[ March 5 ] -3

  • 鷹野 光星

    あと…、
    もう一つ、大切な話があって。

  • 瀬名 眞白

    なに?

  • 鷹野 光星

    実は、実家に帰る前に、碧芭さんに会ってきたんだけど…。

  • 瀬名 眞白

    えっ?

  • 瀬名 眞白

    碧芭に…?なんで?

  • 鷹野 光星

    ……眞白。

  • 瀬名 眞白

    な、なに?

  • 鷹野 光星

    ……

  • 瀬名 眞白

    なんだよ、どうした?

  • 鷹野 光星

    ……俺と、

  • 瀬名 眞白

    えっ?

  • 鷹野 光星

    俺と…、『結婚』してほしい。

  • 瀬名 眞白

    えっ?!

  • 瀬名 眞白

    け、「結婚」…?!

  • その重厚な二文字の言葉に、一瞬頭の中が透明に弾けて思考が止まる。

  • 鷹野 光星

    まだ日本での同性婚は認められてないけど…、

  • 鷹野 光星

    それでも、その形を眞白と作りたいんだ。

  • 瀬名 眞白

    ―――…

  • 光星が言うように、日本での同性婚は認められていない。

  • けれど、二人の絆を今よりもさらに深めることができたら…。

  • わずかな戸惑いと大きな喜びが頭の中で交じり合う中、少しばかり震える声で問い掛ける。

  • 瀬名 眞白

    俺で…、

  • 瀬名 眞白

    俺なんかでいいのかよ?

  • 瀬名 眞白

    後悔とか――

  • 鷹野 光星

    しない。

  • 瀬名 眞白

    マジで…?

  • 遠慮がちに探りながらも、ものすごく嬉しくて。

  • 鷹野 光星

    後悔なんて絶対にしない。

  • 鷹野 光星

    このプロポーズを実現させるために、俺の本気を改めて碧芭さんに伝えてきちんと許可をいただいたうえで、

  • 鷹野 光星

    実家に戻ってカミングアウトしてきたんだから。

  • 瀬名 眞白

    …光星…。

  • 瀬名 眞白

    (ヤバイ…、嬉しすぎる)

  • 『本当の意味での永遠の愛』を二人で刻んでいくという、『新章』を手にしたような高揚感。

  • 瀬名 眞白

    (……、)

  • けれど、ふと巡るマイナス思考。

  • 瀬名 眞白

    あのさ、

  • 鷹野 光星

    うん?

  • 瀬名 眞白

    光星の家族に、俺たちのことは認めてもらえても、

  • 瀬名 眞白

    『結婚』については反対されたら…?

  • 鷹野 光星

    反対されたっていい。

  • 鷹野 光星

    もしもそうなったら、眞白と二人で駆け落ちするから。

  • 瀬名 眞白

    ―――…

  • 躊躇のない、余裕すら感じさせる光星の微笑が目に映った。

  • 俺は光星に出会う前から、そりが合わない父親とはいずれ絶縁することになるだろうと思っていた。

  • その父親と添い遂げる心積もりの母親とも、縁を切るまでに至らなくても疎遠にはなるだろうし、

  • 家族としての密な絆が残るのは碧芭くらいだと、漠然とそう捉えていた。

  • でも、『鷹野 光星』という人間に出会い恋に落ちて、今まさに強固な永遠の絆が形となって生まれようとしている。

  • 俺にとってそれは、満足すぎる流れだけど。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 鷹野 光星

    …眞白?

