-
瀬名 碧芭…あ、そうそう。
-
瀬名 碧芭縁談話を父さんから聞いたときにね、
-
瀬名 碧芭『眞白には、すでに結婚まで決めた彼女がいるんだ!』って勢いで言っちゃったんだけどさ。
-
瀬名 眞白
…は?!マジで!?

-
瀬名 眞白
『縁談話をうまく潰してあげる』なんて言うわりには、めっちゃ単純すぎじゃん?!

-
瀬名 碧芭だって、今回はいきなりだったんだもん。
咄嗟に思い浮かんだのがそれだったんだよ。 -
瀬名 眞白
(その少しむくれた顔、開き直ってるな…)

-
瀬名 碧芭『どんな子なんだ』とか、『どこの学校なんだ』とかいろいろ聞かれたけど、
-
瀬名 碧芭『詳しくは知らないけど、確実に彼女はいるから!』って押し切ったんだよね。
-
瀬名 眞白
む、無謀すぎる…。

-
瀬名 眞白
さすがにいろいろと追求する父さんの姿が目に浮かぶわ…。

-
瀬名 碧芭でも、僕もなかなか踏ん張ったんだよ?
-
瀬名 眞白
それには感謝するけど、

-
瀬名 眞白
そんな理由でよく父さんが素直に引き下がったな。

-
瀬名 碧芭それが意外にも!
-
瀬名 碧芭ああ見えて母さんとも恋愛結婚らしいし、そういうところ、意外と物分かりがいいのかもね?
-
瀬名 眞白
どうだか…。

-
瀬名 眞白
…つーかさ、俺、彼女いねーから。一応。

-
『彼女』ではない、『彼氏』未満の人ならいるが。
-
瀬名 眞白
(『彼女』か…、)

-
瀬名 眞白
(悪いけど永遠にできねーな…)

-
瀬名 眞白
(『彼氏』なら、卒業する頃には正式に決まってんだけどなー)

-
『鷹野 光星』という最高の恋人が。
-
瀬名 碧芭ちなみに、好きな人はいるの?
-
瀬名 眞白
いる。

-
瀬名 碧芭即答!いいね!
-
瀬名 眞白
一応、両想い…かな。

-
瀬名 碧芭わあ、いいじゃない!
-
瀬名 眞白
まだ正式に付き合ってるわけじゃねーけど。

-
瀬名 碧芭…え、両想いなら、どうして付き合わないのさ?
-
瀬名 眞白
それは、まあ……、

-
瀬名 眞白
いろいろと事情があるんだよ。

-
瀬名 碧芭ふーん…?
-
瀬名 碧芭あ、そうだ、今度会わせてよ。
-
瀬名 碧芭眞白が好きになるくらいだから、きっと可愛くて優しくていい子だろうなあ。
-
瀬名 碧芭どんな感じの子?
-
瀬名 眞白
……、

-
困った、どう言えばいい?
-
そもそも、鷹野は『子ども』ではなく『大人』だし、
-
性別だって『女』ではなく『男』だ。
-
嘘をついて適当なことを言うのも嫌だし、
-
かといって、いくら身内の碧芭でも、鷹野に確認を取る前に素直に打ち明けていいものかどうか…。
-
瀬名 眞白
(……そうだ、)

-
嘘にはならない控えめな伝え方をすればいい。
-
瀬名 碧芭眞白?
-
瀬名 眞白
えっと、

-
瀬名 眞白
優しくて穏やかで、頭もよくて…、いつも優しく見守ってくれてて、

-
瀬名 眞白
なんかちょっと、天然なところもなきにしもあらずで、そこがちょっと可愛い部分っつーか…、

-
瀬名 碧芭へえ!
-
瀬名 眞白
まあでも、とにかく、すごくかっこいい。

-
瀬名 碧芭……「かっこいい」?
-
瀬名 碧芭ボーイッシュな女の子ってこと?
-
瀬名 眞白
…っ!

