BK日常小咄集
*客人
・・・・・・・・・・・
態度の違い過ぎに、まず腹が立った。
ケビンは仮面をつけているから表情は分からないが、話し声のトーンや会話からして真面目顔だろう。
相手の話をきちんと聞き、余計な口は挟まない。
二人が話し込むリビングの一角、そこだけが異次元並みの雰囲気だ。
客人が来る寸前まで俺に抱き付いていたとは、まるで思えない・・・
「ブロ、どうしたんだ?何か難しい顔しているが」
客人が帰った後、ケビンが早速抱きついてきた。
仮面を外し、いつもの不安そうな表情を見せつつ。
「前から思っていたが、おまえ、ウォーズと居る時は別人のようになるな」
「そ、そうか?別に何も意識してはいないが」
「嘘つけ!さっきまでの態度といい、口調といい、まるで別人・・・・俺といる時とはまるで違った」
「そりゃあ外向けの性格はあるさ。だがブロと居るときが素のオレだぞ」
「ならば俺達の関係を知っているウォーズなら素のままで接してもいいではないか」
「・・・・まあ、そうだが、一応はオレの元師匠だった時期が短くともあったから・・・・あんただってジェイドが来れば変わるだろ?それと同じだ」
「うっ・・・・それは、その・・・・」
「結婚したらお互い堂々と誰の前でもいちゃつこうじゃないか。だから早く決断しろよな」
「結婚、か。最近忘れかけていた。あまりにも近くに毎日一緒にいたからな」
「いつまでも内縁みたいな関係は嫌だ。ドイツでは結婚ではなくパートナーシップ制度とやらがあるだろ?そのくらいさっさと申請してくれ」
「だか結婚は出来んぞ」
「英国では可能だ。英国で結婚して暫く住んでベルリンに戻ればいい。英国にも家を建ててたまに滞在すりゃいい」
「・・・・面倒な結婚だな」
「オレと結婚したくないのか?誰の前でも公の場でも手を繋いだりキスをしたりしたくないのか?」
「それは俺が恥ずかしい」
「じゃあオレはいつまでも外では無口でアウトロー気取りのクールガイで通す」
「二面性がある奴は好きではないが、当座は仕方ないか・・・・だがウォーズと会っている時だけは何故か、モヤモヤする」
「つまり焼いてるんだろ?あんたたまに言うもんな。『俺よりウォーズとの方が似合いかも知れん』とか何とかさ」
「ウォーズは若々しいままだからなぁ。おまえと並んでも遜色ないほどに。俺は誰から見てもただの50過ぎたおっさんだ」
「歳なんか気にするなよ、オレは今のあんたを愛しているんたから問題ないだろう?ああ、もうこの話は終わりだ終わり!そっちへ行くから膝枕してくれよ」
「ベッドでならいいぞ」
「おっ、夕方からお誘いか?」
「おまえたちを見ていたら征服欲が出てきてしまっただけだ」
「いいな、征服しろよ。オレはあんたのものだぜ?手、繋いで二階へ行こうか」
「そうだな。一回戦して少し休んだら、飯を作ってくれ」
「今からじゃ少し遅めの晩飯になるな。白身魚のフライとイモとレタスのサラダでいいか?それならすぐ出来る」
「では二階へ行くぞ」
「手!手を出せよ」
二人、手を繋ぎいざ二階の寝室へ行こうとした時。
「うん?誰か来たようだ。見てくる」
「ちっ。勧誘かなんかだろ?放っておけばいいのに」
玄関からドア越しに、
「誰だ?」
と尋ねれば、
「オーッス!オレだ」
声の主はバッファローマンだ。
「ドイツに来たから寄ってみた!茶でも馳走してくれや」
「・・・・ブロ、ベッド・・・」
「膝枕で我慢しておけ」
バッファローマンも俺達の仲は知っている。
茶だけでは済むまい、夕飯も食っていくだろう。
「ケビン、飯は三人前だ」
「・・・・膝枕、絶対していろよな」
「わかった」
なぜ俺だけそうなる?
ウォーズが来た時も膝枕、或いは直前までの抱き合った姿を見せても良かったではないか・・・・ケビンの奴、自分だけ澄ましやがって!
今夜、覚えてろよ。
嫌と言うまで攻め立ててやる!
.....落ち無し風味END.....