BK日常小咄集
*テレビ
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―あ!!
―おっ!!
ある昼下がり。
ヒマすぎてテレビ観ていた二人は、同時に声を上げた。
「あれはジェ・・・」
「忘れてた!オレ観たい番組があったんだ!!」
またほぼ同時に。
しかし動きはケビンが先だった。
ブロッケンJr.の視界を身体で遮り、リモコンを手にチャンネルをバシバシ変えていく。
「えーと、あー、どのチャンネルだったかな?これか?いや、こっちか?このCM後かもな」
「ケビン!さっきのチャンネルに戻せ!俺は観ていたんだぞ、ジェイドが出てきたんだ、見せろ!」
「はあ?!ジェイドなんか見えなかったぞ、あんたの見間違えだ!」
「いや、確かにジェイドだった!ゲストコーナーは我が国の超人だと新聞のテレビ欄にあったろうが?!俺が弟子を見間違えるわけがない!」
「そりゃ幻覚だ!見たこともない新人がたまたま緑の服着ていただけだ!」
「では何故いきなりチャンネルを変える?おまえが昼間に観たいテレビなんぞあるわけがない!俺にジェイドを見せたくないからと下手な演技をしても無駄だ!それを貸せ!」
「イヤだ!!オレはこっちの、ほらこのクイズ番組の再放送だ、これを観たかったんだ!嘘じゃないぞ!」
「それは先週の夜に観ただろう!?簡単でつまらないとテレビに向かって文句を言っていたくせに!いいからリモコンを寄越せ!!」
「ダメだ!これはオレの・・・!」
二人はソファーの上でリモコンを奪い合い、やがて床に落ちたリモコンを先に取るべく床でも揉み合った。
更にはゴロゴロ転がるようにリビング中を這いながらも・・・・
「寝技とは汚いぞケビン!」
「あんたこそマジで関節技かけるな!!痛ぇじゃねーか!!離せ!」
「貴様こそ重い!どけ!!」
「チャンネル権がかかっている、オレはどかない!!って痛ぇからそれ以上締めるな!!こうなったらこんなもの・・・・」
―えぇーい!
―あっ!!貴様何を!?!
リモコンはケビンの足で蹴られ、リビングから廊下へ飛び。嫌な音をたてて壁に当たった。
「あーあ、壊れた!ざまあ!」
「この野郎・・・・!」
二人はそのまま罵り合いながら、リビングでプロレスを始めた。
テレビのことなど忘れ、日が暮れるまで・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・終・・・・・
【プチ解説】
ケビンは例えテレビを介してでも、ブロッケンJr.にジェイドを見せたくない....というよりも、ジェイドを見ているブロッケンJr.を見ることが耐えられないのでした。