1-4 そこに性別云々は、どうでもいいことなのだ。

  • 俺が鷹野のことを好きになったのは、晴蘭に入学してしばらく経った頃。

  • 背が高く優男に見えるが、実際はその見た目よりずっと男らしい。

  • 鷹野が生徒のために力強く奔走する姿を見たり、生徒みんなに向ける笑顔を眺めていたら、いつの間にか好きになっていた。

  • 同性愛だとか異性愛だとか、決めつけること自体、よく分からない。

  • 小学生の頃は同じクラスの女子が好きだったし、

  • 一つ言えるとしたら、俺の恋愛対象は『人間』であるということ。

  • そこに性別云々は、どうでもいいことなのだ。

  • けど、その想いは、時に人の心を傷つける。

  • 今の時代、性の多様化だとか言われるようになったとはいえ、それでもまだ理解度は低いから。

  • 俺が良くても、俺の想いをぶつけられて迷惑だったら…と、

  • そう考えると、どうしても臆病になってしまって、今は片想いを貫こうとしている自分がいる。

  • でも。

  • 瀬名 眞白

    鷹野の好きなケーキってなに?

  • 瀬名 眞白

    売り切れねーように、取っといてやるよ。

  • やっぱり好きな人には、さりげなく特別扱いをする俺。

  • そして、鷹野に提供するケーキは、俺が愛を込めてしっかりと作り込んだものにするつもりだ。

  • 鷹野 光星

    お、優しいな。

  • 鷹野 光星

    でも、好きなケーキが売り切れてしまっても構わないよ。

  • 鷹野 光星

    おまえたちが用意したものなんだ、残り物でもなんでもいいさ。

  • 瀬名 眞白

    いや、

  • 瀬名 眞白

    そこはクラスの副担の特権を利用すればいいと思うけど。

  • 瀬名 眞白

    …だよな?勝生?

  • 武藤 勝生

    うんうん、そうだよ、先生!

  • 鷹野 光星

    ははっ、ありがとう。

  • 瀬名 眞白

    どのケーキがいい?

  • ちょっぴり探るように鷹野を見据えてしまいながら、答えを待つ。

  • 鷹野は、顎先を指でトントンと軽く弾いてしばらく熟考した後、

  • 鷹野 光星

    んー…じゃあ、シフォンケーキで。

  • 無垢な笑顔を俺たちに向けた。

  • 武藤 勝生

    え、なんか可愛いんですけど。

  • 鷹野 光星

    そうか?

  • 瀬名 眞白

    確かに。

  • 瀬名 眞白

    なんとなく、ガトーショコラを選ぶイメージ。

  • 鷹野 光星

    生クリームが好きだからさ。

  • 鷹野 光星

    シフォンケーキって、単体で生クリームが添えられてるだろう?…だから。

  • 武藤 勝生

    鷹野先生が生クリーム好きっていうのも、なかなか萌える。

  • 鷹野 光星

    あはは、そんなにギャップあるかな?

  • 瀬名 眞白

    ある。

  • 瀬名 眞白

    (可愛すぎ)

  • 鷹野 光星

    あと…、黒木先生はどのケーキがいいのか聞いておくよ。

  • 瀬名 眞白

    ……はーい。

  • 少しばかり気怠げに、間延びした返事を返す。

  • せめてもの抵抗をこっそり表現したっていうか。

  • 本音では、『黒木の分まで知らねーよ』と言いたい。

  • 鷹野 光星

    …そういえば、瀬名。

  • 鷹野 光星

    チケットの件とは別に、おまえには用があったんだ。

  • 瀬名 眞白

    え、俺に?

  • 鷹野 光星

    この間の小テストで、俺が採点ミスしたところがあるから、あとでちょっと見せてもらえるか?

  • 鷹野 光星

    他のみんなの分は訂正したんだけど、瀬名は風邪を引いて休んでたから。

  • 瀬名 眞白

    いいけど、

  • 瀬名 眞白

    採点ミスとか珍しいじゃん。

  • 鷹野 光星

    もう一つ別の解答もあるのにうっかりしてて。

  • 鷹野 光星

    瀬名の解答次第では、×をつけちゃったところが、〇になるから。

  • 鷹野 光星

    あの小テスト、瀬名は98点だっただろう?

  • 鷹野 光星

    俺の採点ミスを訂正すれば、100点になるから。

  • 武藤 勝生

    うおっ!さっすが眞白!

  • 武藤 勝生

    どっちかっていうと理系なのに、国語でも高い点数取れるなんてすごいよ。

  • 瀬名 眞白

    たいしたことねーよ。

  • 武藤 勝生

    やっぱあれかな、文系も得意ってことか。

  • 瀬名 眞白

    …いや。

  • 瀬名 眞白

    (鷹野が教える科目を悪く言うつもりはねーけど、国語なんて俺からすれば苦手科目だっつーの)

  • 瀬名 眞白

    (でも、鷹野の教科だからな…、)

  • 瀬名 眞白

    (もしも低い点数なんて取ったら、俺が自分を許せねー)

  • 国語だけはマジで、必要以上に抜かりなく勉強している俺がいる。

  • 武藤 勝生

    僕なんて、先生の採点ミスのおかげで2点上がって、78点。

  • 鷹野 光星

    なに言ってるんだ、前回の小テストの点数より上がってるじゃないか、武藤。
    おまえもよく頑張ってるよ。

  • 武藤 勝生

    あざーっす!

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 鷹野の、こういうところが好きだ。

  • 広い視野で、ちゃんと人を評価できるところ。

  • 瀬名 眞白

    小テスト、職員室に持って行けばいいか?

  • 鷹野 光星

    そうだな…
    これから、明日の授業準備で国語科の資料室にいるから、そこまで持ってきてもらえると助かる。

  • 瀬名 眞白

    分かった、あとで持って行く。

  • そう素直に承諾したものの、

  • 瀬名 眞白

    (待てよ、この流れって…)

  • ベタだが、もしかして、鷹野と二人きりになれるチャンス?!

  • …いや、他にも国語科担当の先生はいるから、二人きりは無理か。

  • 瀬名 眞白

    (どっちにしろ、鷹野と話せる時間を持てるのは、超嬉しい)

  • 鷹野 光星

    じゃ、俺はもう行くから。

  • 鷹野 光星

    そろそろ昼休憩も終わるし、二人とも教室に戻れよ?

  • 武藤 勝生

    はーい!

  • 武藤 勝生

    眞白、行こう。

  • 瀬名 眞白

    おう。

  • 瀬名 眞白

    (…そういや、小テスト、まだ鞄の中に入ったままだったっけ?)

  • もしも入ってなかったら、家に帰って即行で探さねーと。

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