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篠原 円香怪我、本当に大丈夫ですね?
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瀬名 眞白
この程度の怪我は何度も経験してるから平気だよ。

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瀬名 眞白
今は、ゴールすることだけを考えようぜ?

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気持ちを切り替えて、数十メートル先のゴールを目指し、もう一度タスキでお互いの片足同士を縛る。
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瀬名 眞白
よし!仕切り直しだ!

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篠原 円香はいっ!
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肩を組んで一歩踏み出したとき、学校中の大きな声援が俺たちを包み込んだ。
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その激励に後押しされるように、一歩一歩、ゆっくりと足を進める。
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瀬名 眞白
円香、あと少しだ!

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篠原 円香はいっ、あと少しですっ!
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瀬名 眞白
よしっ…、

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前方に視線を飛ばすと、体育祭の実行委員を務める生徒二人がゴール付近に現れたのが見える。
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他の走者たちは既に完走を終えてとっくに切られたゴールテープを、新たに水平に引っ張り直してくれたのだ。
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瀬名 眞白
せーの!

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篠原 円香っ、ゴール!!
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白いゴールテープを二人で一緒に切る。
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吹き付けた秋風に舞ったそれは、俺たちの到達点を祝うかのように緩くたなびいた。
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瀬名 眞白
やったな!円香!

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篠原 円香はいっ!やり遂げました!
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篠原 円香瀬名くんのおかげです!
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拍手喝采を浴びながらグラウンドから出た円香と、笑顔でハイタッチをする。
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瀬名 眞白
おまえが頑張った結果だよ。

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篠原 円香瀬名くんと組むことができて本当に良かった!くじ引きに感謝です!
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篠原 円香本当にありがとうございました!
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瀬名 眞白
俺こそ、楽しかったぜ?

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子どものように喜ぶ円香の頭をワシャワシャと撫でた後、浮き立つような気持ちで『その姿』を求めて周囲を見渡した。
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瀬名 眞白
(鷹野は…?)

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障害物競走のときと同じようにゴールの近くにいないか見回してみたが、その姿はない。
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瀬名 眞白
(いねーな…)

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瀬名 眞白
(鷹野、ちゃんと応援してくれてたかな…)

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鷹野 光星ちゃんと見ていたよ、瀬名。
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瀬名 眞白
うわっ…と?!

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いきなり背後から呼ばれたうえに、怪我をしていない右の二の腕を軽く引っ張られてドキリとする。
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驚いて振り向くと、眉尻を下げて小さく微笑む鷹野がいた。
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瀬名 眞白
鷹野っ、やっぱいたのか!

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鷹野 光星いないわけないだろ。
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瀬名 眞白
応援…してくれてた?

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鷹野 光星もちろん。
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鷹野 光星よく頑張ったな。
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瀬名 眞白
おう!

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鷹野 光星…けど。
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鷹野 光星篠原のために頑張ったのは偉いが、
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鷹野 光星早速その怪我の手当をしないとな。
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瀬名 眞白
あ、これ?こんなの平気。

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鷹野 光星ダメだ。ちゃんと手当てをしないと。
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鷹野 光星結構血が出てるじゃないか。
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瀬名 眞白
見た目よりもたいしたことねーって。

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鷹野 光星前にも、嫌だって言ったはずだが。
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瀬名 眞白
ん?なにを?

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鷹野 光星俺は…、
おまえが怪我をするのは嫌なんだよ。 -
瀬名 眞白
…えっ?!

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俺にしか聞こえないような小さな低音で呟いた鷹野に、鼓動がぴょこんと跳ね上がる。
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鷹野 光星篠原を庇うためだったのは分かるけど…、
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鷹野 光星心臓に悪い。
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幼い子どもを窘めるように眉間に縦皺を作りつつも、その瞳の奥は切なさで揺れている気がした。
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瀬名 眞白
(鷹野、なんで…)

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瀬名 眞白
(なんでそんな風に思うんだよ…?)

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きゅんと胸が締め付けられて、疑問符が浮いては消えることを繰り返していたが、
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鷹野 光星さ、救護テントに行こう。
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瀬名 眞白
わ…分かったよ。

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サラッと切り替わった鷹野に倣って、少しばかり戸惑いながらも素直に頷いた。
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