BK日常小咄集


*危険な夜

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帰宅が遅くなったことはブロッケンJr.にとって、大したことではなかった。
問題はケビンに、遅くなる、と連絡をしなかったことだ。
携帯電話は持っていたが、充電をし忘れ、電話をかけようとした時には電源が切れていた。
公衆電話を使おうにもケビンの番号はメモも記憶もしておらず、携帯電話の電話帳が見れない状態ではかけようがない。
自宅の番号は分かるが、ケビンはジムにいる時間で在宅していない。ジムの電話番号は調べれば分かる。だがジムに電話をするほどでもないことで・・・

(帰ってから説明すればいいか)

遅くなったといってもドアを開けるのは20時位。これでも急いで歩いているんだぞ、と、ブロッケンJr.は自分を待ち構えているであろう鬼嫁もどきの姿を思い浮かべ、何度も溜め息をついた。

(俺はあいつの尻に敷かれるのは御免だ。第一、ケビンは30以上も年下だぞ?)

現代では年齢などあまり関係ないかも知れないが、ブロッケンJr.の世代は年功序列が常識な世の中である。
人生の大先輩としての面子を潰されてはかなわない。



玄関外の灯りがやけに眩しく見える。

(この扉の向こうで技をかけるべく身構えているほどケビンも暇ではあるまい)

腕時計は20時5分、午前様になったわけではないのだ。

静かに扉を開け、そのまま入らず数秒待った。ケビンの気配は感じない。が、ほのかに漂う匂いで存在確認が出来た。
もう夕飯の支度はとっくに終わっただろう、待ちきれず彼一人で食べたかも知れない。

(ダイニングとリビングから明かりが漏れているな・・・・下にいるのか?)

時間帯的に、普段はリビングでテレビを観ているかゲームに興じている頃。着替え以外に殆ど私室を使わないケビンが主に居るのはリビングだ。





「君、そこで何をしているんだ?」

「はあ・・・?」

「この屋敷の住人から、不審者が入り込んでいるようだと通報があった」

暗がりでよくわからなかったが相手は警官だった。
まさかケビンの奴が呼んだのか!

「ここは俺の家だ!自分の家に帰って何が悪い!!!」

「・・・・あ、ブロッケンJr.さんでしたか!これは失礼しました!いつもの服装と違いましたもので気付きませんでした!」

「判ったならジロジロ見るな。スーツ姿がそんなに珍しいか?」

「あの、いえ、まあ・・・・はい」

「俺が今、(ごくたまに)お国の為の仕事をしていることを知らんのか?貴様のような無知な若造によく警官が勤まるな」


新米なのだろう、若い警官はこれ以上ないほど頭を深々下げながら門の外へ消えていった。
明日、上官に文句を言ってやろう。


それより許せないのはケビンだ、俺を不審者と間違え警察を呼ぶとは。
超人ならば自分で取り押さえるなり何なり・・・・・


「そうか!あいつわざと通報しやがったのか!」

ブロッケンJr.の叫びと同時に、二階の奥からケビンの高笑いが聞こえた。


あーっはっはっは
はーっはっはっは


「おいブロッケンJr.!オレに無連絡でメシの時間を過ぎてコソコソ帰って来た罰だ!ざまあみろバーカ!」


あーっはっはっは
はーっはっはっは




それから約30秒後、あからさまに殺意の形相で目の前に現れたブロッケンJr.に、ケビンが死ぬほど折檻されたのは語るまでもない。





こんな些細なことでアホらしい二人ですねぇ。



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【注】
熟練の超人同士なので、多少折檻したところで大したことはありません(多分)


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