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鷹野先生は、僕の静かながらもチクチクとした針万本のような棘に気付いたのか、丁寧にこちらに向き直る。
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その表情は、想像していた以上に誠実な色を滲ませていた。
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鷹野 光星それは…、
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鷹野 光星それには、深い意味があるんです。
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瀬名 碧芭
…「深い意味」?

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鷹野 光星俺たちの想いが通じ合ったのは、瀬名が勇気を出してくれたから…、
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鷹野 光星彼の配慮のおかげでした。
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鷹野 光星しかも、お互いの今の立場を…特に俺の立ち位置を考えた瀬名が、言葉に出さなくても通じ合えるように。
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鷹野 光星だからこそ、その時が来たら、誰よりも最初に瀬名に伝えたいんです…その言葉を。
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鷹野 光星軽々しく、瀬名以外の他の人に表現したくない。
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瀬名 碧芭
…、

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鷹野 光星すみません、融通が利かず、意地を張る子どものようで。
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鷹野 光星ですが…、
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そう言ったっきり、鷹野先生は声を区切る。
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その姿は、遮断するように『区切る』というわけじゃなく、溢れ出そうになる想いを『堰き止めている』…そんな風に感じ取れた。
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瀬名 碧芭
(なるほど…、)

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言葉にしないのは、眞白と鷹野先生が互いを想うからこそ芽生えた自然な成り行きだということ。
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瀬名 碧芭
…もういいですよ。

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瀬名 碧芭
鷹野先生の気持ち、よく分かりました。

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瀬名 碧芭
とてもかっこいい人を、眞白は選んだものです。

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鷹野 光星っ…、いえ、あの、偉そうに言ってしまって、すみません…っ。
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瀬名 碧芭
いえいえ。

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瀬名 碧芭
謝る必要なんてないですよ。

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瀬名 碧芭
眞白へのあなたの想い、しっかり伝わりました。

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鷹野 光星…、ありがとうございます。
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瀬名 碧芭
あの子は、兄貴の僕が言うのもなんですけど、本当にいい男です。

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瀬名 碧芭
あんな子、世界中のどこを探しても、なかなかいないですよ?

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鷹野 光星その通りだと思います。
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瀬名 碧芭
でしょ?

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瀬名 碧芭
…お分かりかもしれませんが、僕はとってもブラコンで、眞白を弄んで貶めるヤツは絶対に許しません。

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瀬名 碧芭
自分が死んだとしても化けて出て、呪って地獄に突き落としてやる…いつもそんな気持ちでいます。

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瀬名 碧芭
だから、鷹野先生、

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瀬名 碧芭
話の中で、もしもあなたが眞白への気持ちを適当にはぐらかしたり、少しでも僕から目を逸らすような落ち着きのない仕草をしたら、

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瀬名 碧芭
ベッドから離れて、『はっきりしろ!』と、首を絞めてやろうと思っていました。

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クスクスッと零れる笑みをそのままに続ける。
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瀬名 碧芭
でも、その必要は全くなさそう。

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鷹野 光星…、
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瀬名 碧芭
あなたが眞白のそばにいるから、これから先になにがあっても、絶対に大丈夫だと思えました。

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ふわふわとした安堵感が僕を包み込む。
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これからもずっと眞白は孤独じゃないという、強い安心感。
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鷹野 光星…碧芭さん。
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瀬名 碧芭
なんですか?

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鷹野 光星俺は、あの子のすべてを…それこそ自分の命よりも大切に想っています。
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鷹野 光星俺が絶対に瀬名のことを守ります。
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瀬名 碧芭
……なんだか、

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瀬名 碧芭
『お嫁に下さい』みたいな挨拶をされてる気分。

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鷹野 光星いずれ、そうなると思います。
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鷹野 光星俺が必ず、瀬名を攫いに行きますので。
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瀬名 碧芭
おおっ。
それは心待ちにしてますよ、鷹野先生。
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瀬名 碧芭
…そして、

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瀬名 碧芭
万が一僕になにかあったら、眞白のことをどうかよろしくお願いします。

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深く頭を下げて、僕の随一の願いを告げる。
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心優しいであろう鷹野先生は、センチメンタルなこの構図を前に少し返答に困るのではないか…そう思ったけど。
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鷹野 光星もちろんです。
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鷹野 光星ですが、あなたも元気でいてください。瀬名のために。
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瀬名 碧芭
…鷹野先生…

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鷹野 光星瀬名は、碧芭さんに対してぶっきら棒な態度を見せることが多いようですが、
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鷹野 光星兄であるあなたのことを心から大切に想っています。
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鷹野 光星今日、あの子のそばにいて、それがひしひしと伝わってきました。
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瀬名 碧芭
―――…

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鷹野 光星もしもあなたが病魔に侵されていたとして、挫折し、頑張ることを諦めようとしたなら、
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鷹野 光星俺が全力であなたを『指導』しますからね?
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瀬名 碧芭
…おっと、厳しいのは嫌だなあ。

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鷹野 光星すべては、瀬名のためですから。
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冗談めいているようで、その瞳の奥はブレていない。
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鷹野 光星10日後の検査結果、俺は大丈夫だと強く信じています。
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瀬名 碧芭
…それは頼もしい。

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瀬名 碧芭
ありがとうございます。

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…眞白。強くて優しいのは、おまえだけじゃない。
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きっとこの鷹野先生も、眞白と同様、強さと優しさを熱く秘めた人だね。
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瀬名 碧芭
(よかった…ほんとに)

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ホッと溜め息をついてすぐ、飲み物を抱えた眞白が病室のドアを開いた。
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