ウシジマくん呟き

ずっとこうしてたいね

2026/05/27 08:30
切ないね⋯(好物、だろ?)


帰りの車内は静かだった。
仕事終わり。
深夜の道路を、社長の運転する車が淡々と走っていく。
エンジン音。
コンビニ袋の擦れる音。
それだけ。
柄崎は助手席で窓の外を眺めながら、ぼんやり口を開いた。

「……社長」

「何」

「死ぬ時って、一緒ですかね」

一瞬だけ沈黙が落ちる。
社長は前を見たまま、露骨に嫌そうな顔をした。

「また急だな」

「いや、なんとなくっす」

街灯が流れていく。
横顔に、白い光が一瞬だけ差した。
柄崎は少し笑う。

「社長って、ほんとに生き残りそうじゃないですか」

「は?」

「映画の主人公で無敵な奴みたいな」

 社長は鼻で笑った。

「俺はターミネーターかよ」

「ちょっと近いっす」

「死ぬときゃ死ぬだろ」

あっさりした声。
でも柄崎は、それ聞いて少し安心した。
変に格好つけないところが、社長らしかった。

「……まぁ、社長が生きてるなら、それでもいいっすけど」

ぽつり。
車内へ落ちた声に、社長がちらりと視線を寄越す。

「お前な」

「冗談ですって」

柄崎は笑いながらシートへ深く沈み込む。
疲れていた。
体も重いし、眠い。
でも隣に社長がいるこの時間だけは、落ち着く。
コンビニ帰りのコーヒーの匂い。
夜の道路。
無愛想な横顔。
こんなの、ずっと続けばいいのにと思った。

「……たまに」

柄崎は窓の外を見たまま、小さく言う。

「このままずっと、こうしてたいなって思うんすよ」

社長は何も言わない。
ただハンドルを握ったまま、静かに前を見ている。
街灯の光が、また横顔を流れていった。

「仕事して、帰って、また呼ばれて」

柄崎は少し笑う。

「社長、機嫌悪くて」

「うるせぇ」

「でも生きてて」

そこで言葉が止まる。
社長はしばらく黙ったあと、低く息を吐いた。

「約束できねぇことに、適当なこと言わねぇぞ」

静かな声だった。
柄崎は目を細める。

「……はい」

それでも。
その不器用な本音を言う声が、いつもと変わらぬ姿で好きだった。

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