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瀬名 眞白
…あのさ、勝生、

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武藤 勝生≪…ん?≫
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瀬名 眞白
俺さ…、思ったんだけど、

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武藤 勝生≪うん。≫
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瀬名 眞白
なんつーか、もしかして、その…

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瀬名 眞白
勝生がさ…、

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武藤 勝生≪え?なーに?≫
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このとき、眞白の心の奥にある小さな嵐のような乱れを、親友であり眞白に想いを寄せている勝生が気づかないわけがなく。
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武藤 勝生(ああ…極端に緊張してるときの眞白のクセが、ぽろぽろ出てるなあ…。どうしたんだ?)
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武藤 勝生≪なになに、いったいどうしたのさ?≫
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眞白が並べようとする言葉のばらつきに着目した勝生は、こっそりと小さな苦笑を浮かべていた。
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武藤 勝生≪なんだか眞白の声が小さくて、聞こえにくいんだけど?≫
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瀬名 眞白
…っ、悪い。

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武藤 勝生≪いいけど。どうしたんだよ?≫
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瀬名 眞白
その、勝生さ、
まさかとは思うけどさ…、
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武藤 勝生≪んー?≫
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瀬名 眞白
なんつーか、その、

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瀬名 眞白
勝生、俺のことを…さ、

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瀬名 眞白
す、好き…っつーか、

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武藤 勝生≪…―――≫
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武藤 勝生(――そういうことか…。なんでまた急に)
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眞白が珍しくおずおずと、それでいて懸命に紡ぎ出す言葉に対し、取り乱すことなく冷静にフォーカスする勝生がいた。
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武藤 勝生(いったいなにがきっかけだ…?)
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はっきりしたことは分からないが、電話の向こうの想い人は知らなくてもいいことを知ろうとしている。
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武藤 勝生≪……≫
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知ってどうするつもりなのさ、眞白。
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『鷹野先生らぶ』の『鷹野先生だけを愛している』、目移りすらしない健気なおまえが。
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武藤 勝生(……この際、)
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武藤 勝生≪……、≫
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…いや、ダメだ。
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想いをぶちまけようかと思考が揺らいだが、きっちり踏み止まった。
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眞白と光星との愛にヒビが入っている状態なら、勝生は迷うことなく眞白を攫う。
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でも今、二人は確かな愛で結ばれていて、『好きだ』と想いを示したところで、ある意味の破滅を生むだけ。
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それはきっと、眞白が一生望んでいない『壊滅』だから、と。
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武藤 勝生(眞白のことだから万が一のことを想定して、まっすぐに僕と向き合おうと考えて、探りを入れてるんだろうな…)
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知らなくていい真実を確かめようとしてしまうあたりが、不器用極まりない。
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けれど、そういう男なのだ、眞白は。
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とても誠実で、純粋で。
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武藤 勝生(もう…誰だよ、眞白に余計なきっかけを与えたの)
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武藤 勝生(しんどい思いをさせたくないのに…)
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眞白の中学時代の仲間の一人が悪気なく当時の想いを暴露したのが事の発端だと知る由もなく、勝生は少し頭を抱えた。
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武藤 勝生(んー……仮面を被ることにはだいぶ慣れてきたから平気なんだけど、)
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やっぱり、嘘はつきたくない。
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少しばかり複雑な思考回路の中で逡巡していると、
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瀬名 眞白
…勝生?

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沈黙を保った勝生のモノローグに耐え切れなくなったのか、
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遠慮がちながらも割り込むように、真実に辿り着こうとしている眞白の声が受話口から漏れた。
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武藤 勝生≪……≫
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まるで、置き去りにされた小さな子犬がポテポテと歩いて、下から曇りのない純粋な瞳で自分を見上げてくるような、そんな愛くるしい感覚―――
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それは、眞白に強い恋心を抱くがゆえの、勝生だけに触れる琴線。
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武藤 勝生≪…、≫
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眞白が無意識下で描き出した『状景』に、ほんのわずか勝生の思考がぐらついた。
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武藤 勝生≪…好きだよ。≫
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瀬名 眞白
えっ――

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武藤 勝生≪眞白のこと、大好きだよ。≫
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武藤 勝生≪めっちゃ好き。≫
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瀬名 眞白
―――…

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武藤 勝生≪眞白のことを嫌いになれって言われても、絶対に無理。死んでも無理…≫
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…『親友なんだから』。
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勝生は畳み掛けるように、無邪気にそう続けた。
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武藤 勝生(危ない危ない、マジで告白しそうになったよ)
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たとえぐらつくことがあっても、『親友』というキーワードは絶対に外さない。
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どんなに恋焦がれても眞白の親友でいよう――鉄壁のように揺らがずその心構えを保つのが、勝生の愛のカタチ。
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ただ、『好き』という想いは正直に言葉に乗せたい。
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武藤 勝生(それくらいは許してくれ…)
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縋るように思いながらも、勝生は普段通りの笑みを顔に貼り付けて、軽い笑声を通話口に向けた。
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