4-18 え……やばいじゃん。

  • 鷹野 光星

    俺は…、

  • 鷹野 光星

    『生徒』の瀬名を心から大切に想う。

  • 鷹野 光星

    大切すぎて、その想いを抑え込むのに苦労するほどだ。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 『生徒』という形容詞が、鷹野の想いの隠れ蓑。

  • 真摯な瞳に吸い込まれそうに鷹野を見つめて、その一言一句を受け止める。

  • 鷹野 光星

    だから、おまえに対して過保護にならないようにだとか、いろいろと気を付けてるつもりだが、

  • 鷹野 光星

    万が一にも『生徒』のおまえになにかあれば、

  • 鷹野 光星

    確実に俺は『鷹野 光星』じゃなくなる。

  • 瀬名 眞白

    …「鷹野光星じゃなくなる」?

  • 鷹野 光星

    大切な『生徒』の瀬名のためなら、俺は鬼にでも蛇にでもなるってことだ。

  • 瀬名 眞白

    え……やばいじゃん。

  • 鷹野 光星

    やばいんだよ。

  • 鷹野 光星

    それはもう、きっと冷酷非道になるから。

  • ほんの少し自虐的に目尻に皺を寄せながらも、鷹野は茶目っ気を含んだ笑みで言った。

  • それにつられて、俺も口角を上げた笑みを浮かべる。

  • 瀬名 眞白

    なんかちょっと、見てみたい気もするな…冷酷非道な鷹野。

  • 鷹野 光星

    できれば、そうはなりたくない。

  • 鷹野 光星

    俺がそうなってしまうときは、
    瀬名の身に理不尽な、良くないことが起きるときだから。

  • 瀬名 眞白

    …、なるほど。

  • 鷹野 光星

    だから瀬名には、いつも笑顔でいてもらわないと困る。

  • 瀬名 眞白

    …うん。

  • 鷹野 光星

    俺はとても心配症だから、瀬名が少しの怪我を負っただけでも気が気じゃない。

  • 瀬名 眞白

    …今みたいに?

  • 鷹野 光星

    今の怪我なんて、俺にしてみれば大怪我だよ。

  • 鷹野 光星

    本当に心臓に悪い。

  • 鷹野 光星

    おまえが怪我するくらいなら、自分が怪我した方がずっとマシだ。

  • 瀬名 眞白

    それは俺が困る。

  • 瀬名 眞白

    鷹野には、常に無傷でいてもらわねーと。

  • 鷹野 光星

    それはこっちのセリフだよ。

  • 鷹野が思わず吹き出すから、俺も一緒に丸い笑顔になった。

  • …『好きだ』と、まだ公には言えない今。

  • それでも、そのわずかな隙間をかいくぐって伝わる想いというのがある。

  • 例えば、誰がどんなに食い止めようとしても、その想いは加速を止めない。

  • むしろ、どんどん『好き』が膨らむばかりだ。

  • 鷹野 光星

    …あっ、

  • 鷹野 光星

    そういえば、早くその怪我の手当をしないと。

  • 瀬名 眞白

    あー…話に夢中ですっかり忘れてた。

  • 瀬名 眞白

    なんかもう、乾いてきてる気もするけどな、傷口。

  • 鷹野 光星

    そんなわけないだろう、

  • 鷹野 光星

    大丈夫か?痛みは?

  • 瀬名 眞白

    だからそんな痛くねーって。大丈夫。

  • 鷹野 光星

    とにかく、救護テントに行こう。

  • 瀬名 眞白

    はいはい。

  • 鷹野 光星

    ……瀬名。

  • 瀬名 眞白

    ん?

  • 鷹野 光星

    いつもおまえのことを見守ってるから。

  • 瀬名 眞白

    …っ、お、おう…。

  • いきなりの熱のこもった囁きに、途端に狼狽えてドギマギしてしまう。

  • 瀬名 眞白

    (せっかくなんとか冷静でいられたっつーのに…、)

  • 瀬名 眞白

    卑怯だぞ、鷹野。

  • 鷹野 光星

    …?なにが?

  • 瀬名 眞白

    いちいち全部、かっこよすぎんだよ。

  • 鷹野 光星

    なに言ってるんだ、それは瀬名だろう。

  • 瀬名 眞白

    なんでよ、俺、別に――

  • 鷹野 光星

    自覚がまったくないようだけど、
    おまえのように全てにおいてかっこいいヤツはそういない。

  • 瀬名 眞白

    なーに言ってんだよ。
    そんなわけねー。

  • 鷹野 光星

    そんなわけある。

  • 鷹野 光星

    …ったく、いつもヒヤヒヤするよ。

  • 瀬名 眞白

    「ヒヤヒヤ」ってなによ?

  • 鷹野 光星

    ……内緒。

  • 意味深に微笑んだ鷹野は、それ以上は誤魔化すように俺の肩をポンとやった。

  • …昨日より今日、今日より明日、ずっと固く結ばれていく絆。

  • 『グレースケール』を『有彩色』が少しずつ塗り替えていく。

  • 俺も、きっと鷹野も。それを強く実感していた。

  • 【体育祭 編】END

タップで続きを読む