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〔光星父〕:
いらっしゃい。疲れてないかい? -
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〔光星父〕:
さあ、中に入って一息ついて、一緒にお茶でも飲もう。 -
瀬名 眞白
はい、
ありがとうございます。
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玄関先で一礼した俺を見てすぐ、降り注いだ満面の笑顔と気遣いに恐縮しながらも緊張が解けるのを感じた。
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〔光星母〕:
何もないところだけど、ゆっくりしていってね。 -
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〔光星母〕:
…あ、眞白くんの好きなお魚を使った料理を作ってるから、楽しみにしててね。 -
瀬名 眞白
ありがとうございます、
楽しみにしてます。
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続けざまに、キッチンの奥からパタパタとスリッパを鳴らして現れたその優しい笑顔と言葉に心が和んだ。
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瀬名 眞白
…、

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鷹野 光星……眞白?どうした?
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鷹野 光星さ、リビングに行こう。
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瀬名 眞白
お、おう…。

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瀬名 眞白
お邪魔します…。

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瀬名 眞白
(…ヤバ…、)

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なんか、めっちゃあったかい。
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上がり框で靴を脱ぎながら、ほわほわしてしまう。
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瀬名 眞白
(光星のお父さんとお母さんって、すごく感じのいい人たちだな。さすが光星の両親…)

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瀬名 眞白
…、

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ふと、よぎらなくてもいい俺の父親の顔が脳裏を掠めた。
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瀬名 眞白
(いやいや…、出てくるんじゃねえよ…)

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光星の父親とは大違い。
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俺の父親は、自分の利益に繋がることには笑顔を見せるけど、そうでなければスルーという鬼みたいな人だから。
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瀬名 眞白
(……いや、アレはあやかし…、魔物か?)

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『妖』とか『魔物』とか、自分の父親に対してとんでもない形容詞しか浮かばない。
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というか、こんなときにホログラムみたいに脳内で浮かび上がってくるなんて、マジで嫌すぎる。
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瀬名 眞白
(あの人のことはどうでもいいわ、頭の中から消し去れ、俺)

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ふぅ、と短く息を吐き出し、気を取り直してスリッパに足先を通した。
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〔光星父〕:
眞白くん、うまい珈琲があるんだが、一緒にどうかな? -
鷹野 光星父さん、眞白はあまりそういった飲み物は飲まないよ?
-
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〔光星父〕:
そ、そうか…、 -
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〔光星母〕:
眞白くんは、炭酸飲料が好きなのよね? -
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〔光星母〕:
光星から聞いていろいろ用意してあるから、眞白くんはそれにしましょ。
…どれがいいかしら? -
瀬名 眞白
あの、ありがとうございます、

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瀬名 眞白
でも俺…、

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光星や光星の母親の気遣いに感謝しながらも、
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視界の端で、ほんのちょっぴりしょげたみたいになっている光星の父親の気配が気になって、
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瀬名 眞白
俺、光星のお父さんと同じ飲み物でお願いします。

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ぺこりと頭を下げた。
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光星が目を瞬いて、それでいてどこか嬉しそうに口端を緩める。
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鷹野 光星えっ、いいのか、眞白?
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瀬名 眞白
いい。珈琲も飲めるから、俺。

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笑顔で切り返した俺に、光星の両親の笑顔が一段と明るくなった気がした。
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〔光星父〕:
実はね、
行きつけのカフェでブレンドしてもらった珈琲豆を買って来たんだよ。 -
「眞白くんと一緒に飲めたらいいなと思って」…と続けたその言葉が、ジンと胸に染み込む。
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さっき、光星のお父さんが沈んだようになっていたのは、きっとそのことがあったからだ。
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瀬名 眞白
ありがとうございます、

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瀬名 眞白
そういったしっかりした珈琲ってあまり飲んだことがないので、楽しみです。

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何より、俺のことを考えて買いに行ってくれたというその気持ちに感激したから、さらににっこりとした笑顔を貼り付けた。
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〔光星父〕:
よかった!
これは僕のお気に入りのブレンドでね…――― -
嬉しそうに話す笑顔の口元が、光星によく似ている。
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しんしんと、心の奥にふわふわの綿が降り積もるように暖かくなるのを感じながら、
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俺は、光星のバックボーンにそっと踏み入った。
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…季節は初夏に差し掛かった頃。
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日中は少し汗ばむ日もある、五月晴れの空に自然と心が弾む5月の連休。
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俺は、光星と光星の実家である鷹野家に遊びに訪れていた。
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今年の俺の誕生日に光星からプロポーズされた際に、光星と一緒に実家に帰省するという計画が叶ったというわけだ。
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〔光星父〕:
僕は、ゴルフが下手の横好きでね、
部下も練習に付き合うと言ってくれるんだが、やっぱり申し訳なくてね。 -
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〔光星父〕:
少しでもうまくなるように、一人でこっそり打ちっぱなしに行くんだよ。 -
光星のお父さんは厳格そうには見えるが、言葉を交わすととても柔和な印象を与える人だ。
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そして、どこかお茶目で可愛げがある人。
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『なんとなく誰かに似ている…』と、頭の中でこれまでの記憶を探っていたら、俺の中3のときの担任の先生に似ているのだと気づいた。
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〔光星母〕:
結婚して30年経つけど、ゴルフのどこがおもしろいのかいまだに分からないわ。 -
カラカラッと笑う光星のお母さんは、ふわりとした雰囲気を持ちながらもわりとハキハキと物を言う人で、
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光星は母親似なんだなと思えるくらい、特に目元が似ている。
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肩までの髪を明るい茶色に染めていて、にこやかな笑顔が魅力的な人だ。
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端々まで行き渡る気遣いは、光星がこの母親から受け継いだものだろうと感じた。
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…光星の両親とリビングで珈琲を飲みながらしばらく談笑したあと、午後からは光星の弟夫妻の家に行き、初対面を果たした。
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〔光星弟〕:
やあ、いらっしゃい! -
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〔光星弟嫁〕:
どうぞ、上がってくださいね。 -
ここでも、弟夫妻は笑顔で迎え入れてくれて、ほこほこした気持ちで昼下がりのひとときを過ごしていた。
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スープの冷めない距離の近隣にある、弟夫妻の家。
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世間では嫁と姑の確執だとかそういった話題をチラリと耳にしたことはあるが、
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この家族に限ってはそういったものはなく、絵に描いたように明朗で翳りのない家族だ。
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仮に意見の行き違いがあっても、きちんと向き合って話し合うことができる…そんな絆の深さを感じた。
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