ウシジマくん呟き
アイスクリーム
2026/08/07 15:47イケナイ太陽〜っ!!!
なはなし
帰り道だった。
回収を終え、昼下がりの熱気だけがアスファルトから立ち上っている。
信号待ちの間、柄崎がふと声を上げた。
「あ、ソフトクリーム。」
視線の先には、小さな売店。
色褪せた旗に大きく「ソフトクリーム」と書かれていた。
「暑いし、食べません?」
社長は一瞥だけして鼻を鳴らす。
「あんまり好きじゃねぇ。」
「かき氷もありますよ。」
少しだけ間が空いた。
「……そっちなら食う。」
「何味にします?」
「いちご。」
柄崎は思わず笑う。
「いちごって意外っすね。」
「氷の味なんざ、どれも変わんねぇだろ。」
そう言って腕を組み、先に店先の日陰へ立つ。
「じゃ、今日は俺の奢りで。」
柄崎はソフトクリームと、いちごのかき氷を受け取って戻ってきた。
店の脇のベンチへ腰を下ろす。
夏の日差しは容赦がない。
「うわ、溶けるの早っ。」
口に運ぶたび、白い渦が柔らかく形を崩していく。
一口。
また一口。
話そうとしただけで先端が傾き、慌てて舐め取る。
指先へ垂れた雫も、そのまま舌で追う。
冷たさに肩を震わせながら、夢中で食べ続ける姿を社長は黙って見ていた。
視線が外せない。
何度も重ねた夜を思い出してしまう。
その唇が。
その舌が。
自分の熱を知っていることを、身体が勝手に思い出してしまう。
こんな何気ない仕草のはずなのに。
妙に胸の奥が落ち着かない。
柄崎はそんなことなど気付かず、また指先を舐める。
「……。」
社長はかき氷のスプーンを止めた。
無意識に眉間へ皺が寄る。
(見なきゃいい。)
そう思っても、目だけが勝手に追ってしまう。
やがてソフトクリームの上が耐え切れず崩れた。
「あっ。」
慌てて受け止めようとして、結局手のひらまで白く汚れる。
口元にも甘い跡が残っていた。
「きったねぇな。」
低く呟く。
「さっさと食わねぇからだ。」
柄崎は困ったように笑う。
「社長のはカップだからいいじゃないですか。」
返事をする間にも、また一滴。
「うわ、また……。」
必死に食べ進める姿に、社長は深くため息を吐いた。
その様子が可笑しいのか。
それとも。
見ていられないのか。
自分でも分からない。
食べ終える頃には、両手も口元も甘い跡だらけだった。
社長はポケットからウェットティッシュを取り出し、無言で差し出す。
「ありがとうございます。でも今、これで手が……。」
汚れた手を見せられて、また眉が寄る。
「世話かけんなよ。」
呆れた口調とは裏腹に、一枚を抜いて渡した。
柄崎は慌てて手を拭く。
頬も口元も適当に擦る。
「ちゃんと拭け。」
「え?」
返事をするより早く、社長はティッシュを取り上げていた。
乱暴そうでいて、実際は力を入れない。
口元を一度。
顎を一度。
親指で支えるようにして、残った白い跡まで拭き取る。
「……いいぞ。」
柄崎は目を丸くしたあと、小さく笑った。
「……すみません。ほんとに。」
その笑顔を見た社長は視線だけ逸らす。
「ったく。」
短く吐き捨てる。
その声は呆れているようで、どこか照れ隠しにも聞こえた。
柄崎は気付かない。
社長だけが知っている。
あの無防備な仕草ひとつで、こんなにも心が乱されることを。
互いの熱を知ってしまったからこそ、ただアイスを舐めるだけの横顔ですら、平静ではいられなくなっていた。
なはなし
帰り道だった。
回収を終え、昼下がりの熱気だけがアスファルトから立ち上っている。
信号待ちの間、柄崎がふと声を上げた。
「あ、ソフトクリーム。」
視線の先には、小さな売店。
色褪せた旗に大きく「ソフトクリーム」と書かれていた。
「暑いし、食べません?」
社長は一瞥だけして鼻を鳴らす。
「あんまり好きじゃねぇ。」
「かき氷もありますよ。」
少しだけ間が空いた。
「……そっちなら食う。」
「何味にします?」
「いちご。」
柄崎は思わず笑う。
「いちごって意外っすね。」
「氷の味なんざ、どれも変わんねぇだろ。」
そう言って腕を組み、先に店先の日陰へ立つ。
「じゃ、今日は俺の奢りで。」
柄崎はソフトクリームと、いちごのかき氷を受け取って戻ってきた。
店の脇のベンチへ腰を下ろす。
夏の日差しは容赦がない。
「うわ、溶けるの早っ。」
口に運ぶたび、白い渦が柔らかく形を崩していく。
一口。
また一口。
話そうとしただけで先端が傾き、慌てて舐め取る。
指先へ垂れた雫も、そのまま舌で追う。
冷たさに肩を震わせながら、夢中で食べ続ける姿を社長は黙って見ていた。
視線が外せない。
何度も重ねた夜を思い出してしまう。
その唇が。
その舌が。
自分の熱を知っていることを、身体が勝手に思い出してしまう。
こんな何気ない仕草のはずなのに。
妙に胸の奥が落ち着かない。
柄崎はそんなことなど気付かず、また指先を舐める。
「……。」
社長はかき氷のスプーンを止めた。
無意識に眉間へ皺が寄る。
(見なきゃいい。)
そう思っても、目だけが勝手に追ってしまう。
やがてソフトクリームの上が耐え切れず崩れた。
「あっ。」
慌てて受け止めようとして、結局手のひらまで白く汚れる。
口元にも甘い跡が残っていた。
「きったねぇな。」
低く呟く。
「さっさと食わねぇからだ。」
柄崎は困ったように笑う。
「社長のはカップだからいいじゃないですか。」
返事をする間にも、また一滴。
「うわ、また……。」
必死に食べ進める姿に、社長は深くため息を吐いた。
その様子が可笑しいのか。
それとも。
見ていられないのか。
自分でも分からない。
食べ終える頃には、両手も口元も甘い跡だらけだった。
社長はポケットからウェットティッシュを取り出し、無言で差し出す。
「ありがとうございます。でも今、これで手が……。」
汚れた手を見せられて、また眉が寄る。
「世話かけんなよ。」
呆れた口調とは裏腹に、一枚を抜いて渡した。
柄崎は慌てて手を拭く。
頬も口元も適当に擦る。
「ちゃんと拭け。」
「え?」
返事をするより早く、社長はティッシュを取り上げていた。
乱暴そうでいて、実際は力を入れない。
口元を一度。
顎を一度。
親指で支えるようにして、残った白い跡まで拭き取る。
「……いいぞ。」
柄崎は目を丸くしたあと、小さく笑った。
「……すみません。ほんとに。」
その笑顔を見た社長は視線だけ逸らす。
「ったく。」
短く吐き捨てる。
その声は呆れているようで、どこか照れ隠しにも聞こえた。
柄崎は気付かない。
社長だけが知っている。
あの無防備な仕草ひとつで、こんなにも心が乱されることを。
互いの熱を知ってしまったからこそ、ただアイスを舐めるだけの横顔ですら、平静ではいられなくなっていた。