-
瀬名 眞白
えっと、まあ、……

-
マズイ、素直に言いすぎた。
-
瀬名 碧芭……
-
瀬名 眞白
(うー…さりげなく話題変えるかっ、)

-
瀬名 眞白
(なんか他のネタ…、)

-
瀬名 眞白
そ、そういえばさ、

-
瀬名 眞白
この間、俺バイトで――

-
---
――RRRRRR!
-
瀬名 碧芭…あ、ごめん、電話だ。ちょっと出るね。
-
瀬名 眞白
お、おう!

-
椅子から腰を上げてスマホ片手に席を外した碧芭に、ホッと胸を撫で下ろす。
-
つい鷹野のことになると熱が入って語ってしまいそうになるから、自制の特訓が必要だ。
-
瀬名 眞白
(はぁ…焦った)

-
緩く息を吐き出して、大きなシャンデリアが煌めく天井を眺めた。
-
瀬名 碧芭――ごめん、ちょっと事務所に書類を取りに戻らなきゃ。
-
瀬名 眞白
え、今から?

-
瀬名 碧芭朝一でクライアントに持って行かなきゃならなくなっちゃって。
-
瀬名 碧芭自宅から直接クライアントの会社に向かう方が近いから、先に取りに行っておこうと思って。
-
瀬名 碧芭久しぶりに、事務所に一緒に行く?
今の時間なら父さんもいないし。 -
瀬名 眞白
いい。明日学校だし、帰るわ。

-
瀬名 碧芭じゃ、叔母さんの家まで送るね。
-
瀬名 碧芭あ、叔母さんたちにNYのお土産渡しといて?車に積んであるから。
-
瀬名 碧芭眞白がいつもお世話になってるし、ほんとはちゃんと会って挨拶したいんだけど、
-
瀬名 碧芭もう夜も遅いから、また日を改めるって言っといて?
-
言いながら、現れたウエイターに会釈しつつ席で会計を済ませた碧芭は、
-
クレジットカードを財布にしまいながらチラリとこちらを一瞥した。
-
瀬名 碧芭…それと、眞白。
-
瀬名 眞白
ん?

-
瀬名 碧芭今度は、眞白に『彼女がいる』じゃなくて、
-
瀬名 碧芭『恋人がいる』って伝えるようにするね。
-
瀬名 眞白
…えっ?

-
瀬名 碧芭今は事情があって『未満』でも、近い将来には正式に『恋人』になるんでしょ?
…その好きな人と。 -
瀬名 眞白
ま、まあ…そうだな。

-
瀬名 眞白
でも、なんで…?

-
瀬名 碧芭『彼女』って伝えると、嘘になっちゃうじゃない。
-
瀬名 碧芭でも、『恋人』って伝えるのは、嘘にはならない。
-
瀬名 眞白
――…

-
瀬名 碧芭眞白が好きな人を見つけることができて、嬉しいな。
-
瀬名 眞白
……碧芭、

-
瀬名 碧芭なあに?
-
瀬名 眞白
その…、もしかして…、

-
瀬名 碧芭お兄ちゃんの目は誤魔化せませんよ?
-
瀬名 碧芭なんせ、弟愛がとっても強いですからね、
眞白のことはすぐに見抜いちゃう。 -
瀬名 眞白
―――

-
マジか…。さすがブラコンの兄貴。
-
瀬名 碧芭性別関係なく、心から好きだと思える人と出会えるなんて、とても素敵だよ。
-
瀬名 眞白
…う、うん…。

-
瀬名 碧芭ああもう…照れてる眞白、すっごく可愛いっ。
-
瀬名 碧芭写真撮っちゃおうかなー。
-
瀬名 眞白
ばっ、バカ、やめろっ。

-
瀬名 碧芭あはっ、冗談だよー。
-
瀬名 碧芭…ね、今度こっそり会わせてね?
-
瀬名 碧芭今はまだ、『恋人』未満の…『かっこいいその人』に。
-
ゆったりと小首を傾げて意味深に笑みを深めた碧芭は、たった今、俺の気持ちを知る3人目の理解者になった。
-
そして…、
-
碧芭の『会わせてね』というその要望が予想外に早く叶うことになるなんて、
-
このときはまだ、思いもしなかった。
-
【霜月の再会 編】END
タップで続きを読む