「夏のメモリー」番外編


いざ帰国【ベルリンへ!】


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おはよう、ブロ。
いま空港だ。
これから乗る便は、

AB5811 エア・ベルリン
13:20発 17:40着 10時間20分

着いたらすぐタクシーで帰る。
免税店でつい土産を沢山買ってしまい、行きと大差ない荷物になっちまった。

早く会いたい。

I LOVE YOU.

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メール送信完了。


最後に余計なことを書いたかも知れないが、今日くらい大目に見てくれると思いたい。

搭乗は1時間後、ブロの元に帰るのは・・・・・・ドイツ時間で20時頃だろうか。
晩飯どうするか聞いておけば良かったな。
時間的に微妙だが、ブロがまだ食ってなければすぐに何か作ろう。何かしら食材は・・・・あるよな?無ければ備蓄の缶詰やら乾物やら使っちまおう。
それから洗濯物を溜めていないかチェックする。トイレと浴室の掃除はしているだろうが、キッチンはどうだか・・・・

(・・・・ヤバいな、所帯染みたことばかり考えちまう。我ながら気持ち悪いぞ)

ケビンマスクが嬉々として家事をする姿など、誰も見たくないだろう。尤も見せてやるつもりはないがな。
ブロですら『珍妙』だとか初めのうちは言いやがったが、それが今ではどうだ?
やれ味付けがどうだの階段に埃があるだのアイロンがけが下手だの、入籍前から関白亭主様になっちまって。やたらコキ使いやがるからムカつ・・・・いてはいかんな、悔しいがメチャメチャ愛してるわけだし。
要は、文句垂れられないようオレがキッチリやりゃあいいだけだ。ケッコンしたら女よりいいヨメになると言ったのはオレだものな。



(さてと、1時間のヒマ潰しをどうするか・・・)

日記の読み書き以外、携帯でネットは使えない。ブロ、使用禁止の理由は一体何なんだ?
帰れば教えてくれるようだが、オレが不在の間に何があった、いや、何をしたんだろうか。
カナダ旅行へ行く前に済ませたという『用事』が関係しているように思うのは気のせいか?
特に『テレビ』が怪しい。

(オレに規制をするということは、オレは無関係ではないんだろうが・・・・サッパリ判らん)

日記を遡って読み返してみるか。まだ時間はある。
カナダ行きの前、前だろ、前は、、、ああもう何故タイトルを天気にしちまってるんだオレらは!

(ん?着信か?)

スルー前提で誰だか確認くらいしてやろう。

あ・・・・・・


(無視など出来るかバカ野郎!まさかの関白亭主様からだ)



「He・・・hello.」

どうしてか声が震えた。
相手は恋人だというのに。

―どうした、俺が電話したんで驚いたか?―

ブロは笑っているようだ。

「あ、ああ。かなり驚いている。メールの返信も来ないと思っていたくらいだからな」

―メールは苦手だと知っているだろうが。用件だけで切るぞ。
到着時間までに空港へ向かう。着いたら駐車場で俺の車を探せ。・・・・迎えに行く。―

「え?いいのか?!」

―荷物が多いんだろう?此方は雨だ。タクシーを使う奴は多いだろうし、待ち時間が勿体ない。おまえを待っている間の俺の時間もだ。
ではな、切るぞ。―

「待てよ、ブロ・・・・・・っ、切りやがった」



相変わらずだな。

冷たいんだか、優しいんだか。

愛されているには違いないんだろうが、何かこう、いつも微妙なんだよな、あんたは。


(雨と荷物に感謝しないとな)

嬉しいが今は素直に喜ばないでおく。でなければ後で凹まされるのが関の山さ。
もしもオレが『迎えに来てくれ』と先に言っていたらブロは絶対に来やしない。

(わざとイジられて学んだ、というのは口が裂けても言っては駄目だな)

何故そんなことをしたか?もだ。

(先生サマから『天の邪鬼』の話を聞き、誰かにそっくりだなと思いました。
なので日記を使い、何日かに渡り試したら、あら・まぁ・おや・さて!見事にハマってくれたのです。
ずばりアナタは天の邪鬼ですね?(超笑顔で)・・・・などと言えるわけないだろ。確実にケッコン出来なくなる)


つくづくオレという奴は可愛いげもクソも無いな。
だが、微妙なブロも悪いんだ。
いつもオレばかりオロオロやらハラハラやらドキドキやらさせられ・・・今も色々している。




(ブロッケンJr.に【絶対に絆されてはいけない】無制限一本勝負、今からやってみるか?)

くだらないかも知れないがオレはブロと幸せに暮らしたい。
ケッコン前にもう少し精神面を鍛えておかねば。



【Attention please.
13時20分発 AB5811 エア・ベルリン ご搭乗のお客様にお知らせ致します。只今より・・・・】



(もう1時間経ったのか、早かったな)

さっさと乗っちまって寝よう。
これから6時間前にタイムスリップ、いつもより長い1日は10時間半後辺りからが本番だ。



なんだかんだ言っても早くブロに会いたい。
向こうに着いたらすぐに駐車場へGO!
車に乗り込めば即密室に二人きり状態!
どうする?どうしようか?ただいまのキスを我慢したら、おかえりのキスがあるかも知れないな。
ああ、ワクワクする・・・


(・・・するな、ワクワク。絆されないと決めたそばからもうヤられてるじゃねぇかよ)

まぁ、まだ無理しなくともいいか。


2ヶ月世話になったこの国と先生様とその一門に、今一度感謝を。
忘れ物ナシ、便名確認OK!

では帰ろうか、ベルリンへ!

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※ 移転前はこの続き(4話まで)掲載していましたが、再公開は未定とさせていただきます。
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