2-11 このまま黙り込んで、話さずにいようと思ったけど。

  • 鷹野 光星

    そんなことになるわけないだろ。

  • 鷹野 光星

    今回の騒動は、山那を助けるためだったんだから。

  • 瀬名 眞白

    でも、晴蘭始まって以来じゃねーかな…こんな騒動。

  • 鷹野 光星

    そうだとしても。

  • 鷹野 光星

    俺がそんな処分になんかさせない。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 鷹野のどこか決意めいた瞳に、胸がジンと熱くなる。

  • これまでにも俺は、いつも生徒のために動く鷹野を遠くから見てきた。

  • それが今、鷹野は俺のために奔走しようと心を決めている。

  • もうそれだけで…十分すぎるくらいに嬉しくて。

  • 鷹野 光星

    とにかく、そこは俺に任せなさい。

  • 瀬名 眞白

    ……分かった。

  • 瀬名 眞白

    ありがと。

  • 鷹野 光星

    おそらく職員会議では、瀬名の正義をどこまで認めるかが争点になってくると思うけど、

  • 鷹野 光星

    俺は瀬名が間違ったことをしたわけじゃないと思っているから。

  • 鷹野 光星

    きっと黒木先生も、俺と同じことを思うはずだよ。

  • 瀬名 眞白

    ……うん。

  • 鷹野 光星

    ちなみに、怪我をしたあの3人にも瀬名の親御さんにも、学校側から連絡が行くと思う。

  • 瀬名 眞白

    …え、やっぱり?

  • 瀬名 眞白

    俺の実家にも連絡行く?

  • 鷹野 光星

    ああ。

  • 鷹野 光星

    学校側もきちんと説明するけど、瀬名も御両親に事の経緯をちゃんと伝えるんだぞ?

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 『両親』というキーワードを聞いただけで、思わず眉根を寄せてしまう。

  • 母親はまだしも、父親の存在は俺の心をざらりと搔き乱すから。

  • 鷹野 光星

    …瀬名?

  • 瀬名 眞白

    …「事の経緯」ってなに。

  • 瀬名 眞白

    普通に喧嘩しただけだけど。

  • つい素っ気ない切り返しをしてしまった。

  • 鷹野 光星

    『普通の喧嘩』じゃないだろう。

  • 鷹野 光星

    山那を守り抜いた、ある意味の闘いだ。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 瀬名 眞白

    そう思えるのって、鷹野だからじゃねーの?

  • 鷹野 光星

    そんなことないさ。
    きっと瀬名の御両親も分かってくれる。

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 鷹野 光星

    分かったな?

  • 鷹野 光星

    おまえがむやみに喧嘩したんじゃないってこと、自分からもちゃんと伝えるんだぞ?

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 鷹野 光星

    …どうした?

  • 瀬名 眞白

    俺の家に連絡しても、無駄だと思うけど。

  • 鷹野 光星

    「無駄」?どうして?

  • 瀬名 眞白

    鷹野と真逆の考え方をする人間だからだよ……特に父親は。

  • 鷹野 光星

    えっ?

  • 瀬名 眞白

    …外から見たら、まあ、いい家柄だよ、俺の家は。

  • 瀬名 眞白

    何不自由なく、世間一般の…どっちかっつーと、それよりは裕福だと思うし。

  • 瀬名 眞白

    でも、あんな窮屈な家…、

  • ほんの少し思い巡らせただけで、気持ちがどんより重くなってくる。

  • 可能なら、このまま黙り込んで話さずにいようと思ったけど。

  • 鷹野 光星

    …瀬名?大丈夫か?

  • 鷹野がすごく心配そうに見つめてくるから。

  • 迷ったけど、少しだけ『俺の話』をすることにした。

  • 瀬名 眞白

    ……俺、

  • 瀬名 眞白

    父親からは見限られてるから。

  • 鷹野 光星

    …え?

  • 瀬名 眞白

    つーか、俺が自分で見限られるようにしたんだけどさ。

  • 鷹野 光星

    …どういうことだ?

  • 瀬名 眞白

    単純に、父親の息子を辞めたいって思ったんだよ。

  • 鷹野 光星

    …―――

  • 瀬名 眞白

    …うちの家は父親がてっぺんだから、どんな話でも父親の耳に入れて理解を得なきゃならねーところがある。

  • 瀬名 眞白

    でも、見限った俺のことなんであの人からすればどうでもいいから。

  • 瀬名 眞白

    母親や兄貴はともかく、俺のことなんて眼中にねーんだよ。

  • 瀬名 眞白

    とにかく、俺の話をあの人にしたところで無駄だってこと。

  • 好きな人からじっと見つめられるなんて、ほんとはすごく嬉しいことなのに。

  • 今の俺は、鷹野の双眸を避けるように窓辺へと視線を飛ばした。

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