  • 瀬名 眞白

    ……、

  • 俺は、父親や母親との親子関係が消える覚悟でずっと生きてきたから、このままでいい。

  • 無論、分かってくれるはずがない自分のセクシャリティについて、二人に伝えることもない。

  • けど、光星の家族は、俺の陳腐なそれとは違う。

  • 瀬名 眞白

    カミングアウトして、せっかく光星のセクシャリティを家族に分かってもらえたのに、

  • 瀬名 眞白

    『結婚』を反対されて駆け落ちとかになったらさ…、

  • 瀬名 眞白

    せっかくの光星と光星の家族がさ…、

  • 鷹野 光星

    縁が切れてもいい覚悟で、カミングアウトしてきたんだよ。

  • 畳み掛けた光星は、真摯な眼差しで俺をしっかりと見据えた。

  • 鷹野 光星

    俺はね、眞白。

  • 鷹野 光星

    俺のすぐそばにいてくれる人が、どの誰よりも『瀬名 眞白』でなければダメなんだ。

  • 瀬名 眞白

    ―――

  • 光星が紡ぎ出す言葉ひとつひとつが耳奥でリフレインして。

  • なんだかもう、牡丹雪がしんしんと降り積もるように感激が心を埋めて、ただただ光星の誠実な想い受け止める。

  • 鷹野 光星

    眞白と恋人になったときから、ずっと考えてたんだ、

  • 鷹野 光星

    眞白の二十歳の誕生日にプロポーズしようって。

  • 瀬名 眞白

    …、光星…。

  • 鷹野 光星

    眞白がどんなに俺のことを気遣ってくれたとしても、

  • 鷹野 光星

    この想いだけは絶対に曲げない。

  • 鷹野 光星

    …今年の誕生日プレゼントに、これを受け取ってほしい。

  • 穏やかな笑みとともに目元を引き締めた光星は、リビングのセンターテーブルの細い引き出しから小さな箱を取り出した。

  • 瀬名 眞白

    …わ…、これ…、

  • 受け取った小箱を開けると、二つのペアリング。

  • 銀色の輝きはまるでマリッジリングみたいで、ますます感極まる。

  • 鷹野 光星

    …眞白、

  • 鷹野 光星

    嫌じゃないなら、手を出して?

  • 瀬名 眞白

    …い、嫌なわけねえ…っ、

  • 瀬名 眞白

    嬉しすぎて、ドキドキしてるだけ…。

  • 鷹野 光星

    はは、それならよかった。

  • 一つは俺の薬指に、一つは光星の薬指に…互いに指輪の交換をした。

  • 瀬名 眞白

    わ…
    サイズぴったりじゃん…!

  • この瞬間、ずっと前に碧芭の愛車の中で流れていた『Che’N〇lle』の『Baby I Love 〇』が、頭の奥で楽曲を奏でる。

  • まるで今、白く光り輝くチャペルにいる気分だ。

  • 鷹野 光星

    指の太さが俺とほぼ一緒だから、たぶん大丈夫だと思ってた。

  • 瀬名 眞白

    こんなサプライズ、マジでヤバイんだけど…。

  • 鷹野 光星

    …よかった、無事にプロポーズできて。

  • 鷹野 光星

    ホッとしたよ。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 瀬名 眞白

    (つーか、もしかして光星…、それでこの間から緊張したような妙な感じが出てたのか…?)

  • いや、分かんねーよ、そんなのっ。

  • まさかの『プロポーズ計画』が密かに練られていただなんて、誰が想像するよ?

  • 瀬名 眞白

    …なんつーか、がっつり騙された気分。

  • 鷹野 光星

    人聞き悪いな。騙したつもりはないのに。

  • 鷹野 光星

    でも、サプライズは大成功だな。

  • 瀬名 眞白

    いや、大成功にもほどがある……嬉しすぎる。

  • 鷹野 光星

    …碧芭さんも、すごく喜んでくれてたよ。

  • 瀬名 眞白

    えっ、

  • 鷹野 光星

    実は前に…――

  • ――『俺が必ず、瀬名を攫いに行きますので。』

  • 以前、碧芭にそう伝えていたのだと光星は言った。

  • そして今回、光星がプロポーズの許可を取りに碧芭の元まで出向いたとき、

  • 瀬名 碧芭

    《こっちの面倒なことは、全部僕に任せて。》

  • 瀬名 碧芭

    《宇宙一可愛い僕の弟…眞白のことを、どうかよろしくお願いします。》

  • 嬉し涙を浮かべながら、碧芭は深々と頭を下げたらしい。

  • そのときの様子を回顧した光星の瞳にも、キラリと涙が光った。

  • 鷹野 光星

    あのときの碧芭さんの姿を思い出すと、今でも胸がいっぱいになる。

  • 鷹野 光星

    本当に碧芭さんは、眞白想いの素敵なお兄さんだよ。

  • 瀬名 眞白

    (…ヤバ、俺も泣きそうだ)

  • 俺にとっての世界一の兄貴は、どこまでも弟至上主義で。

  • 碧芭の深い情愛にこっそり胸を打つ。

  • 鷹野 光星

    碧芭さんは絶対に大丈夫だって言ってくれてたけど、

  • 鷹野 光星

    本当は、断られたらどうしようかって、眞白の誕生日が近づくにつれてとても緊張したよ。

  • 瀬名 眞白

    こんなにも好きなヤツからのプロポーズ、断るわけねーだろうがっ。

  • 鷹野 光星

    「こんなにも好きなヤツ」…さりげなく嬉しいことを言ってくれてありがとう。

  • 艶めいた声で囁いたと同時に、光星が俺の目尻にキスを降らせた。

  • 瀬名 眞白

    …ん、
    光星のこと、誰よりも好き。
    マジで好き。
    超絶好き。

  • 鷹野 光星

    俺も負けないくらいに眞白が大好きだよ。

  • 鷹野 光星

    …愛してる。

  • 俺の左手をそっと手にした光星は、薬指で光るリングに視線を落としてそこに優しく口づける。

  • 瀬名 眞白

    プロポーズされたからには、光星のこと、俺の人生かけて愛しぬく。

  • 鷹野 光星

    俺も…、
    俺のすべてを眞白に注ぐよ。

  • 瀬名 眞白

    (…、ヤバ…)

  • 熱っぽい光星の眼差しに魅入られて、途端に増大した情欲が俺の体の中心にゾクゾクと揺さぶりをかけた。

  • 瀬名 眞白

    …押し倒していい?

  • 鷹野 光星

    まだダメだよ。
    今夜はレストランを予約してるし、

  • 鷹野 光星

    まずは眞白の誕生日を祝ってから。

  • 瀬名 眞白

    ん――……でも、

  • 瀬名 眞白

    今すぐ『デザート』を食べたいな…――っと!

  • 鷹野 光星

    っ、あっ、こら…っ、眞白ッ…――

  • 瀬名 眞白

    悪い、我慢できねー…

  • ソファーに押し倒した光星の白い首筋を柔く甘噛みしたあと、艶やかに濡れる唇に深くキスをした――。

  • …まるでひとりぼっちにされたかのように少し寂しく思っていた今年の俺の誕生日は、二人で不変の愛を綴ることを誓う日になった。

  • 嬉しさで舞い上がって今夜は眠れない。

  • いや、互いに深く愛し合うから、きっと朝まで眠らない。

  • ――HAPPY BIRTHDAY TO ME.

  • 生まれて初めてこれほどまでに愛する人に出会った俺は、

  • この愛を守るために、ますます無敵だ。

  • [ March 5 ] END



  • 【あとがき】まずは、お読みいただきありがとうこざいます(多謝♡

  • 『この世界軸』では、最終的にこの二人は『結婚』に辿り着くだろうなあと思いまして、光星に頑張ってもらいましたφ(・ω・。)かきかき
    日本ではまだ同性婚は法律で認められていないので、光星の戸籍に養子縁組で眞白が入るかなと。
    だからこそ、『結婚』というその形を光星の家族に受け入れてもらえなかったら、光星の家族の絆が壊れてしまう…眞白はそう考えたんですね。

  • 眞白は実父との関係が悪く、そのせいで自分の『家族』というものをあっさりと切り捨てるつもりでいる反面、他人の『家族関係』をとても大切に考えています。

    円香の母子喧嘩の話のときも、眞白は仲直りを勧めましたしね(※【体育祭 編】参照)

  • さて、以前、光星は碧芭に「瀬名を攫いに行く」と公言しているので(※【このバトンを君に 編】参照)、それをしっかり貫いた感じですね。
    お話の中にも書きましたが、眞白は、自分の両親とは絶縁状態で構わないと思っているので、これから先のことは全て碧芭に承諾を得ればいいと考えています。
    ひとまず、二人の愛は不変だということで( · ∀ · )

  • このお話を書くときに久しぶりに聞きましたわ、『Baby I Love U』。
    懐かしいですねえ、結構前の曲ですからね。
    碧芭は友人の結婚披露宴でこの曲が流れたときに初めて耳にして、「いい曲だなあ♪」と思って車で時々聴くようになった感じです。

  • 勝生がちょっと切ないですけども(´;ω;`)ウゥゥ
    『この世界軸』での三角関係はまず成立しませんので…(勝生が絶対にそうならないようにするでしょうから

    ただ、『この世界軸』という表現…なんか意味深じゃありません?(ニヤリとw

    わたくしは今後、勝生のためのIF STORYを書きますぜ(๑•̀ •́)و✧はばーんっ!(大袈裟なw

  • ですが、まだ他にも眞白×光星のエピソードを書くと思いますので、この先もお付き合いいただければ嬉しく思います♡

  • エピソード話、みなさんに楽しんでもらえると嬉しいです♡


    ゆさみん

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