ウシジマくん呟き
夢
2026/07/08 10:22前に呟いた柄崎がいなくなる夢をみたあとのやつ⋯今更?(笑)
深夜。
電話を切ってから三十分も経たないうちに、玄関の向こうで足音が止まった。
チャイムが鳴る、その寸前。
扉が開く。
「社長、大丈夫ですか」
息を弾ませた柄崎が立っていた。
急いで飛び出してきたのだろう。
パーカーの裾は少しだけ乱れ、ジャケットも適当に羽織ったまま。
靴もろくに履き直していない。
その姿を見た瞬間。
胸の奥を締めつけていたものが、静かにほどけた。
ちゃんといる。
それだけでよかった。
「……」
柄崎は眉を寄せる。
「何かあったんすか」
夢を見た。
お前がいなくなる夢を。
そんな理由で呼び出したなんて、言えるわけがない。
社長は視線を外し、小さく口を開く。
「前に百円借りた」
「え?」
「返す」
柄崎は首を傾げる。
「そんなの、いつでも――」
最後まで聞かず、社長は部屋の奥へ引き返した。
引き出しを開ける音。
しばらくして戻ると、掌には百円玉が一枚。
「ほら」
柄崎は苦笑する。
「相変わらず律儀っすね」
右手を差し出す。
百円玉が掌へ移る。
その拍子に、指先が触れ合った。
離れるはずだった。
けれど社長の手は、そのままだった。
百円玉を包む柄崎の拳へ、そっと重なる。
柄崎は目だけを上げた。
「……社長?」
理由は聞かない。
聞けば、この人はきっと何も言わなくなる。
だから。
ただ、その温もりを受け止めた。
しばらくして、社長が静かに手を離す。
「寝てたんだろ」
「悪かったな」
柄崎は笑って首を振る。
「平気っす」
「呼んでもらえてよかった」
その一言に、社長は少しだけ目を細めた。
「何かあったら」
柄崎は真っ直ぐ見つめる。
「今度もすぐ来ます」
「時間なんて気にしないんで」
返事は短い。
「ああ」
それだけだった。
でも柄崎には十分だった。
百円玉をポケットへしまい、一歩下がる。
「じゃあ、おやすみなさい」
「また明日」
明るく手を振ると、そのまま廊下を歩く。
足音が遠ざかるまで、社長は扉を閉めなかった。
廊下の先から、柄崎が一度だけ振り返る。
目が合う。
にっと笑って、小さく手を上げる。
その姿を見届けてから、社長は静かに扉を閉めた。
鍵を掛ける音が、やけに穏やかに響いた。
深夜。
電話を切ってから三十分も経たないうちに、玄関の向こうで足音が止まった。
チャイムが鳴る、その寸前。
扉が開く。
「社長、大丈夫ですか」
息を弾ませた柄崎が立っていた。
急いで飛び出してきたのだろう。
パーカーの裾は少しだけ乱れ、ジャケットも適当に羽織ったまま。
靴もろくに履き直していない。
その姿を見た瞬間。
胸の奥を締めつけていたものが、静かにほどけた。
ちゃんといる。
それだけでよかった。
「……」
柄崎は眉を寄せる。
「何かあったんすか」
夢を見た。
お前がいなくなる夢を。
そんな理由で呼び出したなんて、言えるわけがない。
社長は視線を外し、小さく口を開く。
「前に百円借りた」
「え?」
「返す」
柄崎は首を傾げる。
「そんなの、いつでも――」
最後まで聞かず、社長は部屋の奥へ引き返した。
引き出しを開ける音。
しばらくして戻ると、掌には百円玉が一枚。
「ほら」
柄崎は苦笑する。
「相変わらず律儀っすね」
右手を差し出す。
百円玉が掌へ移る。
その拍子に、指先が触れ合った。
離れるはずだった。
けれど社長の手は、そのままだった。
百円玉を包む柄崎の拳へ、そっと重なる。
柄崎は目だけを上げた。
「……社長?」
理由は聞かない。
聞けば、この人はきっと何も言わなくなる。
だから。
ただ、その温もりを受け止めた。
しばらくして、社長が静かに手を離す。
「寝てたんだろ」
「悪かったな」
柄崎は笑って首を振る。
「平気っす」
「呼んでもらえてよかった」
その一言に、社長は少しだけ目を細めた。
「何かあったら」
柄崎は真っ直ぐ見つめる。
「今度もすぐ来ます」
「時間なんて気にしないんで」
返事は短い。
「ああ」
それだけだった。
でも柄崎には十分だった。
百円玉をポケットへしまい、一歩下がる。
「じゃあ、おやすみなさい」
「また明日」
明るく手を振ると、そのまま廊下を歩く。
足音が遠ざかるまで、社長は扉を閉めなかった。
廊下の先から、柄崎が一度だけ振り返る。
目が合う。
にっと笑って、小さく手を上げる。
その姿を見届けてから、社長は静かに扉を閉めた。
鍵を掛ける音が、やけに穏やかに響いた。
