☆ 心に灯る Insight -5

  • 鷹野 光星

    …眞白、今は嫌な気持ちが多いかもしれないけど、

  • 鷹野 光星

    お父さんが『そうなってしまった理由』が他にあるのかもしれない。

  • 鷹野 光星

    眞白が中学時代に荒れることしか思いつかなかった…そのときと同じで。

  • 瀬名 眞白

    ―――

  • 鷹野 光星

    ほんのわずかでもいい、
    今俺が伝えたことを、頭の片隅に忍ばせていてほしい。

  • ――「お父さんへの『嫌い』だという気持ちの駆動を、少しずつ緩めてみないか?」

  • 光星は、天窓から注ぐ月明かりを受けて少し硬直した状態になってしまっている俺に手を伸ばして包み込むように髪を撫でると、静かに微笑んだ。

  • 鷹野 光星

    俺はね、眞白、

  • 鷹野 光星

    眞白をこの世に送り出してくれたお父さんには、感謝しかないよ。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 鷹野 光星

    眞白のお父さんだから、

  • 鷹野 光星

    俺は眞白を愛しているから、眞白のお父さんのことも大切に思える。

  • 鷹野 光星

    眞白が俺の父親のことを大切に思ってくれているのと、同じ気持ちなんだよ。

  • 瀬名 眞白

    ……、

  • 鷹野 光星

    時間はかかるかもしれないけど…、

  • 鷹野 光星

    分かり合える日がくると、俺は信じてる。

  • そう優しく告げた光星はおもむろに起き上がると、俺の上から影を落とした。

  • 長い指先で、そっと俺の唇に触れる。

  • まるで小羽根でくすぐるように輪郭をたどったあと、広い掌で片頬を包んだ。

  • 俺の感情をまるごと浄化するような、その神秘的な深い優しさに触れて、素直に瞳を閉じる気持ちが芽生えているのに、

  • 瀬名 眞白

    …光星、今日は俺。

  • ああ…意地っ張りだわ、俺。

  • このまま抱かれてもいいのに、わざと唇を尖らせて光星を見上げた。

  • 父親のことを意外な角度から救い上げ、俺の心の中を思いっきり攪拌したから…、

  • なんとなく、気恥ずかしくて。

  • 鷹野 光星

    んー……

  • 鷹野 光星

    いいよ、じゃあ…、

  • 妖艶に色づき始める眼差しをそのままに、光星が俺をふわりを抱き起したことが合図となって、

  • 互いに恭しく唇を重ねた――。

  • 鷹野 光星

    っ、ぁ…ッ、あ…!

  • 瀬名 眞白

    …、ッ、ん…!

  • 艶めいた嬌声を耳にしながら、ゾクゾクと湧き上がる熱情を繰り返し打ちつける。

  • 瀬名 眞白

    ッ…、

  • 加速していた律動をわずかに緩めて角度を変えながら、汗ばむ肌に吸い付くように顔をうずめると、光星が俺を強く抱き込んだ。

  • 鷹野 光星

    ま、しろ…っ、

  • 鷹野 光星

    眞白の、全部を愛してる…、

  • 瀬名 眞白

    ッ、光星…、

  • 俺だって、負けないくらい光星を愛してる。

  • 誰よりも、マジで…狂いそうなくらい。

  • もしも失うことがあったら、すべてを破壊して消えてしまうくらいに。

  • 鷹野 光星

    …ッ、ぁ、あ…っ…

  • 鷹野 光星

    んんッ…、!

  • 鷹野 光星

    ―――ぁあっ…っ…、!!

  • 再び執拗に強めた熱動に繰り返し翻弄され続けた光星の体が、俺の背中を掻き抱いたままぐったりと弛緩する。

  • 瀬名 眞白

    …、ッ―――ん…、!

