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篠原 円香今回の二人三脚で、瀬名くんに迷惑をかけないようにしたいんです。
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瀬名 眞白
なにが迷惑なのか分かんねーけどな?

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篠原 円香瀬名くんはとても優しいから、そんな風に言ってくれると思ってました。
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瀬名 眞白
…「優しい」?俺が?

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篠原 円香優しいですよ、すっごく!
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篠原 円香自覚ないんですか?
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瀬名 眞白
ない。

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篠原 円香クラスのみんなも言ってます、
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篠原 円香男子の中で瀬名くんが一番優しいって。
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瀬名 眞白
わ、分かった、もういい。

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瀬名 眞白
(なんか照れるわ、そういうの)

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瀬名 眞白
えっと、あれだよな…
二人三脚の練習…だっけ?
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前のめりになって純粋に声を並べた円香にちょっぴり気圧されながら、脱線した話を軌道修正する。
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篠原 円香…はい、そうです。
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篠原 円香実は僕、来年オーストリアにピアノ留学することが決まって…。
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瀬名 眞白
そうなのか?すげーじゃん!

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瀬名 眞白
…え、でも、留学ってことは、晴蘭は…、

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篠原 円香はい…、
晴蘭で過ごすのは、この2年生で最後になると思います。 -
篠原 円香だから余計に、思い出を作っておきたいなって思うんです。
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瀬名 眞白
…だよな。

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篠原 円香とにかく、瀬名くんにも迷惑をかけないようにちゃんと練習をして、せめて人並みに走れるようにしたいんです。
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瀬名 眞白
…、

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「『人並みに』というのは大袈裟だ」と言いかけたが、体力テストのときの円香の様子を思い出して言い止[#ruby=止_とど#]まる。
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瀬名 眞白
(確か…円香の50メートル走のタイムは12秒くらいで、)

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瀬名 眞白
(さらに、ゴールしてから足がもつれてこけてたっけ…)

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そのときの円香をおんぶして、保健室まで連れて行った記憶がぼんやりと広がったからだ。
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瀬名 眞白
(そういやあのときの円香、変なこけ方したんだよな…)

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顔から突っ込んだみたいなこけ方をして、顔の片側を擦りむいていた。
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篠原 円香瀬名くん、
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瀬名 眞白
…おう、

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篠原 円香お願いします!
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篠原 円香ちゃんと最後まで瀬名くんと一緒に走り切って、ゴールしたいんです!
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口元をきゅっと引き締めた円香のその顔つきからは、普段見ることのない、揺るぎない想いみたいなものが感じ取れた。
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これはもう、引き受ける選択肢しかない。
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瀬名 眞白
…分かった。

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瀬名 眞白
今日はバイトがあるから練習できねーけど、明日からやろうぜ?

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篠原 円香ありがとうございます!
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瀬名 眞白
最後まで一緒に走って、いい思い出にしような?

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篠原 円香はいっ!
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女子と見紛うくらいの可愛い笑顔で、円香は嬉しそうに頷いた。
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次の日の放課後。
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約束通り二人三脚の練習をするために、俺と円香は校庭の片隅にいた。
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円香が走りやすいポジションを優先して、互いの足首をタスキで縛る。
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瀬名 眞白
焦るな、まずはゆっくりでいいから。

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篠原 円香は、はい…っ。
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身長163センチの円香と俺は15センチの身長差があるからバランスがいいとは言えないが、がっちり肩を組んで根気よく練習を繰り返す。
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瀬名 眞白
よし…良い感じ!

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篠原 円香ありがとうございますっ…。
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最初は足並みを揃えて歩くだけでもこけそうになっていた円香だったが、
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小一時間ほど掛け声とともにリズムを刻んで歩く練習をしていたら、ようやく形になってきた。
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ただ、この状態からコーナーもある100メートルを一緒に走り切れるようになるまでに進化させるとなると、もう少し時間がかかりそうだ。
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瀬名 眞白
いきなり練習詰めると疲れるだろ?大丈夫か?

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篠原 円香は、はい、大丈夫です…っ、!
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瀬名 眞白
少し息が上がってね?休憩しようぜ?

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瀬名 眞白
俺も喉乾いたし。

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言いながら足を縛るタスキを解いて、校庭の隅に置いたリュックの場所を顎先で指し示した。
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ペットボトルを手にし、二人で芝上に腰を下ろす。
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瀬名 眞白
(あちー…)

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季節は秋に入ったとはいえ、少し動いたらまだじわりと汗ばむ気温。
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スポーツドリンクを飲みながら、隣で同じように喉を潤す円香を見遣った。
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