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瀬名 碧芭
(鷹野先生の飲み物を、眞白がサラッと選ぶなんて…)

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なんて分かりやすい弟なんだろう…と、内心で笑みが零れる。
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そのままさらけ出していいなら、顔の筋肉が弛緩して緩みっぱなしになりそうだ。
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健気で実直な眞白が可愛いすぎて。
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瀬名 碧芭
……

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担任の先生が女性なのか美人なのか、会ってみたいだとか…ほんとはそんなこと、どうでもいい。
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それは眞白の本命を知るための質疑応答にすぎなかったから。
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鷹野 光星……
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瀬名 碧芭
……

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この人が、眞白の…。
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そんなことを推察しながら、鷹野先生に再び視線を巡らせた。
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背が高く姿勢も良くて、スリムな体型、整った顔立ち。
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清潔感も申し分なく、職務中のコーデセンスだっていい。
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瀬名 碧芭
(学校の先生のレベル、僕が高校生の頃より数段高くなってるよね?)

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見た目で選んだのか…いや、眞白はそんな軽い男じゃない。
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きっとこの『鷹野 光星』という人物が、眞白の心の目に適った人なんだろう。
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瀬名 碧芭
……

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病室内の静寂を深めているのは、僕。
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頭の中でいろんな思考が巡るから、つい押し黙ったまま沈黙を広げてしまう。
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…でも、そろそろ声を紡ごうか。
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瀬名 碧芭
…鷹野先生。
学校での眞白はどんな生徒ですか?
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鷹野 光星瀬名は、とてもいい子です。友達想いで優しくて、心が強くて。
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鷹野 光星関わる人に対してとても良く気が付く…さりげなく相手の心に寄り添える、そんな子です。
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瀬名 碧芭
(わ…溢れんばかりに褒めてくれるじゃない)

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この人も、ある意味分かりやすい。
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鷹野 光星クラスのみんなからも慕われていて、順調に学校生活を送っているように思います。
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瀬名 碧芭
それは良かった、安心しました。

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品よく頷きながらも、
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『そりゃそうですよ、眞白だもん。』と心の中で豪語する。
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鷹野 光星勉強もとてもよくできて…、
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鷹野 光星そういえば、瀬名から進路のことは聞いていますか?
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瀬名 碧芭
…「進路のこと」?

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瀬名 碧芭
ううん、なにも聞いてないですけど。

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鷹野 光星実は今日、瀬名は担任の黒木と進路相談を行っていたんですが、
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鷹野 光星俺もそれより少し前に、瀬名から進路の話を聞いていまして…、
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鷹野 光星大学は、医学部に進学したい…と。
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瀬名 碧芭
えっ――…医学部?!

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鷹野 光星…、ええ、そうです。
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僕が素っ頓狂な声を上げたから、鷹野先生は少し驚いたように目を丸くした。
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瀬名 碧芭
ごめんなさい、気にしないで。

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瀬名 碧芭
ちょっとびっくりしてしまって。

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鷹野 光星…いえ。
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鷹野 光星詳しい理由は聞いていませんが、
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鷹野 光星瀬名は『医者を目指す』と…、『医者になりたいんだ』と話していました。
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瀬名 碧芭
……ほんとに、眞白がそんなことを…?

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鷹野 光星はい、本当です。
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虚偽を告げるわけがないのに、つい聞き返してしまった僕の動揺を少し不可思議に思った様子の鷹野先生だったが、穏健な物腰と真摯な眼差しで静かに頷いた。
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瀬名 碧芭
(まさか眞白が…、医者になりたいだなんて…)

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僕にとっては、まるで青天の霹靂。
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眞白が医者を目指す。あの子がこれまで考えたこともないはずだった進路。
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きっと、それは…
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瀬名 碧芭
僕のため、ですね…。

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鷹野 光星え?
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瀬名 碧芭
きっと、僕のためです…あの子は、そういう子なんです。

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眞白はきっと、僕が抱いていた夢を自分が叶えようと医者の道を選ぼうとしている。
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弁護士になることを決めたときから、僕がすっぱり諦めた医者への道。
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でも、その諦めた夢を愛する弟が紡いでくれるなんて、僕にとってはこの上ない喜び。
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眞白は小さい頃から有言実行の男だから、必ずそれを成し遂げるだろう。
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優秀なあの子のことだ、たとえ紆余曲折することがあっても、必ず。
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瀬名 碧芭
…、

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でも……本当にそれでいいのだろうかと、少し心配になった。
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