BK日常小咄集


*酔っ払い

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



――今夜は遅くなる。


その、ひとことだけの電話。
22時には帰ると言うから快く送り出したというのに、電話が鳴った時は既に22時を過ぎていた。
何時になるんだ?と訊く隙も与えずガチャ切りされ、すぐにオレからかけ直しても繋がらず。


「友人らと久々に会って盛り上がっちまってるんだろうな・・・・たまには仕方ないと許すべきだか?別に浮気しているわけじゃなし・・・・だよな?」


どうせメシだけでは終わらず、二軒や三軒ハシゴ酒されそうな予感はあった。
酒は飲みすぎなけりゃ今夜だけはいいと言ったのはオレだが、電話があってからもう2時間経つ。
日付が変わるまで帰らないとは思わなかった。今、何軒目だ?
どこにいるのか位は逐一報告させれば良かった・・・・ダディが一緒なら必然的に監視の目があっただろうが、こういう時にあのクソオヤジはいない。

「ウルフマンとバッファローマン、あとインディアンの超人・・・・名前は忘れたがみんな50過ぎの独身野郎だ。女のいる店に行っていたら許さんぞ、オレは!」


暖炉の火の音以外しないリビングで、まんじりともせず携帯電話の時計を見つめてブロを待つ。
長い。
1分1秒が長すぎる。
少し眠くもなってきたが寝たらダメだ、ブロが帰宅するまでこのまま待つんだ!




玄関で物音がしたのは深夜2時36分。
リビングまで1分以内に現れるはずだが5分経過しても来ない。廊下から靴音も聞こえない。

「まさか・・・・ブロのヤツ!」

椅子を蹴って玄関へ走れば案の定、閉めた扉を背にし床にへたりこんでいるブロがいた。


「ブロ!そんな所で何しているんだ!?」

「・・・・・・・・・・」

「あんた酔っ払ってるのか!?おい、寝るなって!」

しゃがんで目線を合わせようにもブロは俯いた姿勢のまんまだ。これは・・・・寝ている、そして酒臭い。だいぶ飲んだなコノヤロー!

なんだかムカつく。
このまま放置しちまおうか?
いや、今夜は結構寒いし風邪をひいたら大変だ。
しかし自業自得だものな、放っておけば懲りるだろ。
いやいや、せめてリビングのソファーまで運ぶべきだ、こんな酔っ払いでもオレの愛しいダーリン・・・・よし、担いでいくか。
ああ、優しいなあ、オレは。





--終--



▼▼▼▼▼おまけ▼▼▼▼▼


*ソファーにて・・・




「ブロ、ブロ」

「・・・・・・・・・・」

「ソファー倒してベッドにするぞ。毛布と、あと水を持ってくるからな」

「・・・・・・・・・」

「運んでも起きない、マジで寝てるな。おい、こんなのは今回だけだからな、今日から門限は22時だぞ」

「・・・・・・・・・・」

ダメだこりゃ。完全に寝ている。


寝室から毛布を、冷蔵庫からミネラルウォーターを、あとあれだ、まさかの時の為に洗面器とタオルの用意。着替えはどうしようか?一応何か持っていこう。




「ブロ、ほら毛布だ。肩までかけて・・・・ああ、このクッションでは頭が高すぎるな、こっちに変えるぞ」

頭を持ち上げ、クッションを柔らかいものと入れ換えるも身動ぎひとつしないブロ。
酒臭い寝息で死んでいないのは判る。だから心配はない、多分。

「あ、額に少し汗が滲んできた。暑いのか?」

さすがにコートは脱がしていたが軍服の上は迷ったんだよな。
半分くらいボタン外しておくか。下にTシャツ着ているし・・・・そうか、Tシャツを着替えさせた方がいい、汗が冷えたら風邪をひく元になる。

「おい、ブロ。これはいやらしい意味ではないからな、勘違いするなよ?風邪をひいたら困るだろうから着替えさせるんだ」

毛布は一旦取っ払って、と。
この軍服のボタン、固いんだよな・・・・よし、少し身体を起こして袖を抜いて・・・・ベルトも苦しいだろうから緩めて下のボタンも外しておこう。ファスナーは半分下ろして・・・・あ、今日の下着は紺色だ!

「み、見たかったわけではないぞ!たまたま見えてしまったんだからな」

なに言い訳してるんだよオレ!
ブロが起きたら怒るかも知れないが下は知らないふりをしよう。
そうさ、パンツまで履き替えさせる勇気はないしな。いくら全裸にするチャンスでも、さすがにそんなことは・・・・


ドスッ!


「ぐっ・・・・背に何かが、痛・・・・。起きて、いた、のか、いつからだ、あああああ!これはただ着替えを、ッ!」


バキッ!


「ぶ、ぶろ、うう」


すげぇ痛い、だが打ち所が良かったみたいだ。

だって紺色の生暖かい場所に顔面がヒットしたんですもの。
もうオレこのまま動かないもんね。
すごく幸せかも、えへへへへ。
酔っ払いのブロもステキ、ダイスキ、アイシテイマス。

随分思考が乱れている気がするが、まあいい。




翌朝、目覚めるとブロはソファーベッドですやすやと寝ていた。
オレはその下の床で鼻血を垂らして倒れていた。
紺色の幸せな世界は夢だったのか?いや、背中痛ぇし夢じゃないだろ。
あのあと何があったのか、サッパリ記憶にない。




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また長すぎて移動させるか迷いましたが、こっちに置きます;
お粗末様でしたm(__)m
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