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光星が、お酒に酔って帰って来た。
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今日は職場の先生たちとの交流会で、日付が変わる少し前に、いつもと変わらない様子で。
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俺から見れば、どこがどう酔っているのか分からないくらいに、パッと見た感じは普段の光星だ。
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ただ、キッチンでガラスコップに注いだミネラルウォーターを飲むその姿をこっそり観察していると、
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瞳や白い頬が熱っぽいだとかの変化は見て取れた。
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瀬名 眞白
光星、大丈夫か?

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鷹野 光星ん…、問題ないよ。お酒には強い方だから…
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鷹野 光星ちょっと喉が渇いただけ。
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瀬名 眞白
そっか、それならいいけど。

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光星からプロポーズをされて半年くらいたった頃、俺は光星のマンションに移り住んで、今は一緒に暮らしていた。
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二人で住むには少し手狭だが、二人の近い距離感というか、肩が触れる近さで過ごす時間だとか…そういうのが俺としてはちょうどいい。
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瀬名 眞白
あ、光星、風呂入る?

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瀬名 眞白
湯加減見てくるわ。

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鷹野 光星眞白…、
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瀬名 眞白
ん?なに?

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鷹野 光星……、
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水を飲み終えた光星がくるりとこちらを見遣ったかと思うと、いつもより少し危なっかしい足取りで俺のところまで歩み寄ってくる。
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瀬名 眞白
(わ…、えっ、コレ、)

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瀬名 眞白
(意外と酔ってるんか…?)

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鷹野 光星…、
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瀬名 眞白
こうせ――

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鷹野 光星…捕まえた。
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瀬名 眞白
えっ、

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光星の両腕が俺の背中に回って、ぎゅっと抱き込まれる。
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それは、強いようでいて、柔らかな抱かれ心地。
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瀬名 眞白
…どうした、光星…?

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鷹野 光星ん……
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鷹野 光星お留守番、偉かったね、眞白…。
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瀬名 眞白
え?

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瀬名 眞白
あ、ああ、まあ…、

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鷹野 光星ちゃんと晩ご飯食べた?
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瀬名 眞白
食べたよ。
キムチチャーハン作った。
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鷹野 光星美味しそうだ…。
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瀬名 眞白
光星の分も、一応作ってある。

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瀬名 眞白
冷蔵庫に入れてるから、明日の朝にでも温め直して食べる?

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鷹野 光星ありがとう、嬉しいな…。
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鷹野 光星眞白はちゃんと自炊もできて偉いね。
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瀬名 眞白
…ありがと。

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瀬名 眞白
(いやいや、どうした、今更な褒め言葉…、)

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つーか、なんか光星、いつもより…、
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鷹野 光星寂しくなかった?
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瀬名 眞白
あ、うん…それは…、

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瀬名 眞白
寂しくないと言えば嘘になる、けど。

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鷹野 光星そうか…ごめんな、寂しい想いをさせて。
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瀬名 眞白
いやまあ、大丈夫だよ。

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瀬名 眞白
先生同士の飲み会、光星が楽しめたならオッケー。

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鷹野 光星…ありがとう。
優しくていい子だな、眞白は。 -
いつもよりもずっとスラスラと感情を出すというか、
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まるで、小さな子どもを優しくあやす保育士みたいな雰囲気。
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鷹野 光星今日は一日、なにがあったか聞かせて?
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瀬名 眞白
ん?「なにがあったか」?

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瀬名 眞白
大学でってこと?

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鷹野 光星うん、
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鷹野 光星朝、「行ってきます」って駅で別れてから、ずっと今まで離れていたし…。
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鷹野 光星お風呂の前に、今日一日の眞白の出来事を聞かせて?
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鷹野 光星…、っ―――
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やや掠れたようになる声で囁いたあと、チュッと俺の首筋に唇を押し当てる。
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瀬名 眞白
…ん、

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触れる唇が熱い。
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ふわふわと漂うアルコールの匂いが、光星の泥酔っぷりを表していた。
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鷹野 光星…ッ、―――
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ちゅぅぅ…っと、まるでヴァンパイアのように吸い付いたそこには、赤い花びらのように残るキスマーク。
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鷹野 光星ふふ…、
綺麗についた。 -
瀬名 眞白
この場所、なかなか目立つ…。

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全然嫌ではないが、さすがにちょっと恥ずかしい。
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その箇所にスッと指で触れて、照れたように目尻を歪めて見せた。
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鷹野 光星目立つ場所につけたから。
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瀬名 眞白
え?

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鷹野 光星隠したらダメだよ?そのままでいて…。
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瀬名 眞白
(…ヤバ…、)

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普段よりも艶めいた低音。
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まったりと紡がれて時折掠れるように、けれどもしっとりそした声色に耳奥までもくすぐられる。
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瀬名 眞白
(……色っぽ…)

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うう…、なんかいつもより光星のオトナの魅力が増してる…。
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いや俺だってオトナだけど。
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特に今、光星が醸し出すオトナ感は反則レベル。
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…それにしても。
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瀬名 眞白
(酒に酔った光星、なかなかヤベーな…)

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そんなことを悶々と脳内で張り巡らせていると、
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鷹野 光星そうだ、今日の一日の出来事、お風呂で聞かせてもらおうかな…。
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ハタと閃いたように俺を見た光星が、ゆったりと小首を傾げた。
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