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瀬名 眞白買って来た。
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瀬名 碧芭
ああ、おかえり。ありがとね。

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瀬名 眞白おう。
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瀬名 碧芭
……、

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眞白が腕の中に抱えているいるのは、3本の飲み物。
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一つは、鷹野先生が飲む予定のミルクティ。
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一つは、眞白が飲むであろう炭酸飲料。
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あとの一つは…なんだあれ、あまり見たことがない飲み物?
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瀬名 眞白鷹野、はい、コレ。
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鷹野 光星ありがとう。
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瀬名 眞白で…、碧芭は、コレ。
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瀬名 碧芭
…え?僕に?

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瀬名 碧芭
…、なにこれ…?

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受け取ったペットボトルはほっこりと温かくて、くるくると回してラベルを正面に見ると『白湯』と書いてあった。
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瀬名 眞白ナースステーションで聞いたんだよ、
「虫垂炎で散らしたばかりだけど、何か飲んでもいいのか」って。 -
瀬名 眞白そしたら、「飲んでも大丈夫だけど、大事を取って白湯とかにするといいですよ」って言われてさ。
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瀬名 碧芭
―――…

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瀬名 眞白碧芭、何もいらねーっつってたけど、一応。
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瀬名 眞白この病室、わりと暖房聞いてるし…喉乾いたら困るだろ?
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瀬名 眞白問題ないとはいえ、まだ回復途中の病人だからな。
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瀬名 眞白碧芭がいちいち買いに行かなくて済むように、売店にあったから買ってきた。
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周囲から見れば、その眞白の気遣いはつまらないくらい些細なことかもしれないけど。
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瀬名 碧芭
もう、そんな…、

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僕はもう、なんだか胸がいっぱいで。
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瀬名 眞白碧芭へ、俺からの押し売りっ。
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『してやったり!』とでも言うかのように、眞白は太陽みたいな笑顔でニッと白い歯を見せた。
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瀬名 碧芭
…――っ、

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瀬名 碧芭
なにさ、もう…、

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目の前の白湯のペットボトルが、ぶわっと歪んで見える。
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胸が焦げちゃうのかと思うほど熱くなって、ゆるゆると涙が込み上げて。
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眞白には内緒にしている病巣のことがあるから、僕も少し気弱になってしまっている部分があるのかもしれない。
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けれど、そうだとしても、ここまで琴線に触れることはないだろう。
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本当に、僕にとって最高すぎる弟。
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瀬名 眞白えっ…どうした、碧芭!
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瀬名 眞白もしかして、また腹がいたいのか?!
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瀬名 碧芭
違うっ…、全然痛くない…、

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眞白のさりげない優しさが詰まった温かなペットボトルを、ギュッと大切に握りしめる。
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『感極まる』とは、ほんのわずかなことから生み出されるものなんだ。
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瀬名 碧芭
ッ、…鷹野先生、分かります…?

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瀬名 碧芭
眞白のねっ、こういうところなんですよっ…、

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瀬名 碧芭
眞白のこういうところがもう、僕はたまらないんですよっ…、

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鷹野 光星そうですね…、本当に。
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鷹野 光星とても分かりますよ。
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にこにこと優しく微笑む鷹野先生は、言葉にならない僕のはち切れんばかりの弟愛を深く理解してくれているようだ。
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瀬名 眞白…二人してなによ?
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鷹野 光星なんでもないよ。
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瀬名 眞白なんか二人とも…俺が飲み物買いに行ってる間に、仲良くなってね?
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瀬名 碧芭
うーん…、それはあるかもねっ。

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瀬名 眞白…、
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瀬名 碧芭
あはっ、なーに心配してるの?

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瀬名 眞白べっ、別にっ。
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瀬名 碧芭
鷹野先生と眞白の学校生活の話をしてただけだよ、

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瀬名 碧芭
喧嘩するよりいいでしょ?

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ササっと涙を拭って、ウインクするみたいに目尻を細めた。
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瀬名 眞白…ま、まあそうだけど。
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瀬名 眞白それより碧芭、ほんとに腹は大丈夫なのか?
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瀬名 碧芭
うん。大丈夫だよっ、

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瀬名 碧芭
可愛すぎる眞白っ。

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世界一、いや、宇宙一優しくて可愛い弟の幸せをこれまで以上に願いながら。
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瀬名 碧芭
(眞白のこと、頼みましたよ…鷹野先生)

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僕は、まだ少し涙の軌跡が残る瞳をそのままに、眞白に向けて柔らかに微笑みかけた。
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【このバトンを君に 編】END
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