ウシジマくん呟き

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2026/02/06 17:40
風呂場のドアを閉めると、外の気配が遠のく。
電気をつける。
白い光。
鏡に映る自分を、一瞬だけ見てから視線を逸らす。
洗面台の端に、社長の使っているものが並んでいる。
歯ブラシ。
シェーバー。
整えられた配置。
余計なものはない。
(……社長の生活だ)
それだけで、少し背筋が伸びる。
シャワーを出す。
お湯の音が、やけに大きく聞こえる。
湯気が立ち上る。
シャンプーに手を伸ばす時、一瞬だけ、躊躇う。
でも、使わないわけにもいかない。
泡立てて、流す。
匂いは、控えめ。
強く残らない。
——社長らしい。
身体を洗って、お湯を止める。
静かになる。
タオルで髪を拭きながら、ゆっくり息を吐いた。
(……落ち着くな)
理由は、分からない。
脱衣所に戻り。電気をつけた。
その瞬間、足が止まる。
洗面台の横に、服が置いてある。

黒いTシャツ。
スウェット。

見覚えのある、社長の服。
自分の着替えじゃない。
一瞬、何も考えられなくなる。
(……用意、してくれたんだ)
言われてない。
説明もない。
でも、ここにある。
手に取ると思ったより、重い。
生地がしっかりしている。
Tシャツを広げると、
サイズが大きいのが分かる。
迷ってから袖を通すと肩が、少し落ちる。
裾も、長い。
スウェットも、
同じ。
ウエストは、少し緩い。
鏡を見る。
——完全に、借り物。
でも。
不思議と、違和感はない。
タオルを畳んで、洗面台の端に置く。
ドアノブに手をかける前、一度だけ深呼吸する。
外に、社長がいる。
それだけで、少し胸が高鳴った。

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