ウシジマくん呟き
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2026/02/05 22:54社長が天邪鬼すぎる。
社長が天邪鬼すぎる。
(大切だから2回言った)
店の中は、思ったより静かだった。
平日の遅い時間。
奥のカウンターだけが埋まっている。
社長は、腰を下ろすと、メニューも見ずに言う。
「……いつもの」
すぐに酒が出てくる。
グラスを手に取るが、口には運ばない。
ただ、そこに置く。
柄崎が、少し遅れて隣に座る。
「……乾杯とか、します?」
社長は、一瞬だけグラスを持ち上げ、小さく鳴らした。
それだけ。
一口。
量は少ない。
——酔う気はない。
酒は、必要な分だけでいい。
社長は、グラスを置いたまま考える。
今日、柄崎を呼んだ理由。
段ボール。
名簿。
事務所の片付け。
それだけだ。
余計な理由は、いらない。
今日は、別の予定がある夜だ。
そういう段取りだった、という事実は把握している。
だからといって、今の判断が揺らぐわけでもない。
今は、ここにいる。
それで問題はない。
柄崎が、焼き鳥をつつきながら言う。
「……今日、静かっすね」
社長は、視線をグラスから外さずに答える。
「……いつもだろが」
会話が必要な場じゃない。
一瞬だけ、柄崎の横顔を見る。
落ち着いている。
余計な様子はない。
——こういう時に限って、こいつ、なんも喋らねぇ。
考えてるのか、何も考えてないのか。
どっちにしても、聞く気はない。
酒は、最後までほとんど減らない。
時間だけが、静かに過ぎる。
「……そろそろ行くか」
社長が立ち上がった。
会計は、当然のように自分が払う。
店を出ると、引き戸が閉まり、夜風が入る。
柄崎が言う。
「……このあと、どうします?」
社長は、一度だけ周囲を見て言う。
「……乗り場、あっちだ」
歩き出す。
会話はない。
タクシー乗り場に着く。
並んだ車を見て。
「……やっぱ、歩く」
理由は言わない。
聞かせる必要もない。
大通りを外れる。
音が減る。
社長は、歩幅を少し落とした。
意識してではない。
柄崎が、自然に並ぶ。
しばらくして、道が分かれる角に差しかかる。
柄崎が、自分の帰る道の前で足を止める。
社長は、二歩ほど先で止まり、
振り返らずに言う。
「……遅ぇ時間なのに」
「このまま、一人で歩いて帰るつもりか」
柄崎は、一瞬、言葉に詰まった。
「……あ、いえ……」
社長が、ゆっくり振り返る。
表情は変わらない。
「……俺は、こっちだ」
説明もしない。
感情も乗せない。
進む方向を示しただけだ。
街灯の下で、一瞬、静けさが深くなる。
——続きは、もう決まっている。
社長が天邪鬼すぎる。
(大切だから2回言った)
店の中は、思ったより静かだった。
平日の遅い時間。
奥のカウンターだけが埋まっている。
社長は、腰を下ろすと、メニューも見ずに言う。
「……いつもの」
すぐに酒が出てくる。
グラスを手に取るが、口には運ばない。
ただ、そこに置く。
柄崎が、少し遅れて隣に座る。
「……乾杯とか、します?」
社長は、一瞬だけグラスを持ち上げ、小さく鳴らした。
それだけ。
一口。
量は少ない。
——酔う気はない。
酒は、必要な分だけでいい。
社長は、グラスを置いたまま考える。
今日、柄崎を呼んだ理由。
段ボール。
名簿。
事務所の片付け。
それだけだ。
余計な理由は、いらない。
今日は、別の予定がある夜だ。
そういう段取りだった、という事実は把握している。
だからといって、今の判断が揺らぐわけでもない。
今は、ここにいる。
それで問題はない。
柄崎が、焼き鳥をつつきながら言う。
「……今日、静かっすね」
社長は、視線をグラスから外さずに答える。
「……いつもだろが」
会話が必要な場じゃない。
一瞬だけ、柄崎の横顔を見る。
落ち着いている。
余計な様子はない。
——こういう時に限って、こいつ、なんも喋らねぇ。
考えてるのか、何も考えてないのか。
どっちにしても、聞く気はない。
酒は、最後までほとんど減らない。
時間だけが、静かに過ぎる。
「……そろそろ行くか」
社長が立ち上がった。
会計は、当然のように自分が払う。
店を出ると、引き戸が閉まり、夜風が入る。
柄崎が言う。
「……このあと、どうします?」
社長は、一度だけ周囲を見て言う。
「……乗り場、あっちだ」
歩き出す。
会話はない。
タクシー乗り場に着く。
並んだ車を見て。
「……やっぱ、歩く」
理由は言わない。
聞かせる必要もない。
大通りを外れる。
音が減る。
社長は、歩幅を少し落とした。
意識してではない。
柄崎が、自然に並ぶ。
しばらくして、道が分かれる角に差しかかる。
柄崎が、自分の帰る道の前で足を止める。
社長は、二歩ほど先で止まり、
振り返らずに言う。
「……遅ぇ時間なのに」
「このまま、一人で歩いて帰るつもりか」
柄崎は、一瞬、言葉に詰まった。
「……あ、いえ……」
社長が、ゆっくり振り返る。
表情は変わらない。
「……俺は、こっちだ」
説明もしない。
感情も乗せない。
進む方向を示しただけだ。
街灯の下で、一瞬、静けさが深くなる。
——続きは、もう決まっている。
