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︙
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皆が帰った後の静まり返った教室は、なんだかやっぱり不気味で。
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武藤 勝生
(夜の学校って、昼間と全然違うんだよなー…)

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さらに、【学校の怪談】といったキーワードが脳裏にちらつくせいで、一人でパソコン作業をするのがなんだか怖くなった僕は、
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職員室へ向かい、担任の黒木先生の隣の机で残りのタスクに取り掛かることにした。
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黒木先生の隣は国語科担当の鷹野先生の机で、1年生のクラスの担任をしている先生はもう帰路についたらしい。
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その机上はきちんと整理整頓されていて、鷹野先生の丁寧で几帳面な性格が表れていた。
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武藤 勝生
(僕の部屋の机とは大違い…)

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部屋に訪れた眞白が、いつも見かねて片付けてくれるのがルーティンだ。
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かっこいい、優しい、強い、気が利く…眞白はマジで最高。
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武藤 勝生
(…ヤバイ、いきなり『眞白らぶ』に浸りそうになる前に、気持ち切り替えて頑張らないと)

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キリっと気を引き締めて、作りかけの進行表に目を向けた。
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そうしないと、今日中に終わらせなければならないタスクを消化できない。
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武藤 勝生
(…ええっと…、んー……全員、当日の7時半には学校に集合…、)

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武藤 勝生
(いや、いけるかな?やっぱり7時にするか…)

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それでも危うい気がする…。
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武藤 勝生
先生、相談なんですけど…
当日の集合時間って、7時でもいけると思います?
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黒木 紗衣そうねえ…、
アクシデントに備えて、もう少し余裕を見ておいた方がいいかも。 -
武藤 勝生
ですよね。

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黒木 紗衣学園祭当日は、朝の6時から学校を開けるみたいだし、念のため、あと30分早めてみるのはどうかな?
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黒木 紗衣私もそれに合わせて、少し早めに教室を開けておくから。
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武藤 勝生
了解です。
じゃ、集合時間は6時半ってことにしますね。
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明日にはクラスの皆に配布しなければならない進行スケジュールが、着々と組み上がっていく。
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パソコンのキーをパタパタと叩いて、見やすいようにレイアウトを整えた。
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武藤 勝生
……

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不意に、教職員もほとんど帰宅した職員室をくるっと見渡すと、室内灯のせいなのか無駄に白んでいてやけに明るい。
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だからなのか、連なる窓ガラスがポスターカラーの黒インキで塗り潰したように真っ黒で、薄気味悪さを増していた。
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武藤 勝生
(…うわ、なんか怖いな…)

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武藤 勝生
(いきなりあそこに貞○みたいな幽霊の顔が映ったりしたら…)

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途端にぞくぞくっと背筋に冷たいものが走る。
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怖がりなくせに余計なことを想像する僕が悪いんだけど。
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武藤 勝生
…、

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黒木 紗衣……
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授業で使うプリントか何かを作成しているのか、隣の席でパソコンに向き合っている黒木先生の姿をチラリと視界の端に捉える。
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先生がそこにいてくれるだけで、怖がりな僕の心もほわほわと緩和された。
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けれど、先生は僕たちのクラスの担任だから、僕が帰るまで残らなければならないのだと思うと申し訳ない。
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気を取り直し、進行スケジュールの仕上げに向けてパソコンの入力作業に集中した。
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黒木 紗衣…ねえ、さっきから思ってたんだけど、武藤くんってタイピング速度が速くてすごいね。
私より速い気がするっ。 -
武藤 勝生
パソコンでゲームするからですかね…?
自然と速くなっていったっていうか。
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黒木 紗衣わあ、そうなんだあ!
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黒木 紗衣ゲームって可能性を広げるねー!
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にこやかな笑顔でゲームを素直に肯定する教師は、この学校内では黒木先生だけだろう。
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この柔軟な明るさは貴重だ。
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武藤 勝生
(…よし、できた。あとはモニターに流す商品メニューのスライドショー作ったら完了だな)

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けど、今日はこの辺でパソコンを閉じる。
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作り上げた進行表はクラス全員分を明日の朝一でプリントアウトするとして、
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メニューの画像を載せた4枚程度の簡単なスライドショーなら、教室での作業を手伝いながらでも明日中に完成するから。
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武藤 勝生
(んー…働いた)

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腕時計を見ると23時を過ぎた頃。
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僕は自転車での帰宅だが、黒木先生はいつも電車で帰路に就く。
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先生が終電に間に合うか心配したけど、
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黒木 紗衣彼氏が迎えに来てくれるから大丈夫。
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ひそひそと僕に耳打ちした黒木先生は、問題ないことを微笑みながら告げた。
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逆に僕の帰路を気に掛けてくれた先生に向けて、『僕こそ大丈夫ですよ』と気丈に振る舞ったあと、一人で自転車置き場に向かう。
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武藤 勝生
……

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余裕めいて告げたはいいが、やっぱり暗い場所は怖い。
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武藤 勝生
(なんでこんなに暗いんだよ……いや、夜だからだけどさ)

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…でも、それだけじゃない。
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自転車置き場の電灯が一部切れた箇所もあるし、しかも点いたり消えたりと、今にも明かりが途絶えそうにチカチカとしている電灯もある。
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武藤 勝生
(私立のくせに、きちんと取り替えておけよな)

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高い授業料払ってんのにさ…と、
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内心で威勢よく文句を並べ立てるのは、この暗闇の恐怖に飲み込まれてしまわないためだ。
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けれど、
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武藤 勝生
(…いや、マジで暗すぎじゃん)

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強がっていた気持ちが一気に沈下する。
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自分の自転車を置いてある自転車置き場に近づけば近づくほど、暗闇が深まっていくからだ。
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武藤 勝生
(なんでだよ、もうー…)

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マジで電灯替えてくれ、頼むから。
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武藤 勝生
(明日の朝、校務の人に言いに行こう…)

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大きな溜め息を吐き出したのは、恐怖を払拭して新たに気持ちを奮い立たせるため。
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さらにお気に入りの歌をハミングして恐怖心を誤魔化しながら、少し足早に歩を進めた。
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