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僕には、6歳年上の姉がいる。
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とても明るく元気いっぱいの人で、アースカラーのワンピースを着こなすような女性らしい見た目をしているのに、少し不似合いな口調で物を言う。
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けれど、品がないわけじゃないし、姉の飾らないさっぱりとしたところは魅力の一つだと僕は思っている。
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姉はすでに結婚していて家を出ていることもあって、実家に帰省するのはお盆やお正月の長期休暇のときくらいだけど、
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-勝生、あんた大学でちゃんとやれてんの?
サボったりしてないよね? -
武藤 勝生
サボってなんかないよー。
ちゃんとやれてます。
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そんな姉が、2歳の息子を連れて珍しくうちに遊びに来ていた。
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主な理由は、明日が僕の誕生日だから。
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いつもは誕生日プレゼントを送ってくれる姉だが、今年はたまたま近くまで行く用事があるからと、プレゼントを手渡しに来てくれたのだ。
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-それ使って、勉強頑張りな。
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武藤 勝生
うん。ありがと。

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プレゼントの中身は、以前から買い替えようと思っていたお気に入りのブランドのメッセンジャーバッグ。
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今使っている鞄も悪くはないけど、ノートパソコンが入る大きさのものが欲しかったから素直に嬉しい。
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姉は、甥っ子を保育園に預けて旦那さんと共働きで生活をしているからか、
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-誕プレは旦那のカネじゃなくあたしの自腹だ、遠慮なく使いな!
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と、満面の笑顔で何とも威勢のいい発言を連ねた。
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実に姉らしいセリフ。
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僕が何かと気を遣わないように、先手を打って言ってくれたのだと思う。
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-そういえば、眞白くんは元気にしてんの?
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武藤 勝生
うん、元気にしてるよ。

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-最近もよく遊んでたりすんの?
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武藤 勝生
前ほどではないけど、ちょくちょく遊んでるかな。

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姉は、僕には眞白しか友達がいないと思い込んでるんじゃないかと疑うほど、僕の顔を見るたびに必ず一度はその名を口にする。
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姉にとっても眞白はお気に入りの存在で、
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僕が小学校の頃にいじめられていたとき、眞白が助けてくれたから余計にそう思うんだろう…と思っていたけど、
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-あの子はほんと、子どもの頃からマジでイケメンだからさー。
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-大学生になった今なんか、男に磨きがかかってすごいんじゃない?
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どうやら、それだけじゃないみたいだ。
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武藤 勝生
まあ、そうだねえ。

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-あたしがあと5歳若かったら、確実に狙ってたわ…ふふふ。
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武藤 勝生
なにバカなこと言ってんの。

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人妻がいきなり邪なことを言い出すから、苦笑交じりに窘めた。
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-眞白くん、もう彼女とかいそうだよね?
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武藤 勝生
うん。恋人いるね。

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鷹野先生は男で『彼女』ではないから、さりげなく言い換える。
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別に男性同士の恋愛を知られたとしても、発展的思考の持ち主である姉のことだから差別したりはしないだろうけど、
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こういうデリケートなことは、本人の口から言いたいときに告げる方がいい。
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-やっぱり!
あんな中身も外見もイケメンな子、誰もほっとかないよなー! -
武藤 勝生
だね。

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-めっちゃモテそう。
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武藤 勝生
本人にあまり自覚はないみたいだけど、かなりモテるよ。

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-恋人がいても、眞白くんにこっそり片想いとかしてる子いそうだなー。
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武藤 勝生
…、

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-…あ。そうだ、勝生。
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-巨峰も買ってきてあるから食べな。あんた好きでしょ?
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武藤 勝生
ああ…うん、ありがと。あとで食べるよ。

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-巨峰で思い出したっ、
そういやこの間、保育園でさ―― -
昔からぽんぽんと話題を変える姉は、物事にしつこく執着しない単純メカニズムな人だから、細かいことをいちいち突っ込んでこないのが救いだ。
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武藤 勝生
(…あなたの目の前にいますよ、眞白に絶賛片想い中の男が)

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甥っ子の保育園での出来事を嬉々として話し始める姉に笑顔で相槌を打ちながら、心の中でこっそりと公言した。
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︙
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仕事帰りにうちまで迎えに来た旦那さんも合流して、皆で夕飯を一緒に食べた後、姉たちは家族仲良く旦那さんの車で帰宅した。
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その後すぐに強烈な睡魔に襲われた僕はリビングのソファーで脱力し、そのまましばらくうたた寝をしてしまっていた。
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武藤 勝生
ああ…さすがにちょっと疲れた…。

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ふと目が覚めて起き上がり、ぼんやりとひとりごちる。
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姉と甥っ子に久しぶりに会えたのは嬉しいけど、甥っ子の遊び相手になるのは想像を絶するくらいハードで。
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『今ちょうど魔の2歳児なんだよ』と肩をすくめて苦笑した姉の言う通り、甥っ子はまるで怪獣のように成長していた。
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武藤 勝生
(赤ちゃんの頃は寝てばっかりで、早く大きくならないかなって思ってたけど…、)

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大きくなったらなったで、ものすごく大変。
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甥っ子はとても可愛いけど、『もうしばらくは会わなくてもいいかな』…って思えるくらいだ。
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武藤 勝生
…ふぁあぁ…、

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武藤 勝生
サッサと明日の講義の用意して、お風呂入って寝ようっと。

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軽く伸びをしながらあくびをした後、台風一過のようなリビングからいったん自室に戻り、
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姉からもらったプレゼントのメッセンジャーバッグを明日からの通学時に使おうと中身を入れ替えていると、
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――…RRRRRRR!
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珍しい時間帯に、スマホの着信音が鳴り響いた。
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