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ハンバーグを静かに咀嚼し綺麗に平らげた碧芭は、手元のナフキンで口元を拭った後、
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少しばかり神妙な顔つきでこちらに視線を移した。
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瀬名 碧芭実はね、もう一つ…、
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瀬名 碧芭眞白に話しておきたいことがあって。
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瀬名 眞白
「話しておきたいこと」?

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瀬名 碧芭…うん。
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瀬名 眞白
なんだよ?

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瀬名 碧芭大丈夫だから、落ち着いて聞いてね?
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瀬名 眞白
…ああ。

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瀬名 眞白
(そんな風に前置きされる話って、ロクな内容じゃねーことが多い…)

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瀬名 眞白
(なんか嫌な予感…)

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瀬名 碧芭率直に言うとね…、
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瀬名 碧芭この間、眞白に縁談の話が出たらしいんだよ。
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瀬名 眞白
…は?!縁談?!

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瀬名 碧芭…うん。
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瀬名 眞白
ちょっと待て、縁談って…結婚って意味だよな?

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瀬名 碧芭そうだよ。眞白の結婚話が出たんだ。
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瀬名 碧芭危うく当人同士の顔合わせの日取りを決めようと話しを続けるからさ、ものすごく焦ったよ。
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瀬名 眞白
なにそれ…、

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とてつもない変化球を脳天に喰らったような、そんな衝撃。
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瀬名 眞白
そんな話…、
どうせ父さんが持ち出したんだろ?!
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瀬名 碧芭…うん、まあ…、そんな感じだね。
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瀬名 眞白
なに勝手に人のこと決めようとしてんだよ…!

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椅子の背もたれから離れて前のめりに、碧芭に向けてつい声を荒げる。
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碧芭が進めようとした話ではないし、怒ったところで仕方がないのは理解していても、どうしようもなくて。
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瀬名 眞白
…ふざけんな。

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思い切りテーブルを叩きつけたくなる衝動をかろうじて抑えて、強く握り拳を作る。
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そんな俺とは裏腹に、碧芭は静かな所作で自身の口元に人さし指を当てて見せ、落ち着くよう促した。
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瀬名 碧芭ごめんごめん、
いきなり話したからびっくりしたと思うけど、 -
瀬名 碧芭今は心配しなくても大丈夫だから。
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瀬名 眞白
大丈夫だって言われようが、怖えーわ、いきなりそんな話…、

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瀬名 碧芭僕も、一昨日帰ってきてからすぐに父さんとその話になって憤慨したよ。
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瀬名 碧芭父さんが顧問弁護士をやってる企業の代表の娘さんが今19歳でさ、
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瀬名 碧芭眞白もまだ高校生だし、未来を見据えた縁談っていうか…、
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瀬名 碧芭つまりは、婚約みたいな感じの話で盛り上がったみたいで。
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瀬名 眞白
勝手に盛り上がってんじゃねーよっ、

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瀬名 眞白
ヤバイだろ…いらねーよ、そんな話っ。

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瀬名 碧芭ほんとにヤバイよね。
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瀬名 碧芭僕もさすがに「なに考えてるんだ!」って怒鳴ってやったよ。
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瀬名 眞白
…、

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これは俺にとって、『少し話しておきたいこと』というカテゴリには簡単に収まりきらない話だ。
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逸脱し過ぎていて、頭の中がいろんな感情でごちゃまぜになる。
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特に、俺の嫌いな父親が決めようとしたことだから、余計に。
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瀬名 碧芭でも、さっきも言ったように、今は心配ないから。
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瀬名 碧芭僕がいつになく声を荒げて反論したから、さすがに父さんも黙っちゃって。
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瀬名 碧芭それに、縁談の話はお酒の席で出ただけで、たいした効力もないから安心して。
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瀬名 眞白
…ほんとか?
マジで大丈夫なんだよな?
決まったわけじゃねーんだな?
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瀬名 碧芭うん。
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瀬名 眞白
…マジで焦るわ。

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瀬名 眞白
絶対に嫌だからな?縁談とか。

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瀬名 碧芭もちろん分かってるよ。
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瀬名 碧芭でもね、眞白。
前置きが長くなっちゃったけど、実はここから話すことが大事。 -
瀬名 眞白
…なんだよ、もういいって。

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今までのが『前置き』って…もう十分本題だろうが。
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一瞬で襲った疲弊にうなだれてしまいながら、ひとまず碧芭の話に耳を傾ける。
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瀬名 碧芭今回は話が出たというだけでなにもまとまってないけど、
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瀬名 碧芭今後、こういった話がまた出ないとも限らない。
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瀬名 碧芭父さんのことだ、事務所の発展を見越してこういった話を進めていく可能性も否めない。
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瀬名 眞白
…―――

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瀬名 碧芭特に眞白は…、弁護士にはならないだろうから、父さんも――
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瀬名 眞白
ハッ!弁護士にならねーからってなんだよ、

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瀬名 眞白
俺が『異端児』で『裏切り者』だから?!

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瀬名 碧芭眞白、
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瀬名 眞白
父さんにとっての俺が使い物にならねーなら、事務所デカくするために…、

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瀬名 眞白
自分のために、せめて俺を売り飛ばすってことか!

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吐き捨てるように、煮え滾るような感情をぶちまける。
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可能なら、目の前のテーブルを蹴り飛ばしたいくらいだ。
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