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鷹野 光星……
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瀬名 眞白
え…、やっぱ、マジで彼女?

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鷹野 光星…気になるのか?
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瀬名 眞白
えっ…、その、まあ、

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鷹野 光星どうして気になる?
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鷹野 光星俺のことなんていちいち探っても、学校のスクープネタにもならないぞ?
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鷹野 光星別にどうでもいいことだと思うが。
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瀬名 眞白
…、

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『俺にとっては、どうでもいいことじゃない』
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『鷹野のことが好きだから、ものすごく気になる』
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…って、言いたい。
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言いたいけど…。
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鷹野 光星…どうかしたのか?
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瀬名 眞白
…なんでもねー。

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やっぱり言えない。
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鷹野 光星……本当に、
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鷹野 光星おまえは不思議なヤツだな。
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瀬名 眞白
…え?

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鷹野 光星強くて頼もしいときもあれば、とても愛らしいときがある。
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瀬名 眞白
えっ?!
あ…「愛らしい」?!
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鷹野 光星勇敢で誰にも負けないような強さと、
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鷹野 光星無垢な純粋さを持ち合わせてる…ってこと。
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鷹野 光星もちろん、褒め言葉だよ。
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瀬名 眞白
…ふ、ふーん?

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少しばかりぶっきら棒な姿は、もちろん建前な俺。
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瀬名 眞白
(やべー…ニヤける)

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鷹野に褒められて、実際は心拍数上昇、テンション上昇、多汗まで発動。
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恋をすると心身のアップダウンが激しい。
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鷹野 光星そうそう、澪ちゃんだけど、
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瀬名 眞白
お、おう、

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瀬名 眞白
(そうだ、ニヤけてる場合じゃねー)

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我に返って、鷹野が紡ぎ出す答えを緊張気味に待つ。
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鷹野 光星去年、俺の弟が結婚したんだけど、
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鷹野 光星澪ちゃんは俺の弟のお嫁さんなんだ。
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鷹野 光星もうすぐ弟の誕生日だから、二人でサプライズのプレゼントを買いに行ったんだよ。
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瀬名 眞白
…「弟のお嫁さん」?

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鷹野 光星ああ。
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瀬名 眞白
弟のお嫁さんと約束して会って、一緒に買い物に行ったってこと?

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瀬名 眞白
弟さんの誕生日プレゼント買いに行くために?

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鷹野 光星そうだよ。
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瀬名 眞白
……そっか…。

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納得したように軽く相槌を打ってから、気づかれないように細く息を吐き出す。
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瀬名 眞白
(良かったー…鷹野の弟のお嫁さんだったのか)

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瀬名 眞白
(そりゃ、友達って感じじゃない気がするはずだよな…言ってみれば身内だし)

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鷹野 光星…なんだか、ホッとしてるみたいに見えるけど。
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瀬名 眞白
えっ、

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瀬名 眞白
別に全然っ。ほんとに、うん。

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…嘘。
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めっちゃホッとしてる。
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鷹野 光星……瀬名。
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瀬名 眞白
…ん?

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鷹野 光星……
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鷹野はおもむろに手を伸ばし、俺の頭をそっとひと撫でする。
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瀬名 眞白
ッ、な…なに?!

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鷹野 光星本当に、いい子だなと思って。
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瀬名 眞白
な、なんだよいきなり…。

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鷹野 光星……
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瀬名 眞白
…鷹野?

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鷹野 光星…、
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何か言いたげな表情をすぐに打ち消した鷹野はいつもの笑顔に切り替えて、俺から一歩後ろに下がった。
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鷹野 光星…さて。そろそろ弓道場に戻るよ。
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瀬名 眞白
お、おう。

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鷹野 光星そういえば、篠原との練習は順調に進んでるか?
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瀬名 眞白
え、まあ、順調だけど…、知ってたのか。

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鷹野 光星篠原がタスキを借りに来たときに、練習のことを聞いたんだ。
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鷹野 光星クラスメイトのために、いつもありがとうな。
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鷹野 光星体育祭、頑張れよ。
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瀬名 眞白
おう!

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瀬名 眞白
鷹野も副担だから、他のクラスのヤツらのことよりも俺のこと…めっちゃ応援してくれるんだろ?

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鷹野 光星もちろん。
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鷹野 光星…それ以上に応援するよ。
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言葉の最後は消え入りそうでいて、少し熱を帯びたような声音。
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聞き慣れないその声色にドキッとして、思わず反問するようにその表情を目で追いかけたが、
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どこか逃れるように踵を返した鷹野はそのまま弓道場に向かってしまった。
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瀬名 眞白
……、

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姿が見えなくなるまで、その広い背を見送る。
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瀬名 眞白
(もうめっちゃ好きじゃん、鷹野のこと…)

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ズキンと胸が痛む。
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切なくて、苦しくて、甘い痛み。
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鷹野のことをもっと知りたい。
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鷹野のそばに居たい。
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いっそ、鷹野のことを独り占めしたい。
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瀬名 眞白
(完全にやられてるわ…)

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自己中心に鷹野のすべてを求める欲に、俺はこのとき、初めて支配されていた。
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