  • ……結局は…、俺…、

  • 瀬名 眞白

    っ、…ッ―――

  • 同時に、絶頂の波に飲み込まれて白く弾けた瞬間に、今まで霞がかっていた靄みたいなものが晴れていく。

  • 瀬名 眞白

    (光星とこうして愛し合えるのも……、)

  • 瀬名 眞白

    (俺をこの世に送り出してくれた父親のおかげもあるってことか…)

  • ……不本意だけど、それは紛れもない事実。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 瀬名 眞白

    (しかも、『似てる』とかさ…、)

  • 瀬名 眞白

    (……うぅー…)

  • 瀬名 眞白

    (そういや俺、父さんの若い頃と見た目も似てんだよな…)

  • ずっと前に見たことがある父親の若かりし日の写真を思い浮かべて、その整合率の高さに内心で苦く笑った。

  • 瀬名 眞白

    …ああ、もう…、

  • 鷹野 光星

    …ん、?

  • 瀬名 眞白

    さっき光星が余計なこと言ったからだぞ…。

  • 甘い気怠さを引きずりつつ肩で息を整えながら、滲む汗が艶やかに光る陶器のような光星の肌を指先でなぞって呟く。

  • 瀬名 眞白

    余計なこと言ったから、

  • 瀬名 眞白

    父さんが『魔王』じゃなくなる…かも。

  • 瀬名 眞白

    『かも』、『かも』な、あくまで…。

  • なんとなく今はまだ、憎まれ口に近いニュアンス。

  • 鷹野 光星

    それは良い傾向だな、眞白…。

  • 瀬名 眞白

    …いやまだ、そこまでじゃねーから。

  • 瀬名 眞白

    人型でも、あの人の血の色はたぶん緑。

  • 鷹野 光星

    っ、はは、

  • 鷹野 光星

    きっと温かい赤い血が通ってる…俺はそう信じてる。

  • 鷹野 光星

    だって、眞白のお父さんだから。

  • 瀬名 眞白

    ……じゃあ、俺も血の色、緑…。

  • 鷹野 光星

    ふふ…、違うよ。そういうことじゃない。

  • 鷹野 光星

    …分かってるだろう?

  • 瀬名 眞白

    うー……

  • 鷹野 光星

    意地を張る眞白も可愛い。

  • 瀬名 眞白

    …光星さん?
    それ以上は、黙りましょうか?

  • 今も快感が残る火照った体で抱き合いながら、光星の鎖骨の辺りにチュッとキスマークを付けた。

  • 鷹野 光星

    ―――

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 俺の腕枕で寝息を立てる光星を傍らに、ベッドの上から天窓で零れる月明かりを辿る。

  • 瀬名 眞白

    (…父さんを嫌悪し始めて十数年…いきなりの…、)

  • これはなんだ……閃き?気づき?

  • あり得ないと思いながらも、これまでの俺とは少し違う、心の隅っこに小さな陽だまりが生まれているのが自分でも分かっていた。

  • それは、今まで感じたことのないあったかい光。

  • 俺と父さんの想いがいつか交錯したとしたら…

  • 『本当の意味での父と息子になれる』…考えたこともなかったことが現実として鮮やかに色づくことも、

  • 確立することのない未来ではなく、『実現可能な遠い未来の話』…なのかもしれない。

  • 心に灯る Insight END



  • 【あとがき】まずは、お読みくださりありがとうございます(多謝♡

    今回のこのお話、実はわたしが【グレースケール】を書き始めたときから、ずっと書き綴りたい内容でありました。
    眞白と父親の今の関係性は絶望的…ではあるんですが、
    和平が好きなわたくし、なんとか救済措置を取れないだろうかと、ずっとずっと思っておりまして。

  • いよいよ、その入り口を書くことができたかな…と思います“φ(・ω・。*)カキカキ

    光星のおかげといいますか。
    父親のことを話したのが光星でなければ、眞白の心は動かなかったでしょう。

  • 中学生の頃の眞白は、当時23歳の光星自身を救っていて(EPISODE【[August 30]】参照)、
    弁護士である38歳の頃の父親は、光星の祖父母を救っていて。
    心の中にあるそれぞれの正義は、紛れもなく共鳴なのだと思います。

  • さて、ここで、少し眞白の父親について。

    光星の祖父母を助けた頃の眞白の父親は、まだ小さな個人事務所で弁護士として活躍していました。
    しかし、光星のおじいちゃんの案件のあとに請け負った弁護で、初めての敗訴を経験しています。

  • それは、被害者には非がない裁判。
    若い頃から優秀な弁護士として快進撃を進んできた父親にとっては初めての敗北。
    そのとき父親は、屈辱よりも深く「ある程度の地位がなければ、思うように弁護が進まない」という、対抗しきれない巨大な壁にぶちあたり、自分の事務所のさらなる拡充を心の決めるのでした。

  • 弱者のための弁護に絶対に敗北しないためにはこれまで以上の実力を身につけ、事務所を大きくしていくことがカギとなる…取りつかれたようにその考えを胸に秘めた父親は、ますます仕事に打ち込むようになります。

  • 眞白が生まれたのはこの頃で、その後もずっと、血眼になって事務所の発展に力を注ぐ父親の姿を、眞白は小さな瞳で見続けてきたのでした。
    志を胸に注力する父親だけを眞白のその目に映していければよかったのですが、
    時には根底にある父親の想いがズレることも…。

  • MAINの【霜月の再会編】で、眞白が父親を嫌悪するようになったいきさつを少し書いていますが、
    眞白はそれ以外にも、不明朗だったり不徳義だったりのギリギリの部分を目の当たりにしたことで父親と距離を置き、次第にすれ違うようになっていったのでした。

  • 眞白の父親は、潜在意識では分かっているのです……自分と眞白はとても似ている、と。

    自分が後ろ暗いとき、眞白は対照的にまっすぐな瞳で否定し、正論をぶつけてくる…そんな眞白から目を背けてしまうのは、『若い頃の自分の姿』が重なるからなのだ、と。

  • そして、『碧芭よりも眞白を弁護士にして引き継がせたい』という強い想いが根底にあったことで、それが裏目に出て眞白に圧ばかりをかけてしまい、あげく嫌悪を抱かせることになってしまったのでした。

    以上の内容をキャラの裏話に書こうかと思ったんですが、早々にネタバレするのもなと思って、今回、あとがきに記しました“φ(・ω・。*)カキカキカキ

  • いつか仲直りのお話を書いてみたいのですが…
    もちろん、理想は「和解」。
    でも、そう簡単にはいかない…。
    「和解」は、眞白がずっと年を重ねた先にあるかも…?
    なので、今は書けるとしても、「完全な和解ではないけど理解し合う」程度のものかなと|ω・`)ウーン、ムズカシイ…

  • 眞白の父親は、『善人だけど壊れた人』…というイメージ。
    それも、修復が困難な壊れ方をしています。
    だからこそ、光星から眞白へひとつの気づきを与えさせたかったわけなんですが。

  • 『良薬は口に苦し』

    眞白という純粋な『良薬』を父親が噛み締めたとき、これまでの父子関係が少しずつ変わっていくかも…『かも』ですが(←眞白流w

    今回のお話のオチは、今までのお話の中で一番意外だったかもしれません。
    お読みいただいたみなさんは、どのように感じましたか?

  • さて、
    作中で、光星の弟さんのお嫁さんを以前見かけたことがあると、眞白のモノローグがありましたが、
    それについては、MAINの【体育祭編】に書いておりますので、まだご覧になっていない方はぜひ♪

  • あと、光星はスイーツが好きなんですが、綿菓子がお気に入りだという新事実!

    実はわたしも、綿菓子が大好き♡(普段はほとんど甘いものを食べませんがw

  • …わ、なんかこれまでの中で最長のあとがきになっちゃいましたねσ( ̄∇ ̄; )

    読んでくださり、改めてありがとうござます。

  • エピソード話、みなさんに楽しんでもらえると嬉しいです♡


    ゆさまる。

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