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︙
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ピーク時の時間帯が過ぎ、グッと客足が減ったコンビニ店内に客として残るのは俺だけ。
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鷹野 光星
眞白、これをお願い。

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優以斗との話を終えた俺は、ペットボトルの珈琲をカウンターの上に置き、微笑みながら眞白に声を掛けた。
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背を向けてなにか作業をしていた眞白は、無言でこちらに振り向く。
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瀬名 眞白…ありがとうございます、
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瀬名 眞白180円になります。
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どういうわけか、その言い回しはマニュアル通りの他人行儀で。
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瀬名 眞白ちょうどいただきます。
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鷹野 光星
…、?

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不思議に思いながら代金をトレーに乗せた俺に応対する眞白は、なんだか少しむくれているようにも感じた。
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鷹野 光星
…眞白?

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瀬名 眞白……、なに。
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鷹野 光星
どうした?
なんだか様子が変っていうか…、
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瀬名 眞白……別に。
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鷹野 光星
でも――

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瀬名 眞白俺、今日は光星の家に泊まんの止めよーかな。
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はあっ…と、これまでに見たことがないような失意を滲ませて、溜め息交じりに眞白が畳みかけた。
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鷹野 光星
えっ…どうして?

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想像していなかったいきなりの発言に、思いっきり戸惑ってしまう。
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鷹野 光星
眞白?

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瀬名 眞白……
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鷹野 光星
どうしたんだ?

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瀬名 眞白……さっき、店内清掃してて、たまたまチラッと外見たら、
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瀬名 眞白光星が優以斗さんと仲良く喋っててさ。
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鷹野 光星
―――…あっ、

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瀬名 眞白「あっ」ってなに?
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瀬名 眞白なんかやましいことでも話してた?
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訝しげに目元を引き締めて、ツンとした様子で眞白が言う。
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瀬名 眞白いったいどんな話をしてたんだか。
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鷹野 光星
そんな、やましいことなんて何も…

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瀬名 眞白じゃあさ、サッサと話済ませて、店に入ってくればいいじゃん。
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鷹野 光星
それは、その、話が少し長引いてしまったから――

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瀬名 眞白俺、めっちゃ気になって、
なんかいつもより多めに床のモップ掛けしたわ。 -
瀬名 眞白マジでもう、今までの中で一番の仕上がりってくらい、床がピッカピカになったわ。
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鷹野 光星
(……え、ちょっと待て…嘘だろ?)

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信じられない気持ちが胸の中で渦巻く。
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初めてこんな眞白を目にしたから。
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これまでもほんの少し拗ねたようになることはあっても、ここまで子どものように不貞腐れたことはなかったのに。
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鷹野 光星
(珍しいな…)

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その態度の愛らしさに、思わず呆然となってしまう。
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そして、俺は強く悟った。
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鷹野 光星
(…ああ、そうか…、)

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鷹野 光星
(迷走するのは、俺だけじゃないんだ)

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どんなに心根が強い眞白でも、元恋人同士だった俺と優以斗が長話をしているとなると、気が気じゃないのだということを。
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鷹野 光星
(普段、ここまでの態度を見せてくれないから…)

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鷹野 光星
ごめんな、眞白。

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瀬名 眞白…っ、な、なにがっ?
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瀬名 眞白なにが「ごめん」?!
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瀬名 眞白まさか、元サヤとか――
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鷹野 光星
気づいてやれなくてごめん。

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瀬名 眞白…えっ?
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鷹野 光星
絶対に、俺が眞白を裏切るようなことはないから。

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鷹野 光星
安心していいんだよ?

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瀬名 眞白……、ほんとか?
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鷹野 光星
ああ。

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瀬名 眞白……『焼き木杭』が燃え盛ることねーか?
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鷹野 光星
ははっ、面白いことを言う、

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鷹野 光星
燃え盛らないよ、絶対に。

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瀬名 眞白……
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鷹野 光星
眞白がいつも俺に『信じろ』って言ってくれているように、
眞白も俺のことを信じてくれ。
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瀬名 眞白………うん…。
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鷹野 光星
大丈夫だから。

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静かに俯いた眞白の片頬にそっと手を伸ばして、さらりと撫でる。
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ちょうどそこに、
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――あっ!
え、えっ…と、?! -
店の奥から現れた店長が俺たち二人を目にして驚き、バツが悪そうな面持ちで声を途切れさせた。
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鷹野 光星
驚かせてすみません。

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鷹野 光星
俺は、眞白…――瀬名くんの恋人なので…つい。

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初めて俺が気兼ねすることなく、自ら率先して周知の事実を生み出した瞬間。
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ああ…なるほど、そうなんですね…!
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鷹野 光星
ええ。
決して不審者ではないのでご安心を。
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もう一度、今度は眞白の唇の輪郭を親指の先で短くなぞり、意気揚々と恋人同士であることを見せつけた。
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鷹野 光星
じゃ、バイトが終わるまであと少し、外で待ってるから。

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鷹野 光星
…もちろん、今夜はうちに泊まるよな?

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瀬名 眞白泊まる!
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鷹野 光星
よかった。

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鷹野 光星
あと少し、頑張って。

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︙
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ほんのりと頬を赤らめながらも、嬉しそうに大きく頷いた眞白を見遣ってから外に出た俺は、
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晴れ晴れとした気持ちで夜気に触れながら、星屑がひっそりと煌めく星空を眺めていた。
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鷹野 光星
……

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眞白のことを待つこの時間ですら愛おしい…そう巡らせながら。
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迷走のあと END
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【あとがき】まずは、お読みいただきありがとうございます(多謝♡
「光星」「優以斗」「眞白」の『迷走』を書き表してみましたφ(・ω・。)かきかき
その迷走のあとに知るそれぞれの心の動き…的な感じでしょうか。 -
なんといいますか、光星の心を少し楽にしてあげたかったというか…優以斗との切ない別れがあって、優以斗の真意を光星に教えてあげたいな…そんな風に思って書いてみました。
あと、眞白が普段よりも拗ねたところとかも。
やっぱり、迷走しちゃうときもあるんですよね、チート機能発動男子もっ笑 -
ちなみに、フードフェスのときのお話は【EPISODE STORY】の【描く先には君がいる】で書いてますので、まだご覧になっていない方はぜひ♪
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エピソード話、みなさんに楽しんでもらえると嬉しいです♡
ゆさみん
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