかった。」

「笑うか?羨ましかったさ、仮装をすればお菓子貰えるなんて。」

「俺も同じだ、ダディはお菓子は敵みたいな見方だった。」

「だから楽しんでみたくてな、ケビンと仮装なら出来そうな気がした…何をすればいいのか知らないからよくあるカボチャになったが。」

因みに昔はハロウィンは日本で言うお盆で生者と死者の世界の境目が無くなると言われている日だ、仮装は死者に生者が連れていかれないように死者に悪さをされないように死者の格好をしたのが始まりらしい。

今は恐怖を連想させる格好をしていれば何でもいい。

「ケビンと歩きたかった、まだ不満か?」

「俺が悪かった、せっかく二人きりなのに喧嘩したくない。」

「別に思っているほど俺は怒っている訳じゃない、ケビンのカボチャが見れて良かった似合っている。」

「本当か、似合うって本当なのか?」

「本当だ、カボチャで男前が三割増しだ。」

「これから毎日被ってもいいな。」

「そうだな、カボチャマスクは流行るだろう。」

(あぁ…止めておけ、あの顔はからかって楽しんでいる顔だぞ、ケビンマスクよ。)


結局喧嘩をしていた雰囲気はどこえやら、二人はホテルに帰っていった。


「ホテルが一緒は知っているが…さっきの会話だと同じ階だよな。」

会話のなかで聞こえた部屋番号は私の泊まる隣の部屋だった、これは二人の行く末を見守れるフラグがたった。

うきうきした気持ちでいたのも束の間。
深夜、壁の薄さを後悔することになる。


「ブロ、俺はケビンマスク…今宵は血を吸いにきた。」

「ふん、吸血鬼が…招いた覚えはないぞ。」

「雰囲気だけだ、…吸えないんだったら、トリックオアトリート!お菓子をくれ!」

「なんだ吸わないのか?俺は今お菓子を持っていない。イタズラし放題だ。」

「ほらとか言われてもできるわけないだろ、ブロは怒ると地味に怖いし。」

「ふん、じゃあトリックオアトリート、菓子はないな?いたずらは俺がもらうぞ。」

「あ…ああ、ブロ背中をに何をしてるんだ?」

「ふっ、たまたま貰った刺青シールを張っただけだ。コウモリとカボチャが蜘蛛の巣に引っ掛かると一気にそれっぽくなったな。」

「俺のタトゥーが!」

「さて、ここでやったら隣に聞こえるから寝るか。」

「大丈夫だ!さっきまで壁に耳をつけて探ってみたけど何も聞こえない。」

「だからブロ、壁が厚いから激しくしてくれ。」

「…確かに聞こえないな、超人委員会の用意したホテルだけど隣の部屋の壁は厚いようだ。」

(私も耳を付けていただけだ!)

この部屋は壁が薄い、ちょっと耳を済ませれば隣の音はクリアに聞こえる。
だから私の生活音は極力減らして聞こえないようにしていただけだ!

「ケビン望み通り激しくしてやろう。」

止めてくれ、そんな心の叫びも届かず、軋むベッドの音に布擦れの音が隣から聞こえ始まった。

(ああああ、始まった。終わるまで待つしかない。
素数だ素数を数えろ、兄さんは愛の味方…ブロッケンのいちゃいちゃは絶対に邪魔しないさ。)


………

ホテルから早めにチェックアウトをした私に、鳥達が朝を知らせるように美しい声を響かせている。

新しい朝が来た、希望の朝だ。

ああ…隣のことか?

強いて言うなら、底無しだな…どちらも。

この状態で出てくるのはチェックアウトぎりぎりになるはずさ。

これ以上は野暮と言うもの深くは語るまい、幸せに。



(ああ、早くかえりたい…。)

ハロウィンの夜は終わり、いつもと変わらない日々に戻るだろう。
願わくは来年は別のホテルになることを私は一人祈っていた。




おわり


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