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ゆったりとした運転操作を保ち、ようやく駐車場に着いた僕は、助手席で眠ったままの眞白に向き直り声を掛けた。
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瀬名 碧芭
眞白…、

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瀬名 碧芭
遊園地に着いたよ?

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瀬名 眞白―――
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瀬名 碧芭
…、眞白?

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助手席ですやすやと眠り込んでいる眞白は、窓側に頭を傾けていてその表情は深く読み取れない。
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でも、こちらから見えるその頬や耳元あたりを注視してみると、なんだか紅潮している。
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それは、普段の健康的な眞白の肌には不似合いな色。
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瀬名 碧芭
…え、…?

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なんだか嫌な予感がして、そっと伸ばした指先で眞白の頬に触れた。
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瀬名 碧芭
―――…っ、あつッ、…え?!

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瀬名 碧芭
(嘘…、眞白、もしかして熱がある?!)

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急いで自分のシートベルトを外して眞白に寄り添うように近づいた僕は、手のひらでその額に手を当てた。
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瀬名 碧芭
…わ、えっ、?! ひどい熱…!

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瀬名 碧芭
眞白?!

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瀬名 碧芭
ねえ、眞白っ、大丈夫?!

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瀬名 眞白…、っ、ん……、
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瀬名 眞白……あ…。
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瀬名 眞白遊園地、着いた…?
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瀬名 碧芭
つ…着いたけどっ…、

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瀬名 碧芭
それよりも眞白、すごい熱だよっ!?

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瀬名 眞白……俺…?
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瀬名 碧芭
そうだよ!

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瀬名 碧芭
熱、いつからあったの?!

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瀬名 眞白…ん…、知らねー…。
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煩わしそうに切り返してくる眞白の言葉を押しのけるようにして、矢継ぎ早に疑問符を投げかける。
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瀬名 碧芭
昨日は??

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瀬名 碧芭
体調が悪かったんじゃないの?!

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瀬名 眞白……んー…分かんねー…
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瀬名 眞白ちょっとヘンな感じはしたけど…、
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瀬名 眞白別に平気だったし…、
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瀬名 眞白ただの風邪じゃね…?
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瀬名 碧芭
そんな…、

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瀬名 碧芭
今日は僕の誕生日だからって、無理して来てくれたんじゃないの??

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瀬名 眞白……
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眞白は気怠そうに身をよじって体勢を整えただけで、口を噤んで答えない。
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というか、寝起きが悪い眞白にとっては30分程度の仮眠でも頭の回転を鈍らせるから、今こうしてやり取りができているだけまだマシだ。
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瀬名 碧芭
(…きっと、途中からしんどくなってきてたんだ…)

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もっと早く気づけばよかった。
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乗れるようになったはずの絶叫マシンを、さりげなく回避しようとしたことに。
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車に乗り込んでしばらくしてから、眠いと言った眞白が不調フラグを立てていたことに。
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もっとちゃんと探ればよかった。
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最初から、眞白が遊園地ではなく映画を勧めたのはなぜかってことを。
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おそらく眞白は、動き回る遊園地よりも、静かに過ごせる映画を僕に選んでほしいから提案したんだ。
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でも僕は、今年も自分の誕生日に眞白と過ごせていることに舞い上がってしまっていて、
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なにも勘付くことなく、自分のわがままを通してしまった。
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――ほんとに僕は、バカ兄貴。
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瀬名 碧芭
無理してくれてたんだね…。

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瀬名 碧芭
ごめんね、眞白…。

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瀬名 眞白…無理はしてねーよ。
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瀬名 碧芭
でも…、

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瀬名 眞白ちょっと寝たら、なんか楽になったかも…。
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スゥッ…と息を吸い込んで軽い深呼吸をした眞白は、ごそごそっと上体を起こしてシートベルトを外すと二ッと飾らない微笑を向ける。
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瀬名 眞白碧芭の誕生日は、皆勤賞狙ってんだよ、俺。
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瀬名 碧芭
―――…えっ、

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瀬名 眞白俺が碧芭と過ごしたくてここにいる…、
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瀬名 眞白あ。内緒にしとこうと思ってたこと、言っちゃったわ。
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瀬名 眞白寝とぼけてるせいだな、うん。
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瀬名 眞白寝とぼけてるときって、本音ぶちまけるときがあるみたいだしな…。
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瀬名 眞白つーか、今日の俺、寝起きなのにフツーに喋れてるじゃん、すごくね…?
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瀬名 碧芭
…―――

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言葉の最後にはどこか茶目っ気を含んだように自画自賛をして見せた眞白に、胸がぎゅうっと締め付けられて声が詰まる。
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もちろん、苦しいわけじゃない。
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瀬名 碧芭
…、ッ―――

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瀬名 眞白……碧芭?
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瀬名 碧芭
ぅう…、っ、…ましろぉ…っ!

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助手席の眞白に覆い被さるようにしてその体を上から強く抱き込んだ僕は、ポロポロと涙を流した。
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発熱をしている体温の高さがダウンジャケットの上からでも伝わってきて、眞白の苦痛を推し量ると胸が痛いけど、
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今は、どうしようもなく心が震えて。
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瀬名 眞白っ、お、い…!
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瀬名 眞白寄るな、離れろ、移ったらマズイ――
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瀬名 碧芭
いいんだもん!

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瀬名 碧芭
眞白の風邪は僕が全部もらうんだもんっ!

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瀬名 碧芭
…っ、ぐす、ッ、ぐすっ…、

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瀬名 眞白…泣くな、心配ねえよ。
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瀬名 碧芭
風邪のことで泣いてるんじゃないもん、…っ、

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瀬名 碧芭
眞白の…、

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瀬名 碧芭
眞白の気持ちが嬉しくて…、ぅう…、

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『僕の誕生日で皆勤賞を狙う』…そんな眞白の想いを知ることができた今年の誕生日は最高すぎるから。
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瀬名 眞白…仕方ねえな…。
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瀬名 眞白マジで移っても知らねーぞ?
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瀬名 眞白……泣き虫兄貴。
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くすっと短い笑声を漏らした眞白は、僕の肩を柔く押しやったかと思うと、
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むにっと頬を柔く抓ってから、涙で濡れた僕の目元を優しく拭ってくれた。
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