BK日常小咄集


*お揃い

注※二人は婚約しています

・・・・・・・・・・・・・・・


約3年間でだいぶ集まったが、まだ足りないものが結構ある。
ブロに気付かれないようなモノばかりじゃイミがない、いかにも二人が意図的に『お揃い!』と他人にアピール出来るモノが無性に欲しい。
家の中には、食器や歯ブラシやスリッパなど日用品の『お揃い』が予備の予備まであるというのに・・・





「これとか、いいな」

街に出るたび服屋のショーウィンドゥを覗き込んでしまう。
頻繁に変わる全身トータルコーディネートのマネキン、今日のはなかなかイケている。
ブロに似合いそうでオレも好きな色合いで、これなら二人とも着こなせるに違いない。

しかし問題はサイズだ。
ブロはこういう人間サイズでも着られるものが無くはない。だがオレは余程のキングサイズでも合わない場合が多い。

「この冬こそはペアルックで歩いてみたい、全身フル装備で」

ああいう洒落た服はまず置いていないが、たまには超人御用達の店も見ていくか。
もしかしたら掘り出し物があるかも知れない。







「ブロ、ただいま」

「おかえり、寒かったろう?早く着替えて暖炉にあたるといい」

「あー・・・・それ、それな、ブロも一緒に着替えてくれないか?」

「なぜ俺も着替えるんだ、今夜は外食か?」

「いや、飯はすぐ用意する。出掛けようという意味ではなく、その・・・・とりあえず試着でいいんだ」

後ろ手に持っていた手提げ袋を2つ、開けずままブロに見せたオレの顔はきっと真っ赤だ。仮面は暫く外さずにいよう。

「その袋のロゴ・・・・中は服か?」

「ああ。いいカンジのコートとセーターとシャツとベルトとブーツがあったから買った。それで、その、ついでに、ほんのついでになんだが、あんたにも買ってきた。この前のファイトマネーで何かプレゼントをと、そう、あれだ、衝動買いというやつだ!だからサイズが合うか着てみて欲しい、今!」

「・・・・おまえ、仮面から汗が滴り落ちているぞ、外したらどうだ」

「は、走りすぎたからかな、いつものことだ、お構い無く!それより上に行こう、早く着てみて欲しい!」

「服は要らんといつも言っているだろうに・・・・まあ買ってしまったなら仕方ない、どんなのだ?」

「上で見せる、きっと似合うぞ」










「で、なぜ同じものが2着ずつあるんだ?おまえ、まさか」

「・・・・全部お揃いだ、オレのと」

「いい歳をした野郎同士でベアルックか?!いくらおまえとでも気持ち悪いぞ!」

「その反応は予想していた、だからずっと我慢していたんだが・・・・今年のうちに一度でいいから実現させたかった」

「なにが『ついで』だ、白々しい長台詞と不自然な汗で何か企んだなとは思ったが・・・・」

「すまん。だが絶対あんたに似合うと思う。嫌なら全部とまでは言わない、コートかセーターだけでも一緒に着て歩いて欲しい。他はたまに家で着てくれればいい、無理強いはしない」

「服が嫌だとかではなく俺は若い時分から苦手なんだ、こういう恥ずかしい真似が。だから・・・」


ああ、すげぇ難しい顔をしている。まだ早すぎたか?先に説得してから一緒に買いに行けば良かったのか?
いきなり全身ではなく1アイテムずつ増やせば良かったかも知れない。


「・・・・だから、おまえにもやれずにいた」



え?いま何て言ったんだ?



「実はとっくに買ってあるんだ、揃いの、指環を・・・・婚約する前から」

「ブロ、それ欲しいぞ!今すぐ二人ではめたい!」

「いいのか?指環などしていれば皆にすぐ勘繰られる。テレビに映れば世界中で騒がれるかも知れんぞ」

「それこそ本望だ!お互い虫除けにもなるじゃないか」

「異性の良い虫がついた方がおまえには幸せだと思うが?」

「オレはあんたがいいんだ、さあ指環をくれ」

「それよりまずはこの服をどうにかしないといかん。さっきも言ったが昔は恥ずかしくてペアルックなんぞ出来なかった。そんな相手もいなかったしな」

「今はオレがいるだろ?もう服はどうでもいい、毎日ずっとつけていられる指環の方がいい」

「しかしこんな高そうな服、クローゼットの肥やしにするのは勿体無い。おまえは自分の分だけ持って着替えてこい。不本意だが俺も着てやる」

「本当か?!いいのか?」

「ああ。お互い着替えてリビングで待ち合わせだ。そのあと飯を食いに行こう、もう日も暮れて目立たないからな」





ああ、嬉しい、嬉しい。
買ってきて良かった。
これがなければブロから指環の話はまだまだ出なかったと思う。
今夜のうちにこの勢いで指環をもらおう、二人ではめ合うんだ。
結婚式みたいにキスもしたい。
寝るときは勿論一緒でヤることもヤってさ・・・・


「着替えよし!みだしなみバッチリ!仮面をどうするかは一応ブロに訊くとして、と」


さあリビングへ急ごう。
ブロより先に降りて、ドアが開くのをワクワクしながら待っていよう。


「最高の夜の始まりだ――!」






なんだ今の雄叫びは。

大喜びしているケビンには気の毒だが、夕飯といってもドライブスルーでテイクアウトするだけだとは言わないでおこう。
多少落胆されるかも知れないが、それよりも、便乗してつい指環の話をしてしまった俺の後悔
の方が大きい。

「・・・・もう渡さなければ済まされないだろうな。いよいよ年貢の納め時というやつか

一生お揃いの指輪の方が全身ペアルックで歩くよりマシだと思うことにしよう・・




***終***


また長くなりましたがココに置き逃げします。
超短文が書けない・・・

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