5-3 『いろいろ』と…卒業までの我慢だ。

  • 瀬名 眞白

    …っ、なに?!

  • 鷹野 光星

    俺はもう、とっくに壊れてるかもしれない。

  • 瀬名 眞白

    えっ、…!

  • 艶めいた声を耳にしてすぐ、グイッと引っ張られて必然的に鷹野の胸元になだれ込んだ。

  • 瀬名 眞白

    !!

  • 鷹野 光星

    んー…

  • 鷹野 光星

    瀬名、温かい…。

  • 瀬名 眞白

    …だっ、誰か来たらマズイ――

  • 鷹野 光星

    大丈夫。今は誰も来ない。

  • 瀬名 眞白

    …っ、

  • 少し掠れた声で囁いた鷹野は、さらに強く俺の体をギュッと抱き込んだ。

  • スリムなはずの鷹野の肢体は想像以上に男らしくて、そこから漂う良い香りとシャツ越しに伝わる体温に脳内がクラクラしてくる。

  • 鷹野 光星

    瀬名はとてもかっこいいけど…やっぱり可愛いな…。

  • 瀬名 眞白

    …そ、そんなことねー…、

  • 鷹野 光星

    一生懸命に我慢している瀬名を見ていたら、

  • 鷹野 光星

    どうしても抱きしめたくなった。

  • 瀬名 眞白

    …、俺が鷹野のこと抱きしめたいって思ってたの…バレてた?

  • 鷹野 光星

    うん…。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • こんなの、もう観念するしかない。

  • 好きな人に抱きしめられて、その腕の中から逃げられるヤツなんてきっといない。

  • 心地よさに身を委ねると、鷹野は俺の髪に唇を寄せた。

  • 鷹野 光星

    瀬名…、今日も楽しい一日だった?

  • 瀬名 眞白

    え…、うん、まあ…。

  • 鷹野 光星

    クラスの誰かにイジメられたりとかしてないか?

  • 瀬名 眞白

    してねーよ、そんなの。

  • 瀬名 眞白

    うちのクラスにそんな悪いヤツいねー。

  • 瀬名 眞白

    鷹野こそ、他の先生たちと仲良くできてんのか?

  • 鷹野 光星

    問題なく過ごせてる。

  • 瀬名 眞白

    ん。
    …他になにか変わったことねーか?

  • 鷹野 光星

    …胃が、いつもより弱ってる。

  • 瀬名 眞白

    それはグミの食いすぎっ。

  • じゃれ合うように二人でクスクス笑い合う。

  • 鷹野 光星

    …んー…

  • 鷹野 光星

    ずっとこうしていたいけど…、

  • 鷹野 光星

    そろそろ普段の俺たちに戻らないと。

  • 瀬名 眞白

    …そうだな。

  • とても名残惜しいけど、ほんのわずかでも触れ合うことができて満足だ。

  • そんな風に思いながら素直に頷いて身を逸らしたのに、鷹野は腕を緩めない。

  • 瀬名 眞白

    …、鷹野?

  • 鷹野 光星

    離したくないな…。

  • 瀬名 眞白

    …――

  • 俺だってほんとは、もっとずっと引っ付いていたい。

  • けど、

  • 瀬名 眞白

    『いろいろ』と…卒業までの我慢だ。

  • 自分のことも律するように声を紡ぐ。

  • 卒業するまでは、学校ではもちろん、プライベートでも『教師と生徒』の関係をできるだけ崩さないように。

  • 鷹野 光星

    …そうだな。

  • 鷹野 光星

    でも、時々はこうやって瀬名を抱きしめて充電したい。

  • 離れようとした俺の体をもう一度引き寄せた鷹野は、耳元に唇を寄せて囁いた。

  • 瀬名 眞白

    (わ、マジでヤバイ…)

  • 鷹野 光星

    俺、卒業までもつかな…、

  • 鷹野 光星

    …『いろいろ』と。

  • 瀬名 眞白

    (……、ん?)

  • 呟くように、それでいてどこか意味深に告げた鷹野の『いろいろ』という言葉に、ハタと思考を巡らせる。

  • 瀬名 眞白

    (…なんか違う、)

  • 瀬名 眞白

    (鷹野言う『いろいろ』って、俺が思ってる『いろいろ』とはまたちょっと違う気が…、)

  • 『抱きしめる』『手を繋ぐ』『キスをする』…だけじゃなくて?

  • 大人の鷹野が示す『いろいろ』と、まだガキの俺が示す『いろいろ』の違いは…?

  • 瀬名 眞白

    …――

  • 瀬名 眞白

    (ま、待て待て、これ以上考えるな、俺)

  • この疑問府の解答が頭の中でチラチラと飛び回るから、鼓動が倍増してくる。

  • 顔が熱い。きっと赤面状態。

  • 瀬名 眞白

    …そ、そろそろ、マジで戻ろうぜ…?

  • 鷹野 光星

    …ああ、そうだな。

  • 鷹野 光星

    真っ赤な顔をした瀬名をそろそろ解放してあげないと。

  • 楽し気に言いながらゆっくり身を離した鷹野は、赤くなった俺の頬に指先で優しく触れて微笑んだ。

  • 鷹野 光星

    お子さまは、余計なことを考えずにいなさい。

  • 瀬名 眞白

    (うー…たぶん、見透かされてんな、俺)

  • 人を好きになると、心の中がジェットコースターみたいでコントロールが大変だ。

  • 今みたいに、制限された枠の中だと特に。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 鷹野 光星

    …、

  • 離れそうになる互いの指先をまた一瞬強く絡めた後、『クラスの副担任』と『その生徒』に戻る。

  • 瀬名 眞白

    …じゃ、またな。

  • 鷹野 光星

    …ああ。

  • ……もうしばらくの間、俺たちはカモフラージュを続ける。

  • でも、こっそりと、こんな風に愛を紡ぎながら。

  • 【カモフラージュな二人 編】〈ある日の一コマ〉END

  • ▲▼▲
  • お話をお読みくださり、ありがとうございます♡

    本当はこのお話、本編終了後にエピソードストーリーの一つとして書こうかなと思っていたのですが、
    【体育祭 編】以降から続くお話が、ちょっとまた『祝・両想い』から少し離れてしまうので、
    せっかくこそっと両想いになった二人の日常の一コマを間で書いておこうと思いました。

  • 本編終了後は、番外編のように甘めのエピソードを書いていきます(๑•̀ •́)و✧♡


    ゆさまる。

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