7-7 平たく言えば、兄として眞白を守ることで。:碧芭視点

  • 瀬名 碧芭

    あの、鷹野先生、
    眞白が『医者を目指す』と話したとき…あの子は無理をしていませんでしたか?

  • 鷹野 光星

    …「無理」とは?

  • 瀬名 碧芭

    医者を目指すこと…、
    本当は嫌なんじゃないかなって思って…。

  • 鷹野 光星

    …いえ。

  • 鷹野 光星

    瀬名の想いに嘘はなく、「医者になりたいからなる」…そう言っていました。

  • 瀬名 碧芭

    …、

  • 鷹野 光星

    瀬名が自分で導き出し、打ち立てた目標です。

  • 鷹野 光星

    俺は、可能な限り近くで瀬名のことを見ていますが、

  • 鷹野 光星

    様々な選択肢を生半可な気持ちで選び取るような子じゃありません。

  • 瀬名 碧芭

    ―――…

  • 鷹野 光星

    きっと、瀬名の中に医者になりたいという強い意志が芽生えたから、そこに進んでいきたいんだと思います。

  • 瀬名 碧芭

    ……分かりました、ありがとう。

  • 瀬名 碧芭

    鷹野先生がそう言うなら、間違いないでしょうね。

  • 眞白が選んだこの人が言う言葉なら。

  • 眞白のことを真摯に見つめてくれているこの人なら。

  • 鷹野先生の紡いだ至誠が、僕の胸に染み渡る。

  • 瀬名 碧芭

    ……

  • …だからこそ。

  • 眞白が医者を目指すこと――そんなとても嬉しい目標を聞いた後で、

  • 僕はいよいよ、実は話すことを躊躇っているある事柄を切り出さなければならない。

  • でも、この人なら。

  • 鷹野先生になら、たとえなにがあっても、眞白のすべてを任せることができる。

  • 素直に、そう感じた。

  • 瀬名 碧芭

    鷹野先生。

  • 鷹野 光星

    …はい、

  • 瀬名 碧芭

    ……

  • 僕は小さく深呼吸してベッドの上で前に向き直ると、

  • まるで青空を見上げるように病室の白い天井に視線を馳せて、ゆっくりと言葉を連ねた。

  • 瀬名 碧芭

    実は僕、少しだけ眞白に嘘をついてるんです。

  • 鷹野 光星

    嘘…ですか?

  • 瀬名 碧芭

    …はい。

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 碧芭

    今回、虫垂炎で運ばれたのは本当なんですけど…、

  • 瀬名 碧芭

    実は、検査でちょっと気になる病巣が見つかっちゃって。

  • 瀬名 碧芭

    精密検査を明後日に行う予定です。

  • 鷹野 光星

    …えっ?!

  • 瀬名 碧芭

    だから、眞白に飲み物を買いに行かせたのもあるんです。

  • 瀬名 碧芭

    もちろん、鷹野先生に飲んでもらいたいっていうのもありますよ?

  • 瀬名 碧芭

    でも、眞白がいたら話せないから。

  • 瀬名 碧芭

    先生だけに、このことを知っておいてもらいたくて。

  • 鷹野 光星

    …、俺だけに、ですか…?

  • 瀬名 碧芭

    ええ。

  • 瀬名 碧芭

    唐突な話で驚かせてしまってすみません。

  • 鷹野 光星

    いえ…、

  • 瀬名 碧芭

    ……

  • それに、こっそり見極めたかったんですよ、眞白が選んだ人があなたなのかを。

  • あなたに眞白を任せられるのかどうかを。

  • 見当違いだったら、こんなことを打ち明けずに、適当に世間話を流していただけだったけど。

  • 瀬名 碧芭

    (僕の洞察力もなかなかなものだよね)

  • 瀬名 碧芭

    検査の結果は、10日後くらいに出るそうです。ちょうど、クリスマス辺りかな…。

  • 瀬名 碧芭

    最近、少し体調が優れない日が続いていて、忙しさのせいにしてたんですけど…、
    一応覚悟はしてるんです。

  • 鷹野 光星

    そんな…、

  • 瀬名 碧芭

    僕には壮大な目標があって。

  • 瀬名 碧芭

    平たく言えば、兄として眞白守ることで。

  • 瀬名 碧芭

    もしも僕になにかあったら…それができなくなるのが、とても辛いところです。

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 碧芭

    一つ、核心を突いてもいいですか?

  • 鷹野 光星

    …はい、

  • 瀬名 碧芭

    あなたは……、

  • 瀬名 碧芭

    眞白の好きな人、ですよね?

  • 瀬名 碧芭

    そしてあなたも、眞白のことを…?

  • 視線を鷹野先生に戻した僕は、まっすぐ射抜きながら探るように彼を見据えた。

  • 鷹野 光星

    ―――…はい。

  • 鷹野 光星

    瀬名は…、
    俺にとって誰よりも……とても大切な子です。

  • 鷹野先生が紡いだ言葉には、予想通り、眞白への想いがきちんと込められていると感じた。

  • …でも。

  • 瀬名 碧芭

    …ねえ。少し[#ruby=間_ま#]が空いたけど、

  • 瀬名 碧芭

    それってどうしてですか?

  • 鷹野 光星

    えっ、「間」…ですか?

  • 瀬名 碧芭

    「間、空いたかな?」…みたいな顔してるけど。

  • 鷹野 光星

    い、いえ、その…、

  • 瀬名 碧芭

    『はい』って返事をしたときはまあ、予想外のことを聞かれて驚いたでしょうし、間が空いても良しとして。

  • 瀬名 碧芭

    問題はその後。

  • 瀬名 碧芭

    『好きです』とか『愛してます』とか、はっきり言わないんだなと思って。

  • ああ、僕って本当に、少しでも納得がいかない疑問が浮上したら、真っ向からその場の空気をぶち壊してしまうタイプ。

  • 僕が見極めを間違えるはずはないんだけど、回りくどいような鷹野先生の物言いが、少し癪に触ってしまって。

  • 万が一にも、恋愛経験の乏しい純粋な眞白が大人の男に弄ばれそうになってるのだとしたら大変だから、

  • 瀬名 碧芭

    どうしてなのか…その辺のところ、説明してもらえます?

  • 『僕が早々に二人の仲を引き裂いてあげないと。眞白の心の傷が深くなる前に』…そう思った。

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