ウシジマくん呟き

9

2026/02/08 12:14
テレビでは、ラーメン屋のカウンターが映っている。
鉄鍋を振る音。
湯気。
油の弾く音。
柄崎は、画面を見たまま言う。

「……ラーメン屋の炒飯って、なんであんな美味いんですかね」

少し、明るい声。

「……家で作ると、なんか違うんですよね、あー…たまに餃子も食べたいなぁ…」

画面が切り替わる。
店主のアップから、次の店の外観。
ナレーションの声が変わった。
——その瞬間。
社長が、小さく息を吐いて言う。

「……もう寝るわ」

番組の区切りに、合わせたみたいな一言。
それだけ言って、立ち上がる。
リモコンを取って、テレビを消した。
部屋が、一気に静かになる。
社長は、そのままリビングのソファへ向かう。
横になるつもりの動き。
それを見て、柄崎が反射的に声を出す。

「……社長」

社長が、足を止める。

振り返らない。

「……ベッドで、寝てください」

少しだけ、はっきりした声。

社長は、一拍置いて答える。

「……お前が使えよ」

低く、短い。

柄崎は、一歩だけ近づき。

「……ここ、社長の家っす」

言い訳にならないよう、静かに。

「……そこは、俺が使います」

社長は、ゆっくり振り返る。

視線が、一瞬だけ合う。
何か言いかけて、やめたような顔。
それから、小さく。

「……いい」

短い一言。
方向を変えて、寝室へ向かう。

「来い」

背中越しに、それだけ。
柄崎は、一瞬だけ立ち尽くしてから、小さく答える。

「…え、あ…はい」

寝室。
社長は、ベッドの端に腰を下ろして、そのまま横になった。
背中を向けて。
柄崎も、少し距離を取って横になる。
触れない。
でも、同じ空気。
——番組が切り替わったところで、夜も切り替わった。

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