2-13 …今、なんて言った?

  • 瀬名 眞白

    ……、

  • なに言ってんだよ鷹野、ただ強いだけじゃ生きられない。

  • 俺が高校に入ってからも生き続けていられるのは、鷹野に出会えたからなんだよ。

  • どれほど鷹野の存在が、俺を笑顔にしてくれてるのか…全然知らねーだろ?

  • 瀬名 眞白

    …と、とりあえず、ありがと。

  • 結局口に出せたのは、ぎこちない「ありがとう」の言葉だけ。

  • 想いは溢れるけど、言えるわけなくて。

  • 鷹野 光星

    俺は…、

  • 鷹野 光星

    おまえの心も体も傷つくのが嫌だ。

  • 瀬名 眞白

    えっ…

  • 鷹野 光星

    本当は、喧嘩だってしてほしくない。

  • 鷹野 光星

    今回も、おまえがやられてなかったからよかったものの…、

  • 鷹野 光星

    そうじゃなかったらと思うと、ゾッとする。

  • 瀬名 眞白

    …た、鷹野…?

  • 鷹野 光星

    いつだって…、

  • 鷹野 光星

    どんなときも、おまえのことが心配だ。

  • 瀬名 眞白

    ――えっ、

  • 今、なんて言った?

  • 瀬名 眞白

    …え、

  • 瀬名 眞白

    そ、それってさ、

  • それってなんか、なんとなくだけど…、

  • もしかして、とても深い意味を含んだ言葉、だったんじゃね…?

  • 瀬名 眞白

    鷹野、あのさ、それって――

  • 鷹野 光星

    なんでもない。

  • 瀬名 眞白

    えっ、いや、即否定じゃなくてさ、

  • 瀬名 眞白

    なんでもないことねーだろ、なんか言ったじゃん?

  • 鷹野 光星

    別に…
    ひとりごとだよ、気にするな。

  • 瀬名 眞白

    いやいやいや、違う違うっ、

  • 瀬名 眞白

    人の目を見ながら言うひとりごとなんてあるかよっ、

  • 瀬名 眞白

    めっちゃ気になるんだがっ。

  • さらに問いただそうと勢いよく立ち上がったと同時に、

  • 山那 みさき

    …眞白!鷹野先生!

  • 保健室のドアが開いて山那が顔を覗かせた。

  • 瀬名 眞白

    …なっ――

  • 瀬名 眞白

    (なんで今、都合よく現れる…っ)

  • 鷹野 光星

    おっ、山那!

  • 鷹野 光星

    もう大丈夫か?

  • 山那 みさき

    はいっ、私は大丈夫です!

  • 山那 みさき

    何があってこうなってしまったのかも、しっかり話してきました。

  • 山那 みさき

    あの3人も泣きながら、「もうバカなことはしない」って反省してましたよ。

  • 鷹野 光星

    ちゃんと反省してたか…良い傾向だな。

  • 瀬名 眞白

    (うー、山那のせいで話がすり替わってしまった…)

  • 内心でむくれながら、しぶしぶ話を繋ぐ。

  • 瀬名 眞白

    当然だ。
    涙が枯れるまで泣いて反省すりゃいいんだよ。

  • 山那 みさき

    みんな、眞白にボコボコにやられて痛そうだったよ。
    すっかり怯えてた。

  • 瀬名 眞白

    制裁だからな。

  • 瀬名 眞白

    いつもより痛がって怯えるくらいでちょうどいい。

  • 山那 みさき

    そうだね…。

  • 瀬名 眞白

    …ん?
    まさか、おまえ…、

  • 山那 みさき

    えっ?

  • 瀬名 眞白

    酷いことを企んでたあいつらのことを、「かわいそう」だとか思ってねーよな?

  • 山那 みさき

    お、思ってないよっ。

  • 山那 みさき

    ただ…、
    眞白って、すごく喧嘩が強いんだなって思っただけ。

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 瀬名 眞白

    …そういうの、慣れてんだよ。

  • 山那 みさき

    …『喧嘩に慣れてる』ってこと?

  • 瀬名 眞白

    …まあな。

  • 瀬名 眞白

    (そうか…山那は晴蘭に入ってからの友達だから、俺の過去を知らねーんだった)

  • 山那 みさき

    …慣れててもなんでもいいや。

  • 瀬名 眞白

    …ん?

  • 山那 みさき

    眞白が友達だってことを誇りに思っちゃう。

  • 瀬名 眞白

    なんだそれ。大袈裟。

  • 山那 みさき

    だって、ほんとにそう思うんだもん。

  • 山那 みさき

    助けてもらった御恩、一生忘れないから。
    本当にありがとう。

  • 瀬名 眞白

    …おう。

  • 山那のまっすぐな『ありがとう』が、ちょっぴり照れくさい。

  • 中学時代に暴れ回って身に付いたステゴロが人助けになるなんて、あの頃は思いもしなかったから。

  • 山那 みさき

    手首、大丈夫?

  • 瀬名 眞白

    ああ。なんてことねーよ。

  • 瀬名 眞白

    (……それにしても)

  • 平静を装って山那と話しながらも、いまだモヤモヤする思いを抱き込んだまま。

  • 瀬名 眞白

    (あのときの鷹野…どういう気持ちで言ったんかな…)

  • 山那の突然の登場で、それを知ることがうやむやになってしまった。

  • 鷹野の意味ありげな言葉が頭の中をぐるぐる廻って、俺はしばらくの間、眠れない夜を過ごすことになる…きっと。

  • NEXT

タップで続きを読む