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武藤 勝生
いやいや…それだけじゃ分かんないって。

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瀬名 眞白そ?
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さすが理系男子というべきか。
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頭の中で自己完結していて、全く言葉が足らない。
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どうしても伝えなければならないことなら脳みそフル回転で言葉を並べるはずなのに、
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今回の僕の質問に対する回答は、眞白にしてみればたいしたことじゃないだろうから余計だ。
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武藤 勝生
じゃあ、質問に創意工夫を凝らすよ。

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瀬名 眞白「質問に創意工夫」…すげーな?
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武藤 勝生
眞白が分かりやすく答えないからだよー。

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ちょっぴりからかいを含んで口角を上げた眞白に、むむっと駄々っ子のように眉根を寄せる。
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瀬名 眞白分かりやすいだろーが?
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武藤 勝生
分かりにくいよっ。

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瀬名 眞白そーか?
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武藤 勝生
…あのね、
「このメンバーの中に年上が二人いるから」って、
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武藤 勝生
どうして僕以外は初対面のみんなと、一緒にご飯を食べようって気になったんだよ?

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武藤 勝生
眞白はなかなか人見知りさんなのに。

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瀬名 眞白あー……、それ聞きたい?
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武藤 勝生
いやだから、それを詳しく知りたいんでしょうがっ。

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瀬名 眞白あ、そう。
…別にたいしたことでもねーのに。 -
武藤 勝生
眞白にとってはそうでも、僕は気になるんだよっ。

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瀬名 眞白ん―…、まあ、そうか。
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ひとまず納得した様子で頷いた眞白は、平らげたねぎまの串を串立てに差し入れた。
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瀬名 眞白店が焼鳥屋だし、俺らよりも年上がいるってことは、そいつらは酒を飲むかなと思って。
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武藤 勝生
……、え?

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瀬名 眞白ん。
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武藤 勝生
え、待って…、

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瀬名 眞白ん?
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武藤 勝生
年上の二人がお酒を飲むからって…なに?

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実はこのとき、僕の中ではある推測がつき始めていた。
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でも、可能なら眞白の口からそれを聞き出したい。
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だからちょっとあざといけど、分からないフリをしてみる。
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武藤 勝生
んん?
…つまり、それがどうしたのさ?
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瀬名 眞白…悪く取るなよ?
おまえの友達はみんないいヤツばかりだし。 -
瀬名 眞白ただ…
こういった場で盛り上がって、ノリとかで勝生が酒を飲まされねーように… -
瀬名 眞白ちょっと傍についとこうかなって思った。
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武藤 勝生
―――…

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武藤 勝生
(わわ…。思った通りだ)

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年上の友達以外の他のみんなは僕たちと同じ年齢。
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『そいつらも飲まねーように』…その考えもあったと眞白は続けた。
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瀬名 眞白見張りってわけじゃねーけど…、
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瀬名 眞白おまえも、周りのみんなもさ、ついノリで…ってなっちゃわねーように。
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武藤 勝生
そんなことのために…?

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武藤 勝生
普段付き合わないようなご飯会に着いて来てくれたの…?

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瀬名 眞白「そんなこと」っていう言い方はよくねーぞ?
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瀬名 眞白成人してるとはいえ、一応俺らはまだ酒を飲める年じゃねーし。
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瀬名 眞白なにかあってからでは遅い。
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武藤 勝生
…さすが眞白、硬派すぎる…。

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瀬名 眞白生きた化石だろーが。
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自嘲気味な笑顔を浮かべた眞白だったが、その瞳の奥には揺るぎない思考が煌めいていて、やっぱりすごくかっこいい。
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武藤 勝生
心配してくれたんだね、僕や他のみんなのこと。

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瀬名 眞白…まあ、俺が主に心配したのは勝生のことだけど。
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武藤 勝生
―――

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えっ、嘘じゃん…?
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嬉しすぎるんだけど。
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瀬名 眞白今日は他になんの用事もなかったし、勝生と飯行くのもわりと久しぶりだったし、ちょうどいいとも思ったんだよ。
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瀬名 眞白ただ、まあ…、
誘ってくれたとはいえ、遠慮もしねーでみんなの中に割り込んだみたいになって悪かったけど。 -
武藤 勝生
そんなことないよ…、
みんな、眞白と知り合えて喜んでるから。
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世の中に、こんな親友っている?
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もしも【世界親友選手権】みたいな大会があったとしたら、眞白は間違いなくダントツで優勝だ。
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武藤 勝生
(ああもう…ほんとに好きすぎる)

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胸をキュンキュンさせながらも、
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武藤 勝生
眞白はちょっと、僕に対して過保護過ぎない?

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胸を貫く甘い痛みを隠すためにも、わざと揶揄するみたいに切り返してみる。
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瀬名 眞白…「過保護」?
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瀬名 眞白大事なモンを過保護にして何が悪い。
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武藤 勝生
うわ…、

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瀬名 眞白…ん?
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武藤 勝生
(ヤバイ、ほんとに大好きっ)

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武藤 勝生
眞白らぶーー!!

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感極まって胸の内側で想いが爆発。
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眞白にしなだれかかるように二の腕に絡みついた。
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今ここで僕がどんなに愛情表現を露呈させたとしても、眞白は小学校からの親友だから違和感はない。
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がっちりと腕にしがみつかれて体を揺らされながらも、親友である僕のそのアクションをのんびりと受け止めて眞白は微笑んだ。
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瀬名 眞白知って満足したか?
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武藤 勝生
すっごく満足した!

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瀬名 眞白そうか。
…まあ、うまい焼き鳥も食えたし、俺も満足したわ。 -
二ッと口端を軽く引き伸ばした笑顔。それは眞白が少し照れたときに見せる破顔だ。
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ジンジャーエールのガラスコップに手を伸ばした眞白は、淡い琥珀色の液体を勢いよくグイグイっと喉奥に流し込む。
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焼き鳥の秘伝のタレが喉の渇きをもたらすから、普段よりもいい飲みっぷりだ。
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瀬名 眞白……、あれ…?
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武藤 勝生
…ん?どうした?

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瀬名 眞白いや…、
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瀬名 眞白なんか変な味だった、今飲んだやつ…。
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瀬名 眞白普通においしいけど…なんか…、
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ちょっぴり怪訝そうに眉間に縦皺を作った眞白の右隣りで、
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ああっ!
もしかしてそれ、飲んじゃった?! -
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俺のカクテルだよ!?大丈夫?!
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…と、年上の友人の心配そうな声が飛んできたころには、眞白の頬はほんのりと赤く染まり始めていた。
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瀬名 眞白やばっ…、バカか俺、間違えた…?
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眞白が頼んだジンジャーエールのすぐ横に、同じように追加注文していたカクテルが置かれていたせいだ。
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中身の色も注がれているグラスの形も一緒、パッと見ただけでは判断がつかないし、
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僕との話にフォーカスしていたから眞白が間違ってしまうのも無理はない。
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心配した友人たちが声を掛ける中で、僕は眞白の顔を覗き込んだ。
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武藤 勝生
大丈夫?!眞白!

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瀬名 眞白…たぶん。
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武藤 勝生
ごめん、話に夢中で…、僕もちゃんと見ればよかった!

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瀬名 眞白おまえのせいじゃねーよ。俺がちゃんと確認しなかったのが悪い。
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武藤 勝生
気持ち悪くなってきてない?

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誤って、初めてアルコールを取り込んでしまった眞白の体が心配だ。
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瀬名 眞白今のところ平気。
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武藤 勝生
よかった…。
でも、もう帰ろう。
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僕の心配をしている場合じゃない。
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ナイトのように僕のことを気に掛けてくれていた眞白は、ガラスコップのカクテルを半分以上、飲んでしまっていた。
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