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少年は、いつもは別の場所で過ごしていることがほとんどで、この近辺で長時間遊ぶのは夏場だけだと話した。
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みんなと過ごしているその場所はエアコンがなく暑いから、涼しいところにたむろするという些細な理由で。
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もしも今が夏でなければ…、
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この少年が助けに入ってくれなければ、俺は本当に命を落としていただろう。
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そうなってしまってもいいとは思っていたが、命拾いしたことで『生きる』ことへの執着を取り戻せた気がした。
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**もうこんな場所に迷い込むなよ?
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鷹野 光星
「迷い込む」というか、無理やり連れ込まれたんだが…。

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苦笑交じりに告げると、思い返すように少年はぼんやりと言う。
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**…あ。
最初は駅前の店かなんかで酒飲んでたんだっけ? -
鷹野 光星
…ああ。

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**ま、気をつけな。
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**俺らみたいなのが普通に見えるくらい、危ねーヤツばっかだから、この辺りは。
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鷹野 光星
そうだな…気を付けるよ。

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**…ん。
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鷹野 光星
……少し、聞いてもいいかな?

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**…、なに。
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鷹野 光星
キミはまだ、おそらく中学生だよね…?

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**……
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鷹野 光星
2年生…それとも、3年生かな?

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**職質お断り。
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鷹野 光星
やっぱり聞かれたくないよな…すまない。

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**……中3。
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鷹野 光星
…え?

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**こう見えて俺、来年の春に高校受験控えてんだよ。
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**だから、この8末で…
明日で遊ぶのもいったん終わり。 -
鷹野 光星
…そうなのか。

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**小学校からの親友がうるせーんだよ。一緒の高校受けようって。
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『親友』という言葉を口にしたとき、ほんのわずかだが、黒いマスクの下の少年の顔が嬉しそうに綻んだ気がした。
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きっとこの少年にとって、その親友はとても大切な存在なのだろう。
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鷹野 光星
どこの学校を受けるつもりなんだ?

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**それ以上は個人情報。
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鷹野 光星
あ…ごめん、そうだよな。

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**…ん。
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鷹野 光星
受かるように願ってるよ。頑張って。

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**どーも。
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**…それより、怪我…、痛むか?
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鷹野 光星
はは…、まあね…。

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鷹野 光星
こんなに殴られたのって生まれて初めてだよ。

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**…あんたを殴った男、タッパもあんたより低いし痩せてるし、
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**見た感じ格闘技やってそうじゃなかったし、
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**下からの打撃は、上からくる打撃よりはまだほんの少しマシだとは思うけど…、
やっぱ結構やられてんな。 -
鷹野 光星
うん…。
顔も、体中がもう痛いね。
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**顔とか、明日になったらもっと腫れる。
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鷹野 光星
え…そうなんだ?

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**家に帰ったら、すぐに冷やした方がいい。
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鷹野 光星
そうだね…そうするよ。

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鷹野 光星
(よかった、今日が金曜日の夜で…)

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土日のこの休日の間に、できるだけ怪我を回復させなければ。
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すでに学校では夏休みも終わってとうに授業が始まっているし、欠勤するわけにもいかない。
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**…ここからなら、大丈夫か。
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表通りに差し掛かり、裏通りとは真逆の平和的な街灯の明るさを背に、少年はこちらに向き直って立ち止まった。
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鷹野 光星
ありがとう。

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鷹野 光星
キミのおかげで助かったよ…。

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鷹野 光星
何かお礼をしたいところだけど――

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**いらねー。邪魔だから早く帰れ。
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**あいつら待たせてるし、これ以上あんたといると遊ぶ時間が減る。
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『あいつら』とはもちろん、先ほど話に出ていた、この少年にとって愛すべき仲間たちのことを言っているのだろう。
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鷹野 光星
ははっ、そうだよな…。

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鷹野 光星
本当にありがとう。

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**いいって。たいしたことしてねーし。
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無骨にそうに切り返しながらも、目尻がふわりと下がる少年のどこか優しい破顔。
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鷹野 光星
…、

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それを目にした瞬間、俺の中でピンと張り詰めていた糸のようなものが、プツリと切れた気がした。
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