ウシジマくん呟き

腰抜け柄崎

2026/01/06 20:38
「……もう一軒、行けますよ」

柄崎そう言った瞬間だった。

一歩踏み出した柄崎の膝が、情けない音を立てて崩れる。

「……あ」

地面に座り込むより先に、視界がぐらついた。

「アホ。限界だろ」

腕を掴まれて立たされるが、力が入らない。
次の瞬間、腰が完全に抜けた。

「ちょ……社長……」

「だから言ったろ」

低い声と同時に、体が持ち上がる。
担がれて、肩に腹が乗る形。

「うわ……マジすか……」

「歩けねえ奴に、選択権はねェ」

抗議しようとしたが、顔のすぐ横に来たものに言葉が詰まる。

パーカーの肩口。
近すぎる距離。
息を吸った瞬間、匂いが一気に入り込んできた。
タバコか洗剤か……

いや、どっちでもない。
社長の匂いだと、分かってしまうやつ。

「……これ……社長の……」

「黙れ。酔い回ってンぞ」

ぶっきらぼうな声。

でも、担ぐ腕はやけに安定している。
揺れに耐えきれず、柄崎は反射的にパーカーを掴んだ。

ぎゅっと指に力が入る。

「……すみません……」

謝りながら、思わず目を閉じる。
視界を閉ざすと、匂いと体温だけが残って、
変に落ち着いてしまう。

「……もう一軒って……言ったの、
ちょっと……強がりでした……」

「知ってる」

短い返事。
それだけで、十分だった。

柄崎は何も言わず、
しがみついたまま、完全に身を預けた。




酔すぎ柄崎を荷物みたいに担いで欲しい、多分軽々と。担ぐ。

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