ウシジマくん呟き

彼女候補

2026/02/04 16:56
柄崎の彼女候補たるものがいても社長のほうが多分大事なのかな、なんて思った小話呟き。

夜。
部屋は、薄暗い。
ベッドの上で、柄崎は横になっていた。
隣には、“彼女候補”の女性。

さっきまでの空気は、もう落ち着いている。
女は、天井を見ながら、ぽつぽつ話し始めた。

今日のこと。
明日の予定。
取り留めのない話。

柄崎は、相槌を打ちながら、
ぼんやり聞いている。
頭は、どこか別の場所。
——その時。
スマホが、震えた。
画面を見る。
社長。
「……ちょっとごめん」
小さく言って、ベッドを抜け出す。
通話。
「……もしもし」
『……何してんの?』
低い声。
一瞬、間が空く。
「……特には!」
少しだけ、声が上ずる。
『……ふーん』
間。
『……暇なら、来いよ』
短い。
それだけ。
柄崎は、スマホを耳に当てたまま、
少しだけ迷う。

ベッド。
女。
今の空気。

でも。
「……はい!」
即答。
『……早ぇな』
「……すぐ行きます」
通話が切れる。
柄崎は、迷いを断ち切るみたいに、さっと服を掴む。
シャツ。
パーカー。
ズボン。

女が、少し驚いた顔で見る。
「……もう行くの?」
「……うん」
曖昧な笑い。
「……ごめん」
それ以上、言わない。
靴を履きながら、
スマホをポケットにしまう。
胸の奥が、不思議なくらい軽い。
ドアの前で、一瞬だけ振り返る。
「……また、連絡する」
約束とも、逃げとも取れる言葉。
ドアが閉まる。
夜風。
柄崎は、足取りを早める。
——理由は、考えない。
ただ。

「……暇なら来いよ」

その一言が、全部だった。

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