ウシジマくん呟き
港に行って
2026/08/05 09:19落書きの漫画書き終えたらこっそりのせとこうと思ったが終わらんし、あとは港まで車を走らせ、で終わりのページしか書かないからのせるか⋯
車を走らせて三十分ほど。
街灯はいつの間にか途切れ、コンビニの明かりも消えた。
窓の外は闇に溶け、車内にはエンジン音だけが流れる。
助手席の柄崎は、最初こそ他愛ない話をしていたものの、途中から口数が減った。
社長も何も言わない。
ただ前だけを見て、ハンドルを握っている。
やがて車が止まり、エンジンが静かに落ちた。
耳に届くのは、遠くで鳴く虫の声だけだった。
「降りるぞ。」
言われるまま外へ出た柄崎は、その場で息を呑む。
「……うわ」
思わず見上げる。
夜空いっぱいに、星が散っていた。
街では隠れていた光が、まるで最初からそこにあったかのように瞬いている。
「すげぇ……。」
自然と言葉が漏れる。
「社長、見てくださいよ。」
振り返る。
けれど社長は空ではなく、柄崎を見ていた。
「星っすよ。」
「……ああ。」
返事だけはする。
「絶対見てないじゃないすか。」
「見てる。」
「嘘だ。」
呆れたように笑って、もう一度夜空へ目を向ける。
深夜二時。
ぼんやり歩いていたところを見つかり、怒られ、車に乗せられた。
強引だった。
それなのに、不思議と嫌じゃない。
「柄崎。」
名前を呼ばれる。
「はい?」
振り向いた瞬間だった。
頬に手が添えられる。
肩がぴくりと震えた。
「……社長?」
指先がゆっくりと肌をなぞる。
優しい。
ただそれだけの仕草なのに、胸が忙しなく鳴る。
(……何だこれ。)
星空の下で、こんな距離になるなんて思ってもいなかった。
鼓動ばかりが耳につく。
社長の顔が近い。
そこで初めて気付いた。
長い睫毛。
伏せられた目元に影を落とし、いつもの鋭さとはまるで違う。
睨む目も、考え込む横顔も何度も見てきた。
でも、こんな穏やかな表情は知らない。
「何、見てんだよ。」
「いや……。」
「何だ。」
「まつ毛。」
口にした瞬間、しまったと思う。
沈黙が落ちた。
笑われる。
そう身構えたのに。
社長は何も言わず、少しだけ目を細めた。
そして頬から離れた手が、今度は頭へ移る。
ゆっくり撫でられた。
柄崎は動けない。
「……冷てぇな。」
小さく呟くと、社長はパーカーのフードを引き上げ、柄崎の頭へ被せた。
「うわ。」
「風邪引く。」
それだけ。
たった一言なのに、胸の奥が熱くなる。
その時、ふと思った。
昔、付き合った相手はいた。
手を繋いだこともある。
プレゼントを選んだことも、夜景を見に行ったこともあった。
でも。
こんな風にされたことは一度もない。
そして、社長が誰かに同じことをしている姿も想像できなかった。
夜中に探し回り。
星を見せるためだけに車を走らせ。
何も言わず頬に触れ。
寒いからとフードを被せる。
そんなことをする人には見えない。
何より、その手つきが物語っていた。
慣れていない。
誰かを口説くような触れ方じゃない。
壊れ物を扱うように。
失くしたくないものを確かめるように。
そんな手だった。
「社長。」
「……。」
「俺にだから優しいんすか。それとも、こういうこと、誰にでもするんですか。」
社長は少しだけ眉を寄せる。
真面目に考えている顔だった。
数秒後。
「誰かに?」
ぽつりと繰り返し、
「……しねぇよ。」
それだけだった。
「こんな面倒なこと。」
気だるそうに付け足す。
柄崎は息を止める。
つまり。
今、自分にしていることは。
全部。
自分だから。
社長はそんなことに気付いていない。
本当に。
驚くほど無自覚だ。
少し視線を逸らしたあと、社長が静かに言う。
「お前がいねぇと、静かなんだよ。」
柄崎は何も返せなかった。
夜中、目を覚ました時。
隣にいるはずの人間がいなかった。
だから探した。
見つけるまで落ち着かなかった。
腹が立つほど心配した。
その理由は、きっと一つだった。
寂しかったのだ。
自分がいないことが。
その事実だけで、胸が締め付けられる。
「……俺、おかしくなりそうなんすけど。」
本音だった。
社長は少しだけ黙り込む。
やがてフードの上から、ぽん、と軽く頭を叩いた。
「お前がおかしいのは最初からだろが。」
やっぱり分かっていない。
自分がどれだけ特別なことをしているのか。
どれだけ無意識に甘やかしているのか。
その全部が。
柄崎には、どうしようもなく嬉しかった。
車を走らせて三十分ほど。
街灯はいつの間にか途切れ、コンビニの明かりも消えた。
窓の外は闇に溶け、車内にはエンジン音だけが流れる。
助手席の柄崎は、最初こそ他愛ない話をしていたものの、途中から口数が減った。
社長も何も言わない。
ただ前だけを見て、ハンドルを握っている。
やがて車が止まり、エンジンが静かに落ちた。
耳に届くのは、遠くで鳴く虫の声だけだった。
「降りるぞ。」
言われるまま外へ出た柄崎は、その場で息を呑む。
「……うわ」
思わず見上げる。
夜空いっぱいに、星が散っていた。
街では隠れていた光が、まるで最初からそこにあったかのように瞬いている。
「すげぇ……。」
自然と言葉が漏れる。
「社長、見てくださいよ。」
振り返る。
けれど社長は空ではなく、柄崎を見ていた。
「星っすよ。」
「……ああ。」
返事だけはする。
「絶対見てないじゃないすか。」
「見てる。」
「嘘だ。」
呆れたように笑って、もう一度夜空へ目を向ける。
深夜二時。
ぼんやり歩いていたところを見つかり、怒られ、車に乗せられた。
強引だった。
それなのに、不思議と嫌じゃない。
「柄崎。」
名前を呼ばれる。
「はい?」
振り向いた瞬間だった。
頬に手が添えられる。
肩がぴくりと震えた。
「……社長?」
指先がゆっくりと肌をなぞる。
優しい。
ただそれだけの仕草なのに、胸が忙しなく鳴る。
(……何だこれ。)
星空の下で、こんな距離になるなんて思ってもいなかった。
鼓動ばかりが耳につく。
社長の顔が近い。
そこで初めて気付いた。
長い睫毛。
伏せられた目元に影を落とし、いつもの鋭さとはまるで違う。
睨む目も、考え込む横顔も何度も見てきた。
でも、こんな穏やかな表情は知らない。
「何、見てんだよ。」
「いや……。」
「何だ。」
「まつ毛。」
口にした瞬間、しまったと思う。
沈黙が落ちた。
笑われる。
そう身構えたのに。
社長は何も言わず、少しだけ目を細めた。
そして頬から離れた手が、今度は頭へ移る。
ゆっくり撫でられた。
柄崎は動けない。
「……冷てぇな。」
小さく呟くと、社長はパーカーのフードを引き上げ、柄崎の頭へ被せた。
「うわ。」
「風邪引く。」
それだけ。
たった一言なのに、胸の奥が熱くなる。
その時、ふと思った。
昔、付き合った相手はいた。
手を繋いだこともある。
プレゼントを選んだことも、夜景を見に行ったこともあった。
でも。
こんな風にされたことは一度もない。
そして、社長が誰かに同じことをしている姿も想像できなかった。
夜中に探し回り。
星を見せるためだけに車を走らせ。
何も言わず頬に触れ。
寒いからとフードを被せる。
そんなことをする人には見えない。
何より、その手つきが物語っていた。
慣れていない。
誰かを口説くような触れ方じゃない。
壊れ物を扱うように。
失くしたくないものを確かめるように。
そんな手だった。
「社長。」
「……。」
「俺にだから優しいんすか。それとも、こういうこと、誰にでもするんですか。」
社長は少しだけ眉を寄せる。
真面目に考えている顔だった。
数秒後。
「誰かに?」
ぽつりと繰り返し、
「……しねぇよ。」
それだけだった。
「こんな面倒なこと。」
気だるそうに付け足す。
柄崎は息を止める。
つまり。
今、自分にしていることは。
全部。
自分だから。
社長はそんなことに気付いていない。
本当に。
驚くほど無自覚だ。
少し視線を逸らしたあと、社長が静かに言う。
「お前がいねぇと、静かなんだよ。」
柄崎は何も返せなかった。
夜中、目を覚ました時。
隣にいるはずの人間がいなかった。
だから探した。
見つけるまで落ち着かなかった。
腹が立つほど心配した。
その理由は、きっと一つだった。
寂しかったのだ。
自分がいないことが。
その事実だけで、胸が締め付けられる。
「……俺、おかしくなりそうなんすけど。」
本音だった。
社長は少しだけ黙り込む。
やがてフードの上から、ぽん、と軽く頭を叩いた。
「お前がおかしいのは最初からだろが。」
やっぱり分かっていない。
自分がどれだけ特別なことをしているのか。
どれだけ無意識に甘やかしているのか。
その全部が。
柄崎には、どうしようもなく嬉しかった。
