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瀬名 眞白
(弓道部の練習って、何時くらいまでやるんだっけ…?)

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瀬名 眞白
(まあ、遅くなっても構わねーけど…)

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瀬名 眞白
(つーか、すれ違いで、実はもう帰っちゃってるとかないよな?)

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瀬名 眞白
……、ないない、それはない。

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思わず呟くようにひとりごちる。
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6限目の授業が終わってからずっとこの辺で偵察しているうえに、この俺が鷹野のことを見逃すわけがない。
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瀬名 眞白
……

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瀬名 眞白
…なんか俺、ヤバイ人みてーだな…。

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鷹野 光星…瀬名?
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瀬名 眞白
わあっ…!!?

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背後から予想外に声を掛けられて、思わず大きな声を出してしまった。
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ここだと見つかりにくいだろうという場所で、周囲の様子にも気を付けていたのに。
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鷹野 光星っ、と…、悪い、びっくりさせたか?
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瀬名 眞白
だ、大丈夫…っ。

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瀬名 眞白
(いや、めっちゃびっくりしたわっ…)

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いきなりの鷹野登場で。
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待ちわびていたけど、こんな状況は反則レベルで、さすがに驚いた。
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鷹野 光星どうした、こんなところで。
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瀬名 眞白
た…たまたま、通りかかったっつーか…。

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…待て、この返しはちょっとマズイ。
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この場から動いてもいない俺に鷹野は声を掛けたわけだから、矛盾が見え見えだ。
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鷹野 光星…もしかして、弓道部に入りたいとか?
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瀬名 眞白
い、今更、それはない。

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鷹野 光星そうか…残念。
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鷹野 光星…となると、
「通りかかった」という理由が、少し謎な気もするけど。 -
瀬名 眞白
(…やっぱりそこ、スルーしねえか…)

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偶然鉢合わせるという理想のシチュエーションとは程遠い結果に、内心で唇を噛む。
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鷹野 光星…どうした?
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瀬名 眞白
ちょっとまあ、

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瀬名 眞白
その、いろいろと…。

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鷹野 光星「いろいろ」って、なんだ?
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瀬名 眞白
「いろいろ」は、その…「いろいろ」だよ。

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しどろもどろになってしまう頼りない俺の話しぶりに、鷹野は探るように小首を傾げた。
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鷹野 光星弓道部に気になる子でもいるのか?
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瀬名 眞白
い、いねーよっ、そんなヤツ。

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鷹野 光星…そうか。
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瀬名 眞白
…、

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緩く微笑んだ鷹野を、一瞬だけ見据えてすぐに視線を横に流す。
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『気になる子』というのはいないが『めちゃくちゃ気になる人』なら自分の前にいる。
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瀬名 眞白
……、

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瀬名 眞白
…な、なあ、鷹野、

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鷹野 光星ん?なんだ?
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瀬名 眞白
昨日さ…、

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鷹野 光星うん?
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瀬名 眞白
ほ、放課後…いた?

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瀬名 眞白
一緒に、誰かと…、

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瀬名 眞白
帰り…そう、帰りに、一緒に…。

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瀬名 眞白
(バカか俺はっ、言い回しがますます挙動不審すぎるっ…)

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脳内で自分を張り倒しながら、鷹野に視線を戻した。
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鷹野 光星昨日の帰り…ってことだよな?
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瀬名 眞白
ああ、昨日の帰り…。

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鷹野 光星えっと…、
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鷹野は、そのときの記憶を引き出すように下方に視線を巡らせる。
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鷹野 光星――あ、うん。
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鷹野 光星一緒に帰ったというか、『約束して会った』といった方が正しいかな。
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瀬名 眞白
「約束して会った」…?

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そこはいちいち丁寧に正してくれなくてもいいんだよっ、鷹野っ。
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『一緒に帰った』というよりも、なんかタチが悪いじゃんかっ。
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そんな俺の心模様に気づくはずがない鷹野は、全く悪気のない様子で静かに微笑んで俺を見つめた。
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鷹野 光星それがどうかしたのか?
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瀬名 眞白
いやその、なんつーか…、

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瀬名 眞白
その人ってさ、

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鷹野 光星ああ、澪ちゃんのことか?
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瀬名 眞白
「澪ちゃん」?!

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鷹野 光星澪ちゃんがどうかしたのか?
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瀬名 眞白
――…

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普段から呼び慣れたように、しかもなんだか嬉しそうにファーストネームで呼ぶあたり、やっぱりこれは…。
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よし……、もう腹を括れ、俺。
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瀬名 眞白
もしかしてその人って…、鷹野の彼女…?

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鷹野 光星…、
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勇気を振り絞るようにして投げた質問だったのに。
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鷹野は即答することなく、ほんのわずかに眉根をピクリとさせた後、俺を見つめたまま押し黙った。
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