BK日常小咄集


*毛布

・・・・・・・・・・・・・・・



寒い。
寒いが眠い。
だが寒い。
ああ、肩が出ているからか。
ということは、ケビンだ。

「・・・・やはり持っていかれていたか。だから俺は嫌だと言ったんだ」

二人で寝るのはいいが、毛布はそれぞれ別で良くないか?
いつのまにか半分以上を奪い、一人でくるまって眠っていやがる。
奪い返そうか?それとも面倒だが起きて他のを・・・・

「・・・・いや、どちらもよそう」

どうして何も着なかったんだろう、ケビンはともかく俺までも。
後で着ようと思った、だが疲れて眠かった。少しだけ休んでから、などと面倒くさがった己をいま恥じても仕方ない。

「せめてガウンを・・・・ベッドの上か中か、ああ足元のこれか」

行儀は悪いが毛布の中から足で引き上げよう。少しでも俺が横着しようものならブツブツ言う煩い奴は熟睡中・・・・

「ブロ?なにしてんだよ?」

チッ。起きやがった。

「おまえに毛布を独り占めされ寒くて目が覚めた。それでガウンを着ようと探していたんだ」

「独り占め?・・・・ああ、本当だな、すまない。いま返す」

「起きたならおまえも何か着ておけ、朝方は更に気温が下がるぞ」

「11月の寒さなんかまだ序の口だろ?オレはこのままでいい」

「何が序の口だ、人の分の毛布を奪って寝ていたくせに。次から掛けるものは別々にするからな」

「イヤだ、オレたちは何でも二人でひとつの仲だろ」

「そんな仲は願い下げだ。足をどけろ、おまえの足にガウンが絡まっている」

「毛布を返せば着なくても済むじゃないか。そうだ、ブロ、こっちを向いて寝てくれ」

「なに・・・・を、ッ!」

有無を言う間もなく抱き締められてしまった。『もう一汗かけば温まるぞ』とか何とか言い出すのだろうか?素っ裸同士で密着、この展開ではそれしか考えられない。

「も、もう俺はやらないぞ!」

「なんだそれ、勘違いするな。ほら、くっついて毛布に潜ると暖かいだろう?あんたもしっかりと抱き返せよ、朝まで離れないようにな」

「・・・・おかしな真似をしたら蹴飛ばすからな」

「今夜は二回で満足したから心配無用だ。今のオレはあんた専用の毛布でカイロ、いわゆる肉布団さ」

「ふん、肉は肉でも筋肉布団は固くて寝心地悪いな」

「失礼な。オレはあんたの筋肉布団なら超安眠出来る」

「・・・・とりあえず寝直すぞ」

「おう。離れると寒いだろうからちゃんとくっついとけよな」

「仕方ない、大きな使い捨てカイロだと思うことにする。でなければ立場が逆転した様な気がして違和感が拭えん」

ケビンがタチ(攻)気質で無いことが救いだが、ベッド上で主導権を取られると居心地が悪いものだ。

「立場が逆転とは何がだ?」

「・・・・なんでもない。おやすみ、ケビン」

「あ?ああ、うん、おやすみ。朝は一緒に起きような」

耳元で聞くこいつの低い囁き声は結構好きだ。
おかしなことさえ言わなければ、の話だが。

肉布団、か。
なかなか暖かいな、たまには甘えさせてもらうのも悪くはない、かな・・・?





---終---


【ケビブロではないです(笑)】
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