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瀬名 眞白
……

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チラリと視線を投げて声を辿ると、同じゼミの女子学生が苦笑を湛えながらこちらに歩み寄って来る。
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彼女たちの足音にカラスはパタパタっと羽を広げて、後ずさるように数歩後ろに退いた。
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*あの、うちらと同じゼミの瀬名くんだよね?
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そばまで近づいた女子学生の一人が、少し甘えるような声で眞白に話しかける。
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瀬名 眞白
…そうだっけ?

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-ふふ、そうだよー。
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*今日はうちらの席の隣に座ってたじゃない?
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瀬名 眞白
…ふーん?

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瀬名 眞白
(全然覚えてねーわ、悪いけど)

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*一人でランチ?
良かったら、向こうで一緒にお茶しない? -
瀬名 眞白
しない。

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瀬名 眞白
あんたらとお茶飲む義理もねーし。

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明らかに不機嫌そうに眞白は畳み掛けて、ふいっと視線を逸らす。
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*…、
-
-…、
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予想外に醸し出された不穏な雰囲気を察知したのか、女子学生は途端に緊張した面差しを晒した。
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*そ…そう…。
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-で、でもさ、
不気味なカラスと一緒だと、不穏なことが起きるかもよ? -
-向こうのカフェテリアならカラスも来ないのに。
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瀬名 眞白
―――

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そのまま黙って立ち去ればいいものを、余計なことを口走った別の女子学生の言葉に、眞白の片眉がピクリと波打った。
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自分の中での地雷を踏まれたとき、眞白の表情に生み出されるその変化。
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それは微々たるものだが、たとえるなら、安全ピンを抜いた手榴弾に近い。
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瀬名 眞白
…、

-
瀬名 眞白
(カラスのなにが悪い)

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女子学生たちの価値観を全否定するつもりはない。
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世の中にはいろんな考え方があるし、
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カラスが集まるところには不幸ごとが起きやすいといったような、『不吉の象徴』と例えられているのは確かだ。
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けれど、それならば。
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瀬名 眞白
……

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眞白は、小さく溜め息を吐き出して気持ちを整えてから、ゆっくりと口を開いた。
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瀬名 眞白
あんたらさ、なんでそう思う?

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*え…?
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――もしもカラスの色が違ったら…黒じゃなかったら、同じように不気味だと言うのだろうか?
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それは、かねてからずっと抱いている眞白の思考。
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瀬名 眞白
カラスがいたら、なんで不気味だとか思う?

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ベンチに座ったままで女子学生二人の姿を交互に見遣りながら、比較的穏やかな声音で眞白は続けた。
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瀬名 眞白
もしも、カラスが真っ白な鳥だったら?

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瀬名 眞白
あんたらさ、それだったら『幸福を呼ぶ鳥』だとか言うんじゃねーの?

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-…、
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瀬名 眞白
『ただ普通の』白い鳩が『幸福の象徴』って言われてさ。

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瀬名 眞白
じゃあ、鳩が黒い鳩だったら、『不吉な象徴』って例えるんだろうが?

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*…、
-
瀬名 眞白
コイツは色が黒いだけの、『ただ普通の』カラスだ。

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瀬名 眞白
見た目で決めつけるな。

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瀬名 眞白
カラスはな、頭がいいんだよ。
危機察知とかもすげーの。
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瀬名 眞白
生存本能に長けてて、賢すぎて不気味だと勘違いされるだけ。

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すっとベンチから腰を上げて立ち上がった眞白の所作に倣うように、カラスがトコトコッと眞白に近づいた。
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その動作はまるで、眞白の言葉にスタンディングオベーションを送るいち観客のようで。
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瀬名 眞白
あんたら、一応医者目指してんだよな?

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瀬名 眞白
医者になったら患者がどんな見た目だろうが、助けなきゃなんねーこと分かってる?

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*―――
-
-―――
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瀬名 眞白
狭い了見の医者なんて、いらねーんじゃね?

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瀬名 眞白
いちいち見た目で判断してんじゃねーよ。

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カア!
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眞白が吐き出した言葉に賛同するように、カラスが大きくひと鳴きする。
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意外なことで窘められた女子学生二人は、ちょっぴり気まずそうにそそくさとその場を後にした――。
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瀬名 眞白
…かといって、おまえの好き放題はダメだぞ?

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瀬名 眞白
粛々と健気に生きろ。いいな?

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瀬名 眞白
俺も、そうするから。

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カア!カア!
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笑顔で律するように告げた眞白に、カラスはプルプルッと羽を震わせて、まるで了承したかのように元気な鳴き声を返した。
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人と動物の心の交流が、何かを変えるきっかけになることがあるかもしれない…
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これは、眞白と一羽のカラスの、
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かくも不思議なアメージングストーリー。
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黒でも、白でも。 END
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【あとがき】まずは、お読みくださりありがとうございます(多謝♡
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BL要素ゼロ、甘さゼロですみません<(_ _)>
眞白の動物好きな一面を書いてみたくて…
ちょっと風変わりな感じになりましたが、これが眞白です(๑•̀ •́)و✧.゚ -
確かにカラスはやっかまれることが多いんですけれども。
でもそれらは、カラスからしたら生きるための行動ですので、なんといいますか、
例えばゴミを漁るカラスを見て、「ああ、このコもお腹空いてるんだろうな…」と思えるような、ちょっとした温かな気持ちがあってもいいかなって思うんですよ。 -
動物は、お腹空いてるからの行動。
人間みたいに自分勝手に、自分の都合で他人の命を殺めたりしない…すべて生きるためのサバイバルアクション。
あいつらみんな腹減ってんですよ…と。 -
そこが、人間と決定的に違う。
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ただ、こうは言っても熊とかになると大変ですからね…
襲われた方の家族の心中を想うと、軽々しく語れるようなことではありませんが。 -
野生動物との共存は本当に難しいです。
お互いのテリトリーを、その一線を越えないように暮らしていくのが本当に大事ですよね。 -
そして、それをどうやっていくのかを第一線で考えていかなければならないのが、
今現在、地球上でアタマ張ってる我々人間なのだと思います。 -
せめて、見た目で「不気味」だとか偏見を持つのは控えたい。
それは動物だけじゃなく、人間に対しても同様。
そんな風に思う、わたくし:ゆさみんであります<(_ _)> -
眞白節炸裂な今回のSS、いかがでしたでしょうか?
嫌な想いをした方がいたらごめんなさい。
でもこれは、譲れない想いでもありますので、ご了承くださいね。 -
エピソード話、みなさんに楽しんでもらえると嬉しいです♡
ゆさみん
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