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︙
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瀬名 眞白
…あれ?

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瀬名 眞白
勝生、いねーじゃん。

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休憩時間になり、他の監視員と交代した眞白は予定通り休憩エリアに着いたが、
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そこに勝生の姿が見当たらず辺りをきょろきょろと見渡した。
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瀬名 眞白
(おかしいな…どこ行った?)

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プール内でのやり取りから5分もしないうちに休憩に入ったために、ほぼすれ違うことはないはず。
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不思議に思いながら、眞白はもう一度来た道を辿るように屋内プールへと足を向けた。
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…、大丈夫だよ、もうすぐ…―――
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瀬名 眞白
(…、ん?)

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ちょうど更衣室に差し掛かったとき、不意に勝生の声が聞こえた気がして、その方角にクルっと踵を返した眞白はずんずんと歩を進める。
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…寒くない?
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聞き慣れた声に導かれるようにしてロッカーの角を曲がると、
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瀬名 眞白
…、

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ぐす…っ、うぅ…ママぁ…
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武藤 勝生施設の人にアナウンスしてもらってるから、
もうすぐママが見つかるよ。 -
幼稚園生くらいの男の子と、その子を優しくなだめる勝生の姿が目に飛び込んだ。
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ただそれだけの場景ならいいのだが、
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瀬名 眞白
(…え、)

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瞬時に、眞白の精悍な双眸がわずかに取り乱したように見開かれる。
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瀬名 眞白
(おいおい…なんで、)

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勝生の上半身こそ、ラッシュガードを身に着けていない裸身だったからだ。
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瀬名 眞白
(さっきプールで着てたラッシュガードはどうしたんだよ、)

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なに惜しげもなく上半身晒してんだ…。
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見慣れているはずの勝生の美しい背中にドギマギして、思わずそれ以上踏み込めずにその場に立ち止まってしまった。
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『俺には、ラッシュガードをちゃんと着ろとか言ってたくせに』
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そう巡らせると、大人げなくむうっとむくれて唇を尖らせそうになる。
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…が、
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武藤 勝生…あ、眞白。
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眞白の気配に気づいた勝生が困ったように振り向いたことで、眞白はいつもの表情をかろうじて保った。
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瀬名 眞白
……どうした?迷子か?

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咄嗟に思いついた言葉を棒読みに近い状態で吐き出す。
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瀬名 眞白
(ラッシュガード、なんで脱いでんだよ?)

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瀬名 眞白
アナウンス、頼んでるのか?

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武藤 勝生うん、さっき頼んできたよ。
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瀬名 眞白
じゃ、そろそろ館内放送が掛かるな。

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瀬名 眞白
(ラッシュガードはどこへやったんだよ?)

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瀬名 眞白
…、

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瀬名 眞白
(…、キョドってるわ、俺)

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頭の中と口から滑り出る言葉の差異を内心で皮肉りながらも、眞白は子どもに視線を投げた。
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ママぁ…。
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瀬名 眞白
……

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瀬名 眞白
(…なるほど、コイツが着てるんか、勝生のラッシュガード)

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その子にしてはぶかぶかで大きすぎるそれは、間違いなく勝生のラッシュガード。
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サーフパンツだけを穿いたその子の体を冷やさないためなのか、勝生が気遣って着せているようだった。
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武藤 勝生ママを探して泣いてるからかわいそうで、放っておけなくてさ。
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武藤 勝生体が冷えるとよくないと思って、僕のラッシュガードを着せたんだけど…、
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瀬名 眞白
……

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武藤 勝生ごめんね、眞白、
すぐに休憩エリアに行けてなくて。 -
瀬名 眞白
…別に、それはいい。

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瀬名 眞白
……、

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短く切り返した後、眞白は熟考するようにプツリと声を区切る。
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子どもは好きじゃないが迷子は確かにかわいそうだし、心配して探しているはずの親の気持ちを考えると気の毒に思う。
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ゆえに、勝生が取った行動は正しい。
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泣いている子どもをひとりで放置するような、無情な気質じゃない勝生のことをとても誇りに思う。
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瀬名 眞白
……

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プロンプトに対応したレスポンスのように、眞白の脳内では冷静な思考が弾き出されてはいたが、
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瀬名 眞白
(とりあえず、何よりもまず……、)

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――勝生に何か羽織らせねーと。
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この姿をこのまま人目に晒すわけにはいかねえ。
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瀬名 眞白
……

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無言で自分の更衣室に舞い戻ろうと背を向けて歩き出した眞白を、気づいた勝生が引き留める。
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武藤 勝生え、あれ、眞白、どこ行くの?
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瀬名 眞白
…すぐに戻る。

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プールの施設内でようやく『迷子のお知らせ』のアナウンスが響く中、眞白は足早に更衣室のロッカーを目指した。
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…しばらくして、大きなバスタオルを手にすぐに戻ってきた眞白は、
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瀬名 眞白
勝生、これ。

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武藤 勝生え?
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瀬名 眞白
…これ、羽織っとけ。

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ついぶっきら棒に言ってしまいながら、勝生の裸身の両肩からすっぽりとバスタオルを掛ける。
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瀬名 眞白
(大きいバスタオル、持ってきておいてよかった…)

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マントの前を合わせるように、ぎゅっとタオルの端を胸でクロスさせて勝生の上半身を包み隠した。
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武藤 勝生あ、ありがと…、
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武藤 勝生でも大丈夫だよ?
僕、寒くないし。 -
瀬名 眞白
ダメだ。

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瀬名 眞白
油断したら風邪引くかもしれん。

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瀬名 眞白
(軽々しく素肌を見せるな、ったく…)

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…建前では『風邪を引かないように』と心配の色を見せている眞白は、
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『ミイラ取りがミイラになった』かのような体験をすることになった。
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結局は、勝生が抱く憂慮や懸念も、眞白の共鳴部分。
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そして、その夜―――
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武藤 勝生…ッ、あ、
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武藤 勝生まし、ろ…、っ!
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瀬名 眞白
っ、勝生…―――

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<<スキ…ッ>>
<<スキだっ…>> -
吐息混じりに吐き出した声までもが同時に重なり合う。
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武藤 勝生あっ…―――!
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瀬名 眞白
ッ―――!

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改めて様々な共鳴に気づいた眞白と勝生は、明け方までいつになく深く求め合う…
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盲愛の熱いひとときは、これからも二人の愛を深めていく。
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Now we’re even. END
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【あとがき】まずは、お読みくださりありがとうございます(多謝♡
結局は『お互い様だね♡』的なオチです“φ(・ω・。*)カキカキ
勝生はストレートにやきもちを表すので、わたし的には可愛いヤツだなと思います。
眞白はなんといいますか、『これ、やきもちか…』って自分に芽生える気持ちに気づくのがちょっとだけトロイ…w -
すぐに気づくときもあるんですが、結構ぼんやりしているというか。
やきもちだと気づく前に行動に出る…的な?そんな感じですかね。
【FACE to FACE】でも、拗ねたような眞白でしたが、ちょっとズレてましたからねw(まだご覧になっていない方はぜひ♪
あれも一種のやきもちなんですけどね♪ -
またこの二人のとある日常をSSで書いていければと思います(๑•ㅂ•)و✧
エピソード話、みなさんに楽しんでもらえると嬉しいです♡
ゆさみん